角居勝彦調教師 ダートGI馬サンビスタの軌跡と奇跡

12月3日(土)16時0分 NEWSポストセブン

調教師・角居勝彦氏が語るサンビスタの奇跡

写真を拡大

 JCダートから2014年に名称変更したダートGIで、角居厩舎は3勝(カネヒキリ2勝、サンビスタ1勝)している。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、2015年、ミルコ・デムーロ騎乗で単勝12番人気ながら衝撃的な勝利を飾ったサンビスタに関する逸話を紹介する。


 * * *

 この馬は、かつて私が働かせてもらったグランド牧場生産ということで預かることになりました。2012年3月のデビューから一貫してダート。芝の適性もあったのですが、前さばきが硬くて歩様もよくない。壊れやすい懸念があり、柔らかい馬場で走らせたかった。スピードがあり、湿った馬場が得意でした。


 3戦目で未勝利を勝って4か月休養。2勝目を挙げた後も5か月休み。勝っても前さばきは硬いままで、こんな調子で休み休み使いました。


 2013年(4歳)の竜飛崎特別で4勝目を挙げた後も5か月の休養。しかし5歳になり復帰してからの3戦目、2月の門司Sで勝ちあっさりオープン入り。いわゆる「本格化」—体と気持ちが整う瞬間が5歳になって訪れたのです。


 オープンになったら「待ってました!」とばかりに1か月後の地方交流・エンプレス杯(川崎、3着)を走りました。ここでは同じ歳のワイルドフラッパーから2.2秒も離される3着で、そんなに甘くはないなと思わされました。


 しかし、ダート馬の成功は地方交流に出ること。勝てなくても2着に入って賞金を積み上げていくことが大事です。中央では牝馬限定のダート重賞がないので、サンビスタにとって、地方交流はありがたいのです。レース間隔も適度に開き、良い状態を維持しながら競馬ができる。


 この年、8月に門別のブリーダーズゴールドカップでワイルドフラッパーに勝てたことで運命が変わった。いつまでたってもかなわないと思った相手に勝ち、さらなる飛躍を確信しました。そこからは獅子奮迅。門別、大井、盛岡、船橋と転戦しました。輸送の心配があったものの、しだいに旅慣れてたくましさが増していった。夏に門別で走った後にはすぐに牧場行き。2か月休んで大井で走るというパターンでした。


 3、4歳時は共に5戦ずつでしたが、5、6歳時は9戦ずつ使うことができました。ダート馬は地味な存在ですが、オープンまでいくような馬は崩れにくい。地方交流だけで11戦5勝2着3回という堂々たる成績でした。クラブ(ユニオン・オーナーズ)の馬で会員さんも多かったので、喜んでもらえたと思います。


 しかしさすがに牡馬と走ると分が悪い。5歳時のチャンピオンズカップでは15番人気4着と健闘したものの、6歳時の地方交流かしわ記念では9歳馬ワンダーアキュートに1.8秒も離されました。


 だから引退レースとなった6歳時のチャンピオンズカップで勝てたのはいまでも信じられない。馬はよくなっていたけれど、コパノリッキー、ホッコータルマエなどダートの猛者が勢揃いしている。


 なぜ勝てたのか、いまでも説明できません。それも競馬です。ミルコに神が降りたのかもしれません。


●すみい・かつひこ:1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年11月20日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。


※週刊ポスト2016年12月9日号

NEWSポストセブン

「教師」をもっと詳しく

「教師」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ