W杯予選に向けた日本代表の課題。監督の「駆け引き」の経験

12月2日(水)17時0分 Sportiva

福田正博 フットボール原論

■10月、11月にヨーロッパで2試合ずつ強化試合を行なうという、コロナ禍で貴重な機会を得た日本代表。しかしメキシコ戦では、後半の相手の変化に対応できず、力の差を見せつけられるゲームとなった。福田正博氏は、来年のW杯予選、そして再来年のカタールW杯本番に向けて、こうした格上との対戦でベンチの駆け引きも経験してほしいと指摘する。

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 日本代表は11月にパナマ、メキシコと強化試合を行なった。10月のカメルーン戦、コートジボワール戦につづいて、コロナ禍のなかでレベルの高い相手と試合ができたのは、最大の収穫と言っていいのではないだろうか。


遠藤航の活躍は収穫だったが、課題も多かった日本代表
 パナマには1−0で勝利し、メキシコには0−2で敗れた。どんな試合であっても結果は大事だが、W杯に向けた強化試合の観点に立てば、試合内容を精査して今後への糧を見つけるのも重要だ。その点で日本代表は、この11月の2試合からは大きな改善点や課題を手にできたのではないか。

 パナマ戦に関して言えば、日本がもう少し押し込む展開になると予想していたが、前半は手こずってしまった。後半から遠藤航を投入して流れを引き寄せたが、3バックのシステムに問題があったというよりは、選手個々の対応に課題があったように思う。

 日本より格上のメキシコとの一戦は、W杯で日本代表がベスト16、ベスト8を狙うための、絶好のシミュレーションの機会になった。

 メキシコのような国から、例えばW杯のグループリーグなら勝ち点1以上を手にできなければ、日本はグループリーグ突破のベスト16進出は望めない。例えば決勝トーナメント1回戦で対戦した場合には、PK戦に持ち込んででも勝たなくてはベスト8が見えてこない。

 前半は、日本がよいところを存分に発揮した。チャンスを数多くつくり出して、メキシコのゴールを何度となく脅かした。ただし、サッカーの常であり理でもあるが、決めるべきところで決められなかったため、試合の流れが大きく変わってしまった。

 まずこの2試合での収穫に目を向ければ、遠藤航の存在感に優るものはない。ブンデスリーガを観ていない人は彼のプレーに驚いたかもしれないが、この強化試合で見せた遠藤のパフォーマンスは、ブンデスリーガで日頃から当たり前のように発揮しているものだ。

 相手ボールを奪う能力は圧倒的で、前線にボールをつなぐ縦パスの意識も高い。攻守のバランスを取るだけではなく、機を見てゴール前へ飛び出して行く判断力も抜群にいい。

 これまで日本のボランチの軸は柴崎岳が務めてきた。その柴崎を上回る成長とパフォーマンスを見せている遠藤が、今後はボランチの軸になっていくのではないだろうか。

 今夏にFC東京からロシアリーグのロストフに移籍した橋本拳人は、久しぶりの代表戦で爪痕は残したと思う。所属クラブでは前めのポジションをやるなどして得点力でも成長しているが、遠藤との組み合わせで今後はおもしろい化学変化を起こしそうな気がする。

 一方、2試合での課題に目を向ければ、相変わらず臨機応変さで拙さを見せた。とくにメキシコ戦。相手は後半から選手の並びを変えてきたが、日本代表はそこに対応できなかった。

 相手の出方に合わせて、選手主導で柔軟に対応することは、日本がW杯ベスト16以上を望むうえでは欠かせないものだろう。そこを十分に理解しているからこそ、森保一監督はこれまで同様に、メキシコ戦でも選手たちの対応力を高める機会ととらえてベンチ主導の采配はしなかった。

 その結果が2失点。試合後の選手たちは口々に「個の力を伸ばしたい」とコメントしていた。だが、個の能力を高めることだけが、チームの対応力や臨機応変な能力を高める解決策ではないはずだ。

 メキシコ戦の日本は、対応を選手たちの判断に任せ、試合終了まで改善できないままだったが、この先、時間を費やしてもできないままという可能性もある。我慢するのも大事だが、ベンチが状況の改善がこのままでは難しいと見極めたら、選手交代を使ってピッチの選手たちに「こういうふうに打開しよう」というメッセージを送ることも必要だった。

◆森保ジャパンは流れをつかむ采配がない。日本ペースの時間帯は何分間?>>

 というのも、メキシコ戦のように混乱したまま試合を終えてしまうと、選手たちが次の試合に向けて「なにをどう改善すべきだったのか」の糸口を手にできないからだ。

「チームとして対応しようとしたが通じなかった。だけど、この部分はうまくできた」といった感触があれば、選手は足りない部分を伸ばす努力ができる。しかし、それがないと漠然と「個の力を伸ばそう」との結論だけになってしまいがちなのだ。

 もちろん、個の力は必要だ。しかし、何でもかんでも個の力を敗因にしていてはダメだろう。メキシコ戦で足りなかったのは個の力だけでなく、チーム全体としての柔軟性や臨機応変に対応する力だろう。そこを見誤っていては、どれだけ経験を積もうと改善されることはないように感じる。

 メキシコ戦の後半に苦しんだ要因は、相手に押し込まれてボールを奪い返しても、そのボールの預けどころを消されてしまって、再びボールを奪われて押し込まれたところにある。

 この状況を打開するためには、相手に囲まれながらもボールをキープし、味方がサポートに入れる時間をつくりださなければいけない。それをピッチの選手たちだけで改善できないのなら、監督が選手交代や布陣の変更などで解決策を提示すべきだった。

 押し込んできた相手を跳ね返すための有効な手段のひとつが、奪い返したボールを預けられる起点をつくること。そこでマイボールの時間が生まれれば、味方がラインを押し上げられるし、相手も引かざるを得なくなる。

 大迫勇也のように、DFを背負いながらボールキープできる選手を投入するのが有効だが、そういうプレーができる選手がいなければ、別の方策を考えるのもベンチの仕事だ。2トップにして相手DFの意識を分散させたり、サイドにボールキープの巧みな選手を入れて時間をつくったりなどの手立てがある。メキシコ戦ではそうしたものを見せてもらいたかった。

 森保監督にすれば、試合前に準備したプランの遂行を優先したのだと思う。来年は東京五輪が控え、中断しているW杯予選も再開になる。そこに向けて試しておくべきことがあるのは理解できる。だが、徹底的に勝負にこだわるベンチワークも見せてほしかったというのが、率直な感想だ。

 来年も格上との強化試合ができるのかは不透明だが、そうした機会が訪れたなら勝利を最優先にした采配を取ってもらいたい。自分たちのやりたいことを試すのも大事ではあるものの、22年カタールW杯の本番に向けて、格上国を相手にベンチによる駆け引きを経験するのも重要だからだ。

 W杯まであと2年。日本代表は森保監督のもとで着実にレベルアップを遂げてきたが、来年はさらに本番を意識したマネジメントを見せてくれることを期待している。

Sportiva

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