MotoGPコラム:「各レースがビジネスのようだ」とロッシ。最終戦のアクシデントで告げられたカレンダー変更の必要性

12月4日(水)15時59分 AUTOSPORT web

 イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラムをお届け。最終戦バレンシアGPを終え、2019年シーズンのMotoGPは終了した。その決勝レースでは速いライダーより遅いライダーがクラッシュするという現象が発生した。理由は寒いコンディションで路面温度が大幅に低かったためだ。オクスリーはMotoGPもF1の様にカレンダーを変える必要性を訴えている。それにはバレンティーノ・ロッシも同意しているという。


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 MotoGPの最終戦バレンシアGP。それは逃げ遅れた者たちが悪魔に捕らえられるようなレースだった。最速のライダーたちはクラッシュせず、遅いライダーたちがクラッシュしたのだ。遅いライダーたちがクラッシュした理由はレースが冬の寒いコンディション下で行われたからだろう。突き刺すような寒風が吹き、コース温度はたったの16度だった。


 10月に行われた第17戦オーストラリアGPのレースウイークでさえ、コース温度は30度あったのだ。したがってタイヤの熱を維持するのが大きな課題だった。眼窩から目が飛び出るほどにブレーキとスロットルに集中しないと、タイヤは最適な作動範囲から外れてしまい、ライダーはバイクから後ろに落ちることになる。これは古くからあるお手上げ状況の話だ。


 バレンシア・サーキットの6コーナーでは、ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ・チーム)、ヨハン・ザルコ(LCRホンダ・イデミツ)、イケル・レクオーナ(レッドブル・KTMテック3)が続けざまに転倒した。なぜならここは2カ所の右コーナーを抜けた後の最初の左コーナーであること、そして大抵は南西の風がライダーの下からフロントホイールに吹き付けるからだ。


「Moto2で、僕の弟も巻き込まれた奇妙なクラッシュを見たよ」とマルク・マルケスは56回目のMotoGP優勝を飾った後に語った。


「だからピットレーンに行って、風向きを確かめた。そうしたら6コーナーと11コーナーで風がとても強く吹いていることがすぐに分かった。だからそうしたコーナーでは少し慎重になったんだ。フロントを失いやすくなるからね」


 フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)はクラッシュしたライダーのなかで最速だった。モルビデリは5番手のアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)を追いかけていたが、右の4コーナーで転倒した。そこはバレンシアで一番事故が起きやすいスポットだ。なぜならタイヤの右側面が40秒の間アスファルトから離れるからだ。

フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)
フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)


 2017年のMoto2チャンピオンであるモルビデリは、それほど激しくプッシュしていた時になぜ転倒したのだろう? 


「問題だったのは、前に誰もいなかったから、僕のフロントタイヤの温度が上がらなかったことだ。特にタイヤの右側面が冷えていた」とモルビデリは語った。


「その前の2周でも何か感じた。でもさらにプッシュすれば、タイヤが温まると信じていたんだ。でもそうはならなかった」


 他のライダーも同じ問題について話している。


 MotoGPクラスでは6件のクラッシュがあったが、さらに寒いコンディション下で行われたMoto3クラスの決勝レースで起きた14件のアクシデントに比べればなんということはない。2度の多重クラッシュが、反時計回りのコースの2カ所の右コーナーで起きた。つまり4コーナーと11コーナーでだ。


 11コーナーでの混戦では5人のライダーが転倒した。デニス・フォッジア(SKY Racing Team VR46)は飛んできたカルロス・タタイ(Fundacion Andreas Perez 77)のマシンに衝突し、空中に投げ出されて、地面にひどく叩きつけられてしまった。フォッジアはその場に長い間横たわっており、医師が付き添う間、マーシャルたちが彼の周りに壁を作った。状況は良くは見えなかった。


 フォッジアは幸運にも脳震盪と、頭からつま先までの痛みという結果ですんだ。先月、強風のなかフィリップアイランドで開催されたオーストラリアGPで、ミゲール・オリベイラがコース外に飛ばされた時に、運良く酷い打撲を避けることができたようにだ。


■F1を参考にする必要があるMotoGP


 このふたつのグランプリにおける双方のアクシデントは、MotoGPに単純な真実を告げている。良好な天候のもとでチャンピオンシップが開催されるように、カレンダーを完全に組み直す必要があるということだ。これは何よりも安全性の問題だ。


 F1にできるのなら、MotoGPにもできるだろう。F1は3月から12月にかけて開催されるが、ヨーロッパでレースが行われるのは5月から9月の間だけだ。考えるまでもないことだ。


「11月の後半にバレンシアに来るというのは素晴らしい考えではないね」とバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は同意した。


「でもチャンピオンシップを運営している人たちはスペイン出身だから、彼らは最終戦をスペインでやることに大きな関心があるんだ。だがチャンピオンシップはヨーロッパではなく、もっと暖かい他の場所で終えた方がいい」


「もうひとつの問題はフィリップアイランドだ。冬にフィリップアイランドに行くのは本当に残念だよ。なぜならあそこは最高のコースのひとつだからね。だからこのレースも動かす必要があるだろう」


 MotoGPのスケジュールは基本的には過去10年間同じ形式を取ってきているが、今となってはレースの順番は大幅に変更が必要だろう。チャンピオンシップは今年19戦に増え、2020年は20戦になる。2021年には21戦になり、おそらく2022年には22戦になるだろう。

バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)


「MotoGPが取っている方針はまるでアメリカのもののようだね。アメリカでは40戦以上のNASCARレースやNBAの試合がある」とロッシは語った。


「今では各レースがビジネスのようだ。21戦を開催すれば、18戦よりも儲かるわけだ。将来もこのような方向へ進んで行くのだろう」


 新規のレースは東南アジアや南アメリカ、または世界中のどの場所も候補地になり得る。したがってMotoGPはシーズンを温暖な場所で始め、温暖な場所で終える必要がある。


 チャンピオンシップの終わることのない拡張は他の問題も引き起こしている。MotoGPのパドックはすでに離婚経験者でいっぱいだ。彼らの家族はもうたくさんだという思いで、家に帰るか帰らないのかどちらかにしろと彼らに言っているのだ。レース数が増えれば、この状況は悪くなるだけなのは確実だろう。


 一方でパドックの古顔たちは、チャンピオンシップが現在より短かったにもかかわらず、家を離れている時間がもっと長かった時代を覚えている。なぜならチームはレースとレースの間にほぼ毎回テストを行い、木曜日にはしばしば非公式のプラクティスを行なっていたからだ。


 また、メカニックたちはチームのトラックを運転してヨーロッパを周り、エンジンを再度組み立てるのに何日も費やした。今では、少なくとも資金の豊富なMotoGPチームにいる幸運に恵まれていれば、そうした仕事をする必要はない。彼らはレース会場へ飛ぶ。レース中の仕事時間は以前より短く、テスト回数も少なくなっている。


 2019年のF1は21戦だったが、シリーズは今後数年で25戦にまで拡大されることが予想されている。イベントは3日間から2日間に短縮され、フリー走行と予選が土曜日に、決勝が日曜日に行われることになるようだ。MotoGPもこれにならうことになるかもしれない。


「レースを土曜日と日曜日の2日間に収めることは確かにできるよ。違ったものになるだろうけれど、不可能ではない」とロッシは語った。そうなった時、ロッシはまだレースを続けているだろうか?私は続けている方に賭ける。今夜の夢が私に何を教えてくれるのか待つことにしよう。

MotoGP日本GPの前夜祭に登場したバレンティーノ・ロッシ
“MotoGP日本GPの前夜祭に登場したバレンティーノ・ロッシ


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