女子ゴルフ 渋野vs鈴木「賞金女王前夜の静かなる火花」

11月28日(木)16時0分 NEWSポストセブン

最年少賞金女王を目指す渋野日向子(撮影:藤岡雅樹)

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 今季7勝の鈴木愛(25)と、8月の全英女子オープンを制し、女子ゴルフ界のニューヒロインとなった渋野日向子(21)。賞金女王争いは、いよいよクライマックスを迎える。『エリエールレディスオープン』での逆転優勝の勢いそのままに渋野が最年少賞金女王に輝くか、それとも──ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。


 * * *

 最終戦『LPGAツアー選手権リコーカップ」(11月28〜12月1日)の開幕を前に、誰よりピリピリした空気を纏っていたのが、賞金女王レースでトップに立つ鈴木だった。25歳の鈴木は、21歳になったばかりの渋野の成長をひしひしと感じているという。


「(初めて同組でまわった3月のPRGRレディスカップの時から)良いゴルフをしていたので、今シーズン、優勝するかもしれないという印象は受けていました。(今季の渋野の活躍は)別に驚きもしなかったですし、こういうふうになるだろうと感じていた部分もあった。日に日に成長しているし、かなり、勢いを感じる選手。残り1%の可能性であっても、1%の可能性で終わらせない運の強さ、引きを持っている。4日間、注意して(ゴルフを)やりたいなと思います」


 表情はほんわかしていても、言葉の節々に「負けられない」という第一人者の矜恃がにじみ出ていた。ここまでライバル視するのは、来年の東京五輪でも代表を争う関係にあり、また、前週の『エリエールレディス』(11月21〜24日)における直接対決の敗北があるからだろう。


 同組で回った最終日。互いにスコアを伸ばしあい、気がつけば優勝争いはふたりに絞られていた。まさかの展開が待っていたのは、17番パー5。渋野のティーショットがビッグドライブとなった一方、鈴木の一打は右の池へ向かい、大きな波紋が広がった。ツーオンを狙った渋野の第2打もあわや池に飛び込む当たりだったが、グリーン左の木の根元付近に止まった。


 鈴木にしてみれば痛恨の池ポチャ。このホールをボギーとし、パーセーブに成功した渋野が優勝者となった。スコア提出後、鈴木は固い表情で、渋野と回った1日を振り返った。


「別に何も思わないです。自分のプレーに徹していたので。自分も良かったけど、それより彼女(渋野)がスコアを伸ばしただけ」


 ラウンド中、お互いにスコアを伸ばせば、「ナイスバーディ!」と声をかけあうものの、会話らしい会話はまるでなし。ホールアウト後もハグすることはなく、握手するだけだった。


 それから3日が経過した。決戦の地・宮崎で、改めて鈴木はあの一打を振り帰り、2年ぶり2度目の賞金女王への“欲”を口にした。


「それほどミスショットというミスショットではなかったんですけど、結果的に池に入って、惜しくも2位だった。あの負け方は、自分らしくない負け方だった。ああいう負け方をしていなかったら、最終戦はトップ10に入ればいいというか、ぼちぼちでいいやという感じだった。今は(賞金女王を)優勝して決めたいという気持ちがかなり強いです」


◆渋野にとって鈴木は「憧れの存在」


 今季の女子ゴルフは最終戦に至って盛り上がりが最高潮に達している。その要因は、デビューイヤーながら、国内ツアーで4勝をあげ、さらに8月の全英女子オープンを制した渋野の躍進に尽きる。


 飾らない性格と、思ったことをそのまま口に出す“シブコ節”──プレッシャーを笑顔ではねのけるスマイルシンデレラは、瞬く間に国民のヒロインとなった。


 ツアー最終戦『リコーカップ』開幕の2日前、開催コースである宮崎カントリークラブに到着すると、コースの入場ゲートに設置された関係者席に、渋野が座っておにぎりを頬張っていた。笑顔で挨拶をかわし、彼女はすぐに練習ラウンドに向かっていく。国内外でおよそ2億円の賞金を獲得し、衆人環視のもとで行動する中でも、こうした自然体を保つのは簡単ではないだろう。


 愛媛県松山市で開催されていたエリエールレディスでの戴冠のあと、渋野は松山からフェリーに乗って大分へ向かった。その日の深夜に陸路で宮崎入りし、翌日の午前中には石川遼(28)らとのテレビマッチに参加した。そこから約2時間をかけて神話の里・高千穂町に車を走らせ、ボートに乗って「キヨキヨした(清々しい気持ちになるという“シブコ節”らしい)」という。


 疲労を蓄積した中でも、自身の名前にも含まれる「日向(ひゅうが)の国」で、パワースポット巡りを敢行したのだ。渋野は言う。


「身体を休めるには、寝るのが一番。でも、宮崎まで来て、ホテルで寝て過ごすのはもったいない! やっぱり、いろんなところに行って、観光名所を回ることで、私は心が穏やかになる。いろんな人に見つかっちゃったけど、写真とかサインとか、求められることはなかったです」


 渋野にとって、賞金女王を争う鈴木は、いまだ「憧れの存在」だ。


「技術のレベルが違う。まだまだ遠い存在で、ぜんぜん届かないという印象は強い。でも、(初めて一緒に回った)3月から1ミリぐらいは近づけたかな。それは気持ちの部分。攻める気持ちを忘れずにいられたから先週(エリエールレディス)は頑張れたと思う」


 渋野は日本女子ツアーで平均パット数と平均バーディ数で1位を誇り、逆転賞金女王に向けてもパッティングがカギを握るだろう。宮崎カントリークラブの傾斜が強いグリーンは高麗芝が特徴で、芝目によってはボールが予期せぬ軌道を辿る。


「下りのラインにつけたら、もう大変! ショットでどれだけ距離をあわせられるか……なるべく手前から攻めることが大事になると思います」


『デサントレディース東海クラシック』(9月20〜22日)で今季国内3勝目を挙げたあと、渋野は今季の目標を一時は「賞金女王」に上方修正した。だが、エリエールの前週に予選落ちを喫したことで、「賞金女王は考えない」「自分のためではなく、応援してくれている人々のために」と心がけ、4勝目を手にした。


「狙って勝つ選手が強い選手だとは思う。だけど、私にはまだ……。うん。賞金女王は考えずに、最終戦には臨みます」


 賞金ランキングトップの鈴木に対し、渋野はおよそ1500万円差の3位につける。強い意欲を抱く鈴木が2年ぶりの女王に君臨するのか、無欲の渋野が逆転女王に輝くのか。小雨と強風の中、鈴木と渋野の初日がスタートした。

NEWSポストセブン

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