ヤマハの新エンジンは不振を好転させるか【イギリス人ライターのMotoGPオフテスト分析】

12月7日(金)19時53分 AUTOSPORT web

 イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。MotoGPオフィシャルテストで見えた各メーカーの動きをオクスリーが分析する。


ーーーーーーーーーー


 2019年のテストは2月になるまで始まらず、レースも3月までは始まらないが、バレンシアでのオフィシャルテストと2018年最後のテストとなるヘレステストは、2019年シーズンに向けて各ファクトリーチームが準備をする上で重要な時間だ。


 なぜならファクトリーチームは2019年のエンジン仕様をこれら2度のテストで決めなければならず、来年のテストとレースにエンジンのビルドが間に合うようにエンジンパーツを発注して製作しなければならないからだ。


 近年では、トップ3のファクトリーが間違ったエンジンスペックを選択してしまった。一番最近ではヤマハがそうであり、2017年はスズキ、2015年はホンダがそうだった。アプリリアとKTM以外のチームは、シーズン中のエンジンアップデートが禁止されていることから、ライダーは冬のミスの影響を2019年の19レースの間中受けることになってしまう。


 今シーズンの終了はかつてないほど遅かったため、2018年の秋からファクトリーエンジニアの仕事はさらに厳しいものになっている。そして各ファクトリーチームはすでに、規則のすり抜けを防止するために導入された、共通IMU(慣性計測装置)を使用している。


■ロッシ、ビニャーレス好感触のヤマハ新エンジン


 ヤマハのMotoGPエンジニアたちは2019年シーズンのオフは最大のプレッシャーにさらされている。なぜなら、3シーズン前の共通ECUとミシュランタイヤの導入から始まったパフォーマンスのスランプを好転させなければならないからだ。


 ヤマハのMotoGPマネージングディレクターを務めるリン・ジャービスは、我々がここで長らく言ってきたことをついにバレンシアで認めた。ジャービスによれば「我々の問題は2年前に始まった」ということだ。それは2016年のことだ。


 バレンシアテストでバレンティーノ・ロッシとマーベリック・ビニャーレスは、より優れた加速に加え、減速時のトラクションをもたらすよう設計されたふたつの新エンジンを試した。コーナー立ち上がりにおいて、高いパフォーマンスが必要なことは明白であるが、コーナーエントリーの際のより良いパフォーマンスの必要性は低い。

バレンシアテストをトップタイムで終えたマーベリック・ビニャーレス
バレンシアテストをトップタイムで終えたマーベリック・ビニャーレス


 ミシュランのリヤスリックはグリップが優れているため、ライダーたちはマシンを止めるためにリヤのグリップを使う必要がある。またフロントタイヤの負担を減らすようになっているので、簡単に荷重がリヤタイヤにかかりすぎてしまう。しかし2018年のヤマハYZR-M1エンジンのクランクシャフトの慣性は小さすぎたため、回転数を急激に落としてしまい、リヤタイヤをロックさせ、ライダーがコーナーに進入する流れの妨げとなった。


 そして、まさにその新エンジンのひとつがビニャーレスに割り当てられたが、ビニャーレスはバレンシアテストで最速だった。


「エンジンブレーキの感触は良いものになったと思う」とビニャーレスは語った。


「コーナーエントリーでは深く集中していった。なぜならそこがグリップとタイムを失ってしまう場所だからだ。だから重要なんだけど、コーナーに進入する際に心強くいられた。でもトップパワーについては、もっとスムーズにするためにやるべきことがたくさんある。いまだにアグレッシブだし、多くのトラクションを失ったからね」


 ロッシも同様のフィードバックをしている。「エンジンはコーナーエントリーを大きく変えた。バイクに乗りやすくなったし、より一貫性が保てるようになった」とロッシは語った。


「加速の点では大体同じだね。ヤマハは僕たちに柔軟な性質のエンジンを与えようとしている。スピンが減るようにね。でもいまだにリヤタイヤのデグラデーションには大分悩まされている。今月の2回のテストは、ヤマハの作業の方向性について良い判断材料をもたらしてくれるだろうし、僕たちには2月に向けて変化を加える時間がある」


 おそらくビニャーレスは新エンジンから最高の感触を得ている。なぜならビニャーレスは2018年終盤の数レースでマシンバランスを根本的に変えたからだ。荷重を後方に移し、ブレーキング時とコーナーエントリーの際のリヤのグリップを改善させたのだ。


■ヤマハと同じ課題に取り組むアプリリアのアプローチ


 リヤタイヤをフロントタイヤの補助に使い、リヤエンドのストップ時のパフォーマンスに大きく重点を置いているのは、ヤマハだけではない。アプリリアは2018年を通してほぼ壊滅的だったが、2018年シーズンのラスト3戦でラボバイクと呼ばれる、2017年、2018年、2019年のパーツを合わせたバイクを導入し、状況を好転させた。

アプリリアを駆るアンドレア・イアンノーネ
アプリリアを駆るアンドレア・イアンノーネ


 バレンシアテストの間、アレイシ・エスパルガロと新チームメイトのアンドレア・イアンノーネのふたりは、新しいエンジンとシャシーを試した。


「新しいエンジンを使う最も大きな理由は、より強力なエンジンブレーキを得ることにある」とエスパルガロは説明した。


「2018年シーズンはすべてのコースでエンジンブレーキの電子制御の性能を高めようとしたが、リヤタイヤがロックしてしまった。リヤタイヤをロックさせずにエンジンブレーキを向上させることは、2019年に向けて鍵となることのひとつだ。これはエンジン、電子制御、シャシーのジオメトリーなど様々なことの組み合わせなんだ。なぜならエンジンと電子制御から優れたエンジンブレーキを得ることができたとしても、タイヤがコースをプッシュしていなければ、すぐにロックしてしまうからね。どのようにリヤタイヤをストップさせ、荷重をかけるかがすべてなんだ」


 エスパルガロは、2019年には新しいエレクトロニクスエンジニアや新クルーチーフであるアントニオ・ジメネスらを含む、まったく異なるクルーを持つことになる。ジメネスは2014年にアルバロ・バウティスタと最後にMotoGPで組んでからは、Moto2クラスで仕事をしていた。


AUTOSPORT web

「テスト」をもっと詳しく

「テスト」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ