【木村和久連載】メジャー制覇へ。日本人選手の効果的な海外戦略とは

12月5日(木)7時0分 Sportiva

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第233回

 今年の夏、渋野日向子選手が全英女子オープンに優勝し、日本人としては1977年の全米女子プロ選手権を制した樋口久子選手以来となる、メジャー制覇を成し遂げました。誠にめでたいことです。

 一方、男子は”世界のアオキ”こと青木功選手が1980年の全米オープンで2位、松山英樹選手が2017年の全米オープンで2位タイという成績を残していますが、いまだメジャー優勝を果たした選手はいません。

 レギュラーツアーではありませんが、2013年に井戸木鴻樹選手が全米プロシニア選手権で優勝しています。シニアとはいえ、トム・ワトソン、ジャック・ニクラウス、リー・トレビノらそうそうたる面々が歴代優勝者に名を連ねるメジャー大会ですので、とりあえず書き留めておきます。

 こうして歴史を振り返ってみても、渋野選手のメジャー優勝は42年ぶりの快挙。超人的かつ、伝説的と言えます。

 とにかくこれを機に、日本人のメジャー戦略&海外戦略を、素人目線であ〜たら、こ〜たら考えてみたいと思います。

(1)メジャーの”呪縛”
 強くなったら、本場の海外に行ってプレーする考えは、プロスポーツの世界では当たり前のこととなっています。そして、野球やサッカーであれば、海外のチームで試合に出て活躍すれば、大いに評価されます。けど、ゴルフだけ、なんかビミョ〜な立ち位置で、それが成功なのか、失敗なのか、よくわかりません。

 松山選手は、日本の”最終兵器”みたいな存在で海外に進出。PGAツアーで通算5回の優勝を誇り、毎年ツアーのトッププレーヤーとして活躍しています。それを思えば、十分な成功を収めているのですが、メジャーでは全米オープンの2位タイ止まり。世間的な評価は、今ひとつのような気がします。

 なんかね、ここまで来たら”悲願のメジャー優勝”を果たせないと、引っ込みがつかない感じになっていますよね。ゴルフは個人競技なので、実力を量る尺度が優勝のみになってしまう——それが、大変なのです。

 野球だと、イチロー選手のような例があります。

 イチロー選手は、メジャーリーグで地区優勝を1回経験しているものの、引退するまでワールドシリーズには1度も出ていません。でも、打率や安打数などの成績によって、「殿堂入り確実」という評価を受けています。

 ならば、ゴルフも同様に、バーディー数や、フェアウェーキープ率、平均パット数などが評価の対象となれば、見方が変わるかも?……って、それは話がちょっと飛躍しすぎですね……。

 とにかく、男子ゴルフの海外戦略においては、メジャー優勝が必須で、「メジャー2位じゃダメ」という”呪縛”から逃れられないんですな。

(2)スポット参戦
 次に、男女ともメジャー優勝を視野に入れての、スポット参戦の在り方について考えてみます。

 従来のプロゴルファーの武者修行は、日本で十分活躍したのち、アメリカに活躍の場を移し、PGAあるいはLPGAツアーで経験と勝利を重ね、最終的にはメジャー優勝を狙う戦略となります。

 ところが、渋野選手は彗星のごとく現れて、先にメジャー優勝をかっさらってしまいました。

 だったら、わざわざ欧米に主戦場を移す必要はないんじゃないか?

 たしかに、そうなんですよ。慣れない海外生活なんてせずに、通常どおり国内ツアーをメインにして活躍し、オイシイとこ取りを狙って、たまに海外メジャーにスポット参戦する。それで、十分じゃないですかね。

 これが現在の、とくに女子ゴルフ界の置かれている状況だと思います。来年の渋野選手の動向がますます注目されます。



スポット参戦で海外メジャー制覇を狙うのも決して悪くないですよね


(3)コース戦略
 渋野選手が全英女子オープンで勝てたのは、「北海道のコースに似ていたからだ」とも言われています。テレビで試合を見ていましたが、たしかにそういう雰囲気はありました。渋野選手にとって、好きなコースデザインが味方したのであれば、本当にラッキーだったと思います。

 一方、男子はどうでしょうか? 全英オープンで言えば、会場となるのはポットバンカーに、ヘビーラフだらけのコースばかり。あれは、スポット参戦で勝てるコースじゃないです。まるっきり異文化、通常の日本人選手じゃあ、太刀打ちできません。

 もちろん、アメリカのコースにおいても、マスターズが開催されるオーガスタ・ナショナルGCは、ゴルフの技能のすべてを試されるコースで、なかなか難しいものがあります。

 ほか、全米オープンや全米プロの開催コースしかりです。芝の薄いフェアウェーから、200ヤード以上の距離を、アイアンで高い球を打ち、グリーンに止められる技術を持っていないと攻略できません。

 その技術を持っている日本人は、松山選手のみ、というのが現状です。

 男子の場合、本来は松山選手クラスが5人いて、ようやく日本勢の誰かがメジャーを勝てる——そんな感じだと思います。つまり、日本ツアー中心にローテーションを組んで、スポット参戦で海外メジャーを狙うなんて、相当なラッキーに恵まれない限り、たぶん無理です。

 ここは、女子のスポット参戦に淡い期待を抱いていくしかないでしょう。

(4)スポット参戦における障害
 男子は、日本ツアーを主戦場としていても、海外メジャーやPGAツアーの一部で得た賞金は、日本ツアーの賞金額に加算されます。そうなると、海外メジャーなどで活躍し、結果を残すことができれば、日本の賞金王、あるいはシード権を得ることも可能になり、日米を往復しながらのスポット参戦にも積極的になれます。

 翻(ひるがえ)って、女子はメジャーであっても海外ツアーの賞金は、日本ツアーの賞金額に加算されません。ゆえに、渋野選手は全英女子オープンで優勝し、7200万円ほどの賞金を獲得しましたが、日本ツアーの賞金額には一切反映されていません。

 これには、さまざまな憶測があります。海外の高額賞金を国内ツアーに加算すると、国内の賞金女王レースの面白さが半減する、という意味もあるようです。

 けどね、時代はグローバルです。この弊害は、早く改善できないものでしょうか。もし全英女子オープンで獲得した賞金の半額、およそ3600万円を日本ツアーの賞金額に加算していたら、渋野選手が賞金女王になっていましたからね。

 この不可思議な女子の賞金制度を早く撤廃し、半額でいいから、女子海外メジャー5試合の賞金ぐらいは、日本ツアーの賞金額にも加算させましょう。そのほうが、選手も積極的にスポット参戦しやすいでしょうし、人気選手の海外流出を防げるなど、素晴らしい効果を生み出すと思うんですよね。

(5)選手層が薄い男子日本ツアー
 いつの間にか、日本の男子ツアーの選手層は薄くなっていますよね。人気もないし、脚光を浴びる選手は石川遼選手のみ。あとは、誰が勝っても、さほどニュースにならないし……。

 石川選手が日本に戻って来て、ほんと助かりました。そして、石川選手が図らずも、日米の実力差を証明して見せた形になっています。

 結局のところ、男子の海外ツアー、メジャー勝利は松山選手任せ。女子は賞金制度を改革して、スポット参戦で大暴れしてもらう。これが、一番いいんじゃないかと思います。

Sportiva

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