アビスパ福岡の一生語り継がれる2023シーズンを総括!

2023年12月4日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

YBCルヴァンカップ優勝のアビスパ福岡 写真:Getty Images

アビスパ福岡のサポーターにとって夢のような時間だった2023シーズンが終了した。厳密には12月18日に控えているウクライナとのチャリティーマッチ(シャフタール・ドネツク戦)は残っているものの、公式戦はすべて終えた。


ここでは、今シーズン開幕前に長谷部茂利監督が掲げた目標を達成し、それ以上の成果を残した福岡のクラブ史上最高となった1年を振り返る。




アビスパ福岡 GK山ノ井拓己 写真:Getty Images

今季最大のトピックとなった「タイトル獲得」


12月3日に開催された2023明治安田生命J1リーグ最終節。アビスパ福岡はホームであるベスト電器スタジアムにサンフレッチェ広島を迎え、惜しくも0-1と敗退してシーズンを終えた。試合終了後に行われた最終戦セレモニーで来季の新ユニフォームを発表した福岡。遠目からは大きな変化がないものの左胸には小さな星が輝き、タイトルと無縁だったクラブが、ついにタイトルホルダーとなった証が刻み込まれていた。


今年、福岡がYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)を獲得できたのは決して偶然ではない。約3年前の2021シーズン開幕前、長谷部監督は「(リーグ戦の)順位は10位以上、ルヴァン杯はベスト4以上」との目標を語り、この時点で種を撒いていた。その年のルヴァン杯はグループステージ敗退となったものの、リーグ戦での出場数が少ない選手を積極的に起用。経験を積みながら高い位置を目指した。


「カップ戦ベスト4」という目標は、2022シーズンも今2023シーズンも変わらずに掲げられ、昨シーズンは僅差のゲームをものにしてグループステージを2位で突破。準々決勝では新型コロナウイルスによる選手の離脱が多数あり、GK山ノ井拓己をフィールドプレーヤーとして起用するなど本当の意味での総力戦を体現し、ルヴァン杯ベスト4を達成した。


そして今シーズン。クラブとしてもチームとしても重ねた経験をルヴァン杯で遺憾なく発揮。グループステージを1位で通過すると、過密日程で迎えた名古屋グランパスとの準決勝第1戦では、前試合から大幅に選手を入れ替え勝利。長谷部監督のマネジメントで選手層を厚くした福岡は、決勝で浦和レッズを撃破しタイトルを勝ち取った。この決勝でスタメン出場し、その後のリーグ戦でも出場を続けたGK永石拓海は、加入初年度(2022)リーグ戦の出場は8試合のみ。カップ戦で多くの試合経験を積み大幅に成長を遂げた1人だ。




アビスパ福岡 MF紺野和也 写真:Getty Images

リーグでもクラブ史上最高順位を達成


今季の福岡はリーグ戦でも7位に入り、2021シーズンの8位を超えるクラブ史上最高順位を達成。ただし、得失点を見ると14位で終えた2022シーズンから大きな変化はない。マイナス9からマイナス6へと、わずかに3改善したのみ。それでいて勝ち点は38から51へと13も上積みできたのは、勝負強さを身につけたからではないだろうか。


15勝のうち13勝が1点差での勝利。また逆転勝利は6つと、自信を胸に紙一重の試合をものにしてきた福岡。真の自信は目に見えるものではなく、一朝一夕で身につけられるものでもない。多くのチームが求め欲しがるものを手にしたシーズンであり、より上位を目指すであろう来季以降の強みとなるはずだ。


アビスパ福岡 長谷部茂利監督 写真:Getty Images

福岡が来季に残した課題


収穫の多かった今シーズンだが、克服しなければならない課題も明確になった。リーグ戦での福岡は、優勝したヴィッセル神戸、2位横浜F・マリノス、3位サンフレッチェ広島、8位川崎フロンターレ、10位アルビレックス新潟にそれぞれ2戦2敗と“シーズンダブル”を喫している。シーズン全13敗のうち、5クラブに10敗は偏った数字だ。


川崎のFWマルシーニョや横浜FMのFWエウベル、神戸のFW武藤嘉紀など、サイドに強烈な個を擁する相手に苦戦しており、中央を寸断しサイドに追い込む守備を志向する福岡にとって悩みの種となっている。とはいえ、課題を地道に1つずつ解決するのは長谷部監督の得意分野。2021シーズンはカウンター以外に攻め手がなかったチームが今季は繋いで崩せるようになり、以前は相性の悪かった浦和や名古屋などとも十分渡り合えるようになった。上に行けば行くほど新たに見えてくる課題にも、これまで同様地道に取り組みチームを更なる高みへと引き上げてくれるはずだ。




アビスパ福岡 MF井手口陽介 写真:Getty Images

必要なのは主力の慰留とコンセプトに合致した補強


見事な結果を出しシーズンを終えた福岡。ここからは来季に向けクラブと強化部の仕事が重要となる。資金力が限られたチームが結果を出した時、自ずと向き合わなければならないのが選手の引き抜きだ。漏れ聞こえてくる報道にもあるように、福岡も無縁ではない。主力選手の慰留を成功させることだけでなく、ピンポイント補強での上積みが求められる。


慰留や補強における、福岡の強みはおもに2点。多くの選手を成長させてきた長谷部監督の続投が早々に決まっていること。そのため、努力を重ねれば出場機会を得られる土壌が確実にあることだ。柳田伸明強化部長は「既存の選手をベースに」と表明しており、長谷部監督就任から一貫して継続路線を貫いている。予算も限られることから補強はこれまで同様「名より実」になるだろう。今季でいえば、FC東京で出場機会の限られていたMF紺野和也が福岡では9月度の月間MVPを受賞するまでになり、セルティックで出番を得られなかったMF井手口陽介は福岡で絶対的な主力となった。


夢を現実化したシーズンが終了。移籍が活発なサッカー界において、来季も全く同じ選手たちでシーズンに入ることはあり得ないだろう。来季どころかオフシーズンから厳しい現実を突きつけられることもある。それでも、強さの大きな要因である長谷部監督体制は来季以降も続く。別れを経て、新たな出会いを重ね、より強く、より地域に愛されるクラブへと成長してほしい。福岡サポーターに未来永劫語り継がれるであろう2023シーズンは、そのきっかけとしても最高のシーズンだった。

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