ローマが与えた衝撃。トレンドに即した最適なチーム作り。ユーベとともにCL16強へ

12月8日(金)11時45分 フットボールチャンネル

故障者続出による影響も。内容振るわなかったユベントス

 6日にUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージの全試合が終了し、大会はいよいよ決勝トーナメントへと移る。イタリアからは3チームがグループステージに進出し、ユベントスは2位通過、ナポリはグループステージ敗退となった。そんな中、衝撃を与えたのがローマだ。A・マドリー、チェルシーと同組となった同チームは他国の強豪に互角以上の戦いを見せ、首位通過となった。低迷の時期を迎えているイタリアサッカー界にとってこの結果は、汚名返上のきっかけとなるだろうか。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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 イタリア代表がロシアW杯出場を逃し、せめてクラブレベルでの汚名返上をと、イタリアのサッカーファンは願っている。そんな中、今季のUEFAチャンピオンズリーグには久々に3クラブがグループステージに進出。ただ決勝トーナメントに駒を進めたのは、昨季同様2クラブとなった。

 内容の良くない試合の続いたユベントスだが、2位通過は確保。昨季はグループ1位通過を決めたナポリは敗退した。その一方で、チェルシーとアトレティコ・マドリーと同組になったローマが1位通過を決めるサプライズを演出した。停滞か低迷か、あるいは復権の兆しなのか。グループリーグにおけるイタリア勢の闘いぶりを総括してみたい。

 まずはユベントス。バルセロナと同組になり2位通過という成績は、十分想定内のものだと言える。ただ昨季はそのバルサを準々決勝で下し、最終的に決勝まで進出したクラブとしては、戦績もパフォーマンスも若干物足りなかった感は否めない。

 特に開幕節では、カンプ・ノウの直接対決で0-3と大敗。昨季の課題となった層の薄さを積極補強でクリアしたはずなのに、結果に繋がらない。その試合では故障者が続出という事情もあったとはいえ、メディアは批判しファンはため息を吐いた。

 ただ内容面での苦戦は、オリンピアコス、スポルティング・リスボンと続いていくことになる。それも開幕節と文脈は同じで、新戦力を巻き込んだサッカーの構築に時間が掛かったのである。昨季のチームからはダニ・アウベスにレオナルド・ボヌッチと戦術上重要な駒が2つ抜け、その穴埋めというのがまず一つの課題。

 そしてもう一つは、マッシミリアーノ・アッレグリ監督が戦術そのものにも若干手を加えていたということだ。アンドレア・バルザーリを右サイドバックに置き、試合中に3バックと4バックを臨機応変に使い分けるものではなく、右にも上下動の効くサイドバックを置いてより攻撃的に闘うというものだ。

 だがマッティア・デ・シーリオの故障離脱がたたったのに加え、新戦術の要として期待していたドゥグラス・コスタもフィットに時間が掛かる。ポゼッションを高めて攻撃はするも相手を崩せず、一方でカウンターは食らって失点もそこそこ多いという、昨季の堅実さが失われた状態になった。

リーグ好調のナポリ。しかしCLでは振るわず…

 しかし彼らは、守備の再構築をキーワードにまとまりを取り戻す。第5節のバルセロナ戦では相手をしっかりノーゴールに抑え、第6戦でも堅実に闘ってオリンピアコスに勝利した。気がつけば、ボヌッチが抜けたCBにはメディ・ベナティアが定着し、ドゥグラス・コスタも守備意識を高めてチームにフィット。最終節では新戦力のフェデリコ・ベルナルデスキも華麗なシュートをねじ込んでいた。尻上がりに調子を上げるチーム作りは、アッレグリの得意とするところ。復調の機運を得られたことは、決勝トーナメントに臨む上でのポジティブな材料だろう。

 次に、グループリーグ敗退でELに回ることとなったナポリ。マンチェスター・シティーにシャフタール・ドネツクと、グループの対戦相手はそもそも厳しいものだった。ただ、リーグ戦は開幕から首位を走り、選手個々のパフォーマンスも絶好調だったはず。なのにCLでは奮わなかった。

 やっているサッカーは大きく変わったわけではない。相変わらずホームでは強かった。ハイプレスで相手をゴール前に押し込み、ボールを奪った後はショートパスで撹乱するサッカーの質はそのままで、どんな相手も常に敵陣に押し込みイニシアチブを握っていた。

 マンCのジョセップ・グアルディオラ監督も「監督としても選手としても、ナポリは今まで対戦した中で一番強いチームの一つだった」という賛辞を残している。

 とはいえそのマンCにはアウェイで1ー2、ホームで2-4だ。エティハド・スタジアムでの第3戦では、正確な後方のパス回しでプレスをかわされたのちにサイドを速攻で破られ、開始30分間で圧倒され2失点。

 サン・パオロでの第4戦ではパスワークで相手を圧倒して流れからゴールを陥れたが、昨季から苦手とするセットプレーの守備を突かれてあっさり2失点。その後ナポリは3ゴール目を奪いそうにはなるが、攻め気になった裏をカウンターで仕留められた。

ナポリが露呈した選手層の薄さ。戦術プランの少なさにも課題が残る

 マンCに対しては戦力でも歴然とした差があったが、セットプレーとサイドの守備の脆さは他の試合でも晒している。シャフタールとの第1戦でも、サイドへの縦一本の展開とクロスであっさり失点を喫し、勝たなければならないフェイエノールトとの第6戦ではセットプレーで陥落した。

 セリエAの多くのクラブなら、カウンターに行かれる前にボールを奪えて押し込めてしまう。だが激しいプレスに慣れており、身体能力の高い選手を揃えているCLの常連は、我慢しながらカウンターを繰り出すゲームプランも取れてしまうのだ。

 一方で中盤から前は線が細く小兵の多いナポリは、どうしてもハイプレスとポゼッションというスタイルを取らざるを得なくなる。選手層の狭さもあいまって、別の戦術プランを持てなかったのも痛かった。

 また選手層の薄さは、コンディショニングにも非情なまでに響いた。左サイドバックのファウジ・グーラムが故障離脱し、絶好調だったロレンツォ・インシーニエも故障で使えなくなった第6戦では、持ち味とする左サイドの連係が死んだ。
 
 首位のナポリがグループリーグで敗退したのは、イタリア勢の復権アピールとしてはマイナスである。だがその代わり、CL本線は2年ぶりの参戦となったローマが躍進した。今季から就任したエウセビオ・ディ・フランチェスコ監督は指導者としてCL初参戦だが、意外にも欧州のトレンドに沿ったチームを作り上げ、最適なチームマネジメントも取ってきた。

 それは端的に言えば、縦への速攻と過密日程を乗り切らせるための選手采配だ。4-3-3システムをベースにサイドアタック主体で、手数の少ない攻撃でゴールを陥れる。

 プレスも激しく掛ける一方で、守るべき時間帯では引いて守るクレバーさも求める。こうした戦術を浸透させ、選手を入れ替えても大きな変化がないような連係を作り上げた。

サプライズとなったローマの首位通過。新スタジアム建設にも追い風か

 そしてローマは、2強相手から素晴らしい結果を挙げた。第1戦ではA・マドリーに攻め込まれながらも堅守でドロー。そしてチェルシーとの2連戦では1勝1分だ。

 スタンフォード・ブリッジでの第3戦では大胆にもダニエレ・デ・ロッシをベンチに置き、20歳のジェルソンを先発させる。しかしコンディション重視で組まれたメンバーはスピードとランニングの勢いでチェルシーと互角以上に渡り合い、3-3のドローに持ち込んだ。

 続く第4戦では、第3戦でベンチスタートだったデ・ロッシにステファン・エル・シャーラウィ、そしてアレッサンドロ・フロレンツィを先発起用。前半は攻め込む相手からカウンターで狡猾に2点を奪うと、後半は逆に、サイド攻撃を取っ掛かりにしてラインを大胆に押し上げる戦術で敵のイレブンを分断。

 アントニオ・コンテ監督のお株を奪うかのように時間帯で守備も使い分け、無失点で大勝。A・マドリーがカラバフ相手に2試合連続のドローを喫する間、チェルシーから2戦で勝ち点4を稼いだことがグループ1位通過への大きなアドバンテージとなった。

 昨季と比較し、モハメド・サラーとアントニオ・リュディガーを失っている分、戦力上はダウンしている。だがその欠落をチームマネジメントで補い、若手を育てて層さえも厚くした。エル・シャラウィはチェルシー戦で2ゴールと復活し、ジェルソンやロレンツォ・ペレグリーニも戦力になっている。そこにエディン・ジェコやラジャ・ナインゴラン、新加入のアレクサンダル・コラロフら国際経験豊富な選手たちがしっかりと主軸を固め、非常にバランスが整った選手構成に仕上がっている。

「誰もが我われが3位以下で終わると見ていた。だが私は、この選手たちを信じていた」

 ディ・フランチェスコ監督は胸を張った。決勝トーナメント進出を決めた5日には、新スタジアム建設計画にローマ市から完全承認が下りた。勢いをつけて、この先の戦いでも更なるサプライズを起こしたいところだ。

 高らかに復調をアピールすることができるのは、あくまで今後の戦い次第だ。ユーベとローマはCLで、そしてナポリはELで更なる高みを目指す。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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