期待のヤクルト新人トリオが猛練習。凡事徹底と個性を磨き激アピール

12月4日(水)6時40分 Sportiva

 ヤクルトの愛媛・松山での秋季キャンプでは、毎日のように若手選手の”明るい未来”を感じることができた。年齢が違う3人の新人野手の練習を見るのも楽しみのひとつで、それぞれが個性的で、来季への期待は膨らむばかりだ。


今シーズン、一軍で5本塁打を放ったヤクルトのルーキー・中山翔太

 それぞれが個性的と書いたが、吉田大成(明治安田生命→ドラフト8位/24歳/内野手)は「自分の色を出すことができない1年でした」と、今シーズンを振り返った。

「自分は守備を売りにしていましたが、プロでは評価してもらうことができませんでした。打撃でも粘り強さをアピールしなければいけなかったのですが、自分の思っていた”うまい”と、この世界の”うまい”は違っていたというか……言葉で表現するのは難しいですが、プロの壁と言ったらいいのか……その壁にぶつかったんだと思います」

 吉田は春季キャンプ、オープン戦まで一軍メンバーに名を連ねたが、開幕は二軍で迎えることとなり、シーズン中に一軍昇格は果たしたが、わずか13試合の出場にとどまった。

「二軍でも結果が出なかったので、すべてをやり直そうと。まずは今までの自分を捨てました。後半に入って、ちょっとずつ形になってきましたが、守備は自分の色をつくり上げる途中でシーズンが終わってしまい、走塁はまだまだ足りないところばかりです。そのなかで打撃に関しては、夏場ぐらいから自分の形がわかってきました」

 事実、宮崎フェニックスリーグで見た吉田は、自分のスイングを見つけたようで、何よりも覚悟が伝わってきた。

「それまでは手だけで打っていましたが、青木(宣親)さんを参考にさせていただくことで、体で打てるようになってきたんです。青木さんのバッティングって独特じゃないですか。なぜあの形で打てるんだろうと真似てみたら、すごく打ちやすかったんです。青木さんを観察し、意識していくなかで、それが積み重なり、フェニックスリーグの後半からこの松山でのキャンプが一番いい感じです。自分は守備でプロに入ったと思うんですけど、今は打撃が一番じゃないかと思うぐらいです(笑)」

 濱田太貴(明豊高校→ドラフト4位/19歳/外野手)は高卒1年目からファームで規定打席に到達。105試合に出場し、打率.254、8本塁打を記録した。今シーズンについて、「自分としてはもうちょっといけたんじゃないか……」と振り返った。濱田の魅力はフルスイングで、高校時代は通算45本塁打を記録した。

「まずは高校時代のスイングでスタートしましたが、試合に出ると三振ばかりで……。コーチの方たちは『今は強いスイングをしていれば大丈夫だよ』と言ってくださったのですが、自分のスイングばかりしていたらボールに当たらない。そこで気づいたことは常にノートに書きとめ、わからなくなった時にそのノートを見て、いい形を取り戻せるようにしました。そのことで強いスイングでボールをとらえられるようになってきました」

 松元ユウイチ打撃コーチは、濱田について次のように語る。

「まず野球センスがあります。相手のことを観察できますし、19歳ではなかなかできないことだと思います」

 松山キャンプでも、コーチからアドバイスを受けた濱田がノートに書き込んでいる姿を何度も見た。

 シーズン終盤には一軍の舞台も経験。プロ初安打はかなわず(2試合に出場し、5打数無安打3三振)、濱田は「自分のレベルがまだまだ低いことを実感しました」と唇を噛んだ。

「一軍の投手はコントロールもキレも本当にすごくて、1打席のなかで打てるボールが1球あるかないかでした。巨人の山口(俊)さんのようなエース級の投手になると、チャンスボールはありませんでした。フェニックスと松山キャンプでは、その経験も踏まえて、コンパクトでありながら力強いスイングで遠くに飛ばし、逆方向にも打てるように。そういう意識を持って練習しています」

 中山翔太(法政大→ドラフト2位/23歳/外野手)は一軍で35試合に出場を果たし、打率.289、5本塁打と、まずまずの結果を残してシーズンを終えた。愛称は「きんにくん」。大好きな”筋トレ”でつくり上げた体が由来で、今はその省略形の「きんちゃん」と呼ばれている。

「このキャンプでは、自分の底上げをテーマにしています。打撃、守備、走塁と全部の技術を高めたい。自分の核となる『これ』というものをつかめれば、調子が悪い時でも対応できるんじゃないかと思っているんです。打撃については、直したいポイントがあって、そのことで体の使い方もすべて変わってくるので、いろいろと考えながら取り組んでいます」

 シーズン中、宮本慎也ヘッドコーチが中山についてこう語っていた。

「もしかしたら、中山が若い選手のなかで一番伸びるんじゃないかと思うんです。彼は(野球を)知らないことを自覚している。だから、人の話を素直に聞くことができる」

 そのことを中山に伝えると、「バカなだけです(笑)」と言って、こう続けた。

「自分はアドバイスのすべてが正解と思っていますし、そのなかで自分に合うものを見つけられたらと思ってやっているだけです。なによりも、指導者の方が言ってくださったことが、自分でも『足りない』と感じていたことと一致していたんです。だから、『やっぱりそうだったんだ』と素直に受け入れやすい部分もありました」

 3人はシーズン終了後、休む間もなくフェニックスリーグ、松山キャンプに突入し、朝から日が暮れるまで練習に励み、思う存分、体を動かしていた。

「フェニックス、松山と続き、プロはこんなに練習するんだって思ったんですけど、やれるだけやりたいし、まだまだできます。一度きりの人生ですからね。オフの期間は(母校の)大学で練習をする計画も立てています」(中山)

「いま取り組んでいることをウインターリーグ(台湾)で試すことができるのでラッキーですよね。来年、バッティングでどんな成績を出せるのか楽しみですし、守備や走塁も実戦で試せます。それを来年1月の自主トレにつなげられたら、また成長できるんじゃないかと思っています」(吉田)

 濱田は、”特打”のあと”特打撃ティー”のメニューを追加してもスイングの力は衰えず、高卒1年目ということを考えれば、体のつよさ、タフさに驚かされた。

「連続ティーやロングティーはきついですけど、『もう無理』ということはないです。やっぱりバッティングは楽しいですし、まだまだいけます(笑)」(濱田)

 松山キャンプは、チーム全体練習が終わるのは午後5時を過ぎた頃で、その後、各選手が個々の課題を持って”自主練習”に励む。吉田は言う。

「来年は、絶対にチームのピースのひとつにならないといけない。チームの駒として機能するには何をすればいいのか。大前提はチームの作戦を必ず実行すること。1点を取るためのバッティングや走塁をする。大事なのはそこから先だと思っています。ほかの選手たちより抜きん出るためには、最低限のことをするなかで、自分の色を出していきたい。まずはサブ的な役割からだと思いますが、チャンスは絶対にくるので、確実にものにして、いずれはレギュラーになりたいです」

 濱田は先輩たちに質問しながら、連日のようにマシン相手のバント練習を続けた。ちなみに今シーズン、濱田が二軍で送りバントをしたのは1回だけだった。

「打撃だけで一軍で使ってもらえる実力は、自分にはまだありません。まずはバントからと思って練習しています。ほかにも、守備や走塁で打撃をカバーできれば、少しはチャンスがあるんじゃないかと思っています」

 そして中山は、これからの目標について、次のように語った。

「自分の打撃を生かすためにも、守備と走塁をしっかりしていきたい。ファインプレーをするとかではなく、取れるアウトは確実に取ることが大事だと思っています。打撃に関しては、ホームランと打率の両方を追い求めたいです。理想は3割、30本塁打で、今年一軍の試合数は少なかったのですが、与えられた場面で結果は出せたと思うので、手応えはあります」

 今シーズン、松元コーチは二軍打撃コーチとして、この3人と多くの時間を共にした。彼らの印象について、それぞれ聞いてみた。

「中山は、最初は力任せの打撃でしたが、上半身と下半身のバランスを意識することで日々成長してきました。松山キャンプでも非常にいい取り組みをしていました。中山が出てくることで、青木や雄平も刺激になるでしょうし、チームにとっても大きい。

 吉田は、たとえば無死二、三塁の場面で、相手野手が下がって守っている時に三振せず、内野ゴロでもいいから1点を取れるバッティングをしてほしい。そういう選手がベンチから信頼を得て、レギュラーになれると思っています。そのチャンスは十分にあると思います。

 濱田は、試合後に個別で室内(練習場)に行って打ち込んだり、夜間もスイングしていました。勉強熱心ですし、いずれ一軍で活躍できる選手になると思います。ただ、センスがいいだけに『これぐらいで十分かな』となりやすいので、そこはコーチとして気をつけたいですね」

 年長の吉田に3人の関係について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「年齢は違いますけど、結構、仲がよくて、一緒にご飯を食べに行ったり、野球談義をしたり、本音でぶつかりあえる関係ですよ(笑)」

 一軍の試合で3人が揃ってプレーする日は、そう遠くはないはずだ。

Sportiva

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