スーパー耐久に挑む水素エンジン搭載のGRカローラは液体水素でのテストを実施。メリットと課題あり

2022年12月1日(木)18時12分 AUTOSPORT web

 11月26日、ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第7戦『SUZUKA S耐』のレースウイークのなか、トヨタ自動車はST-Qクラスに参戦しているORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptについて、液体水素を燃料とした車両の充填と試験走行を行っていると現在の進捗について明らかにした。


 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、カーボンニュートラルに向けた取り組みとして2021年のスーパー耐久第2戦富士SUPER TEC 24時間レースでデビューした車両で、気体水素を燃料とした画期的なレーシングカー。これまで、水素を『はこぶ』、『つくる』、『つかう』仲間を増やしながら、初参戦以降さまざまな取り組みが行われ、スピード、航続距離ともにアップ。今回の第7戦鈴鹿に向けても異常燃焼の対策や、足回りのレベルアップに向けた改良が行われている。


 そんなORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは初参戦以降、ずっと気体水素を燃料として参戦してきた。さまざまな改良を経て航続距離も少しずつ伸び、水素充填時間も短くはなったものの、やはり1周の速さこそ増したとはいえ、通常のガソリンを使ったレーシングカーと“レース”を戦うまでには至っていない。そこで、2022年第1戦の場で挑戦開始が明かされたのが、液体水素の採用だ。


 液体水素の使用が可能になると、体積あたりのエネルギー密度が上がり、航続距離が伸びるという。また気体水素は高圧充填のためにタンク形状が円筒型になるが、液体水素のタンクは高圧にする必要がなく、パッケージ効率が高められるという。また圧力を下げた分軽量化できるなど、クルマの進化に向けさまざまな可能性がある。軽量化については、ドライバーたちも当然求める要素だ。


 ただし、課題もある。液体水素は充填や貯蔵の際に-253度という低温を保つ必要があり、熱を受けることでの気化への対応、低温で機能する燃料ポンプの技術などが挙げられる。


 これらの課題に向け、トヨタは各部品の試験や認可の完了を経て、液体水素を使った車両への充填とテスト走行が10月から始まっていると明らかにした。ただ、GRカンパニーの佐藤恒治プレジデントは、最終戦鈴鹿への導入を目指してはいたものの、「まだレースの領域で走るまでには至っていない」と今季の登場は見送られた。


 また、移動式液体水素ステーションについては、現在岩谷産業が開発しており、充填ジョイントはトヨタと岩谷産業が共同開発を行っているという。液体にすることでコンパクトになり、面積は従来の4分の1ほどに。またガソリン車と同様、ピットエリア内での給水素が実現する。


 カーボンニュートラル実現に向けた選択肢を増やすべく、“仲間”とともに挑戦を続けているORC ROOKIE GR Corolla H2 concept。液体水素という新たな選択肢を使った車両が、いつ登場するのか期待が高まる。この液体水素カローラは、関わった関係者によれば「驚くと思います」という技術も使われているようで、技術面でも非常に楽しみなところだろう。


 この水素エンジンの挑戦は、もちろん見据える先に市販車への導入がある。トヨタは今季第2戦富士では、その道のりを富士登山に例え「4合目」としていたが、まだその歩みは「5合目を踏み出したあたり」だという。もちろんこれまでの1〜4合目を整えながら歩んでいかなければならない。2023年は、5〜6合目を目指す戦いとなる。

実際に走行テストを開始した液体水素を使ったGRカローラ。これまでの気体水素とは異なる印象がある。

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