本田圭佑、ボランチでの満足度は50点。自らチームの戦術を解説

12月4日(水)16時30分 Sportiva

 11月29日、フィテッセは2点のリードを守りきれず、2−3で敗れてしまった。これでフィテッセは5連敗だ。ハーフタイムの笛が鳴り、インタビュールームに向かうと、レオニド・スルツキがテレビカメラに向かって「私はフィテッセの監督を辞める」と言っていた。

「サッカーは人生と同じで、何か小さなことで壊れてしまう。今日は悲劇だった。キックオフから40分、私はヒーローだった。しかし、90分後、私はゼロになった」(スルツキ監督)


ボランチとして出場したフィテッセの本田圭佑

 第15節を終えて、フィテッセの順位は9位。

 フィテッセが8分に奪った先制ゴールは、サイドチェンジとスルーパスを交えてストライカーのティム・マタフズがフリーになり、技ありのループシュートで決めたもの。チームとしての狙いと個の力が融合した、鮮やかなゴールだった。

 一旦自陣に後退してブロックを作ったフィテッセは21分、GKレムコ・パスフェールのフィードから左サイドアタッカーのブライアン・リンセンが抜け出して2−0。その後、2ボランチの一角を担う本田圭佑のボールタッチが増え、40分までフィテッセが試合をコントロールする展開になった。

 ここまでは、とてもリーグ戦で4連敗しているチームとは思えぬ、自信に満ちた戦いぶりだった。

 しかし42分、不運な反則から奪われたPKでヘーレンフェーンに1点を返されると、フィテッセは一気に崩れていってしまった。まるで雪が太陽の光を浴びて溶けていくように、フィテッセの選手たちから自信が消えていき、中盤でボールを受けるのを恐れるかのように、攻撃と守備が前後分断されてしまった。

 スルツキ監督の言う「何か小さなこと」とは、ディフェンダーが不運にも相手と交錯し、PKを獲られてしまったことを指すのだろう。そこから、勝利から遠ざかっているチームのメンタルのもろさが浮かび上がってくる。

 やがて、本田がインタビュールームに姿を現すと、スルツキ監督の辞任について、「個人的には『今日負けたら(監督の辞任が)あり得るな』と思って挑んだ。彼がいたから(フィテッセに)来たという意味では、状況を救ってあげられず非常に残念に感じている」とコメントしてから、こう続けた。



「一方、プレーしていて、正直、ひとりで変えられる幅がチームとして、もうちょっと超えているなというのは感じている。いわゆる、負のスパイラルというか」

 記者のひとりから「(オランダ再デビューマッチとなった)スパルタ戦後、『ベテランを巻き込んでチームを立て直していきたい』と言っていましたが、この1週間、そういう作業はどうでしたか?」という質問を受けると、本田は「前半2点獲ったことが、それに表われていたと思うんですよ」と答えた。

「ただ、見てのとおり……。失点したりすると、それがなかったかのようにグッと崩れるというか。これがやっぱり、自信を失っているチームの(特徴)。

 点を獲った時は延命措置みたいな感じでよさげに見えているけど、失点した時にはチームの本性が表われるという、まさにそんな試合でしたよね。慌てる必要はないんですけど。まぁちょっと、若いチームにありがちな、失点のケースが多いなっていう感じはします」

 スルツキ監督は、CSKAモスクワ時代の強面のイメージからは信じられないほどフレンドリーで、多くのオランダ人から愛された。しかし、サッカーそのものは非常に守備的で、オランダ人が好む攻撃サッカーからは程遠かった。

 彼の出身地がボルゴグラードであることから「ボルゴ・カテナチオ」という新語も生まれた。それほど批判も大きく、エメンに負けて2連敗になった時点で、すでに地元メディアから集中砲火を浴びていた。

 そのスルツキ監督が本田をフィテッセに誘って獲得するやいなや、チームを4−4−2から4−3−3にして、中盤のコントロールにアクセントを置いたチームに作り変えようとした。それはもしかしたら、フィテッセでの最後の賭けだったのかもしれない。本田はその賭けのキーマンだった。

 ヘーレンフェーン戦後、ボランチでのプレーの満足度を問われた本田は、「まぁ、50点ぐらいかな。もっと伸びていけると思うんですけど。でも、非常に難しいなって思う部分が多くて」と言った。



 フィテッセでの初戦となったスパルタ戦で、本田はトップ下として先発した。前半は右下に降りたり、後半は左下に降りたりして、MFのリーシェドリー・バズールやマトゥーシュ・ベロとの関係を探ったり作ったりしながら、相手のバイタルエリアにも顔を出した。

 今回のヘーレンフェーン戦ではベロとボランチを組み、25分から40分までは相手を引きつけながら、いいゲームコントロールをしていた。この時間帯は、本田にとってもプラス材料だったのではないだろうか。

 だが、この新システムはたった2週間で準備してきたもの。選手同士が試合中に調整し合う部分も大きかったはずだ。ヘーレンフェーンに守備を崩されたわけでもないPKひとつでチームのメンタルが崩れたのは、チームビルディングに硬い芯が一本入ってないことでの迷いによるものだろう。

 後半、マークを背負いながらボールを持った本田は、「クルクルっと(周囲を)見たら、ウインガーがめっちゃサイドに張っているんです。もうみんなマークにつかれていているわけですよ。これはもう、チームの問題。ボランチの俺がボールを受けてもマンツーでつかれているんで、それをかわせというのは、ちょっとそんなボランチは世界的にもいないんで」と、パスの出し先が見つからなかったことを説明した。

 本田が説明したそのメカニズムを要約するとこうだ。

(1)味方のCBがボールを持っても、3トップは相手の4バックにつかれている。
(2)中盤は「3対3」でお互いがマークしあっている。
(3)フィテッセの中盤は三角形、ヘーレンフェーンは逆三角形。相手陣内にスペースが生まれるのはアンカーの脇。そこにフィテッセのウインガーが入ってこないといけない。
(4)ウイングがアンカー脇のスペースでボールを受ければ、相手のマークがずれてほかの選手が前を向いてボールをもらえ、プレーが連動する。



「そこで、じゃあ(ポゼッションを)放棄してロングボールを蹴り、セカンドボールを拾いにいくプレーをするべきかと言ったら、そうじゃないと思っているんで。(パスを)受け続けようというポジショニングを取りながら、僕にマンツーがついてきた場合、『(4−2−3−1の)ヘーレンフェーンの2列目(発言ママ。3列目と思われる)と最終ラインのギャップにボールをつけよう』というメッセージを常に与え続けていたんです」

 フィテッセにとって、新監督探しの時間はない。週末のフェイエノールト戦は、リザーブチーム監督のジョセフ・オースティングが暫定監督として指揮を執ることになった。

 スルツキ監督の「ボルゴ・カテナチオ」から「ホーラント・スホール(オランダ派)」への移行は、たった2試合で終わった。「志半ば」と言うには、あまりに短すぎた。

Sportiva

「本田圭佑」をもっと詳しく

「本田圭佑」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ