優勝知らぬ「暗黒」浮き彫りに——猛虎党手製のカレンダー

12月8日(金)10時38分 スポーツニッポン

「タイガースカレンダー」と大森正樹さん

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 【内田雅也の広角追球】熱烈な阪神ファンで、独自調査のデータを基にした手製カレンダーを毎年作成しているデザイン研究家、大森正樹さん(50=兵庫県芦屋市、会社員)による2018年度版がこのほど完成した。

 新たな試みとして、阪神の過去9度の優勝(1937年秋、38年春、44年、47年、62年、64年、85年、2003年、05年)を経験した選手(優勝シーズンに公式戦出場)を調べあげた。プロ野球初年度1936年(昭和11)から今年までの阪神公式戦1万355試合で、1軍出場選手は754人。うち優勝経験者はちょうど200人だと分かった。

 現役選手で優勝の味を知るのは03、05年を経験している藤川球児、能見篤史鳥谷敬の3人だけとなっている。

 大森さんは「近年何度か優勝のチャンスはあったが、ことごとく逃してきた。特に08年、10年はもう少しだった。そうすれば今もV戦士と言うか、優勝の味を知る選手がもっと多くいることになるのだが……」と残念がる。

 振り返れば、18年ぶり優勝だった03年や、21年ぶり優勝だった85年も生え抜きの優勝経験者は1人もいなかった。

 調べていくうちに、大森さんは「優勝と優勝の間に深い谷をつくってしまった過去が、いま再現されつつある」と危機感を抱き、何とか表現しようと工夫した。

 カレンダーでは横軸に年度、縦軸に背番号をとり、754人を丸印で配置。背景は黒地にし、優勝経験者200人には優勝年度ごとに黄、オレンジ、緑……など明るい色をつけた。出場試合数に応じて丸の大きさを変えた。「色のある所(山)とない所(谷)が分かれ、優勝の谷間が闇のように黒く浮かびあがります」

 再び優勝経験者ゼロの暗黒時代に陥らないためにも、大森さんは「来年こそ優勝を」と願う。

 カレンダーはA2判2枚組(表裏4ページ)。付録のポスターとして歴代公式戦(1軍)出場選手を出場順に一筆書きした上で虎マークを描いた“路線図”、来年の公式戦日程を球場別の移動で示した“トラ”ベル・カレンダー、全公式戦1万355試合を打順、守備位置別の出場試合数、曜日、得失点などを統計したグラフなどがある。

 大森さんは06年から毎年、テーマを変えて阪神カレンダーを製作している。たとえば2010年度版は過去の月日別の勝敗(引き分け)を積算した上で勝率を書き込むという資料性に富んだ労作だった。当時の成績でいえば、最強日は7月3日(31勝12敗1分け、勝率7割2分1厘)、最弱日は9月12日(12勝26敗1分け、3割1分6厘)だった。この成績はその後も継続して集計し、18年度版カレンダーにも付記されている。

 カレンダーは非売品。毎年12月に友人・知人、さらには交流のある阪神球団首脳にも配布している。

 大森さんは1967年1月、東京で生まれ、育った。少年時代からデザインに興味を持ち、プロ野球のテレビ中継や雑誌などで見かけた、美しい阪神の帽子やマークにひかれてファンになった。

 千葉大学工学部工業意匠学科を卒業し、鉄道会社に就職。阪神球団草創期からトラマーク、球団旗、ユニホーム、「Tigers」のロゴなどをデザインした阪神電鉄デザイン室(当時)のデザイナー、早川源一氏(故人)に関する研究論文も発表している。

 日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)、日本デザイン学会会員。母校の千葉大工学部デザイン学科や早川氏が出た京都工繊大で非常勤講師を務める。

 大森さんと初めて会ったのは2008年11月の阪神ファン感謝デーだった。「こんな人がいますよ」と当時、甲子園球場長だった揚塩(あげしお)健治さんが引き合わせてくれた。阪神や野球の歴史に思い入れのある者同士。意気投合する様子に、隣にいた奥様が「話が合う人がいたね」とほほえんでいたのを思い出す。その揚塩さんが12月から阪神球団社長に就任した。大森さんは「こんな日が来るとは」と喜び、新球団社長にも優勝の谷間を埋めてほしいと願っている。

 カレンダー作成とほぼ時を同じくして、年賀状も阪神タイガース関連のデザイン性に優れたものを作成。喪中で年賀欠礼のはがきを出す知人でも「年賀状はいただきたい」と申し出るほどだ。

 大森さんは「カレンダーも年賀状も相当な時間がかかり大変だが、楽しみに待ってくれている人もいる。やれるところまでやり抜きたい」と話す。この情熱こそ、球団歌にある「獣王の意気」猛虎魂なのだろう。

     (編集委員)



 ◆内田 雅也(うちた・まさや) 来年は春の選抜90回、夏の選手権100回大会と高校野球は大きな節目を迎える。桐蔭高(旧制・和歌山中)野球部OBとして、高校野球(当時中等野球)草創期の歴史の再取材を進めている。1963年2月、和歌山市生まれ。桐蔭高—慶大卒。大阪紙面で2007年から主に阪神を追う『内田雅也の追球』を執筆。

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