インディカーがハイブリッドエンジンの導入延期を発表。導入時期はシーズン途中のインディ500後に

2023年12月10日(日)17時30分 AUTOSPORT web

 12月7日、NTTインディカー・シリーズは、2024年シーズン開幕からの導入を予定していたハイブリッド機構を持つパワーユニットの使用を、5月に行われる第5戦インディアナポリス500マイルレースの後に予定していることを明らかにした。


 インディカーは、2019年にハイブリッド機構を持つパワートレインシステムの導入を発表し、以降はエンジンコンストラクターであるホンダとシボレーとともに、新型エンジンの開発を進めてきた。


 現行のインディカーでは、ノンハイブリッドの2.2リッターV6ツインターボエンジンが使用されているが、当初の計画では2023年シーズンから、新型の2.4リッターV6ツインターボエンジンにハイブリッド機構を組み合わせたパワートレインを導入する予定だった。


 しかし、2022年12月にはその開発を一時休止することを発表。この時点で新型パワーユニットは、従来の2.2リッターV6ツインターボエンジンにハイブリッド機構を組み合わせる方向へと計画を修正し、2023年シーズン中には新型パワーユニットの開発テストを行ってきた。

2023年仕様のシボレーエンジン。2024年も第5戦まで使用が継続される


 2023年8月16日には、セブリング・インターナショナル・レースウェイでハイブリッド機構を組み合わせたパワーユニットの最初のテストが行われている。以降もテストは行われ、これまでに13人のドライバーによって、合計1万5256マイル(約2万5000キロ)のテストが完了している。


 2024年シーズンの途中に導入される予定のハイブリッドシステムは、モータージェネレーターユニット(MGU)とエネルギーストレージシステム(ESS)で構成され、どちらもエンジンとギアボックスの間にあるベルハウジング内に収まる。


 現時点でESSには、充放電スピードと総量に優れるとされるウルトラキャパシターが採用されているが、エネルギーの回生および展開のシステムについては現在もあらゆるシステムが検討されている状況のようだ。

2023年8月のインディアナポリスで、テストに参加したウィル・パワー


 また従来のエンジンでは、レース中のオーバーテイク機会を増やす試みとして、『プッシュ・トゥ・パス』が導入されている。これは、ロード/ストリートコースでのレース中に1回の使用で20秒間ターボ過給圧を増加させることで、出力が約60馬力向上するというシステムとなっており、レース中合計200秒間の使用が可能だ(サーキットごとに使用時間は異なる)。


 この『プッシュ・トゥ・パス』は、新型パワーユニットの導入によってハイブリッド機構を使ったシステムへと新しくなる。ドライバーがステアリングホイールのパドルを引くとエネルギーを蓄え、ボタンを押すとエネルギーが展開されるといったシステムとなることが明らかにされている。


 これらのアクションは、各ドライバーの戦略的タイミングによって左右され、新たなドライビング技術としても勝負を占う要素となるだろう。また、これまで設けられていた合計使用時間の制限も取り払われることとなり、決勝レースでのバトル展開の変化も期待されている。


 インディカー・シリーズのジェイ・フライ社長は、「シボレーとホンダのパートナーシップは驚くべきものです。インディカー専用のハイブリッドパワーユニットはダイナミックで、驚異的なエンジニアリングによって生み出されるシステムです。私たちは来シーズンの導入を成功させることに全力で取り組んでいます」とコメントしている。


 2024年シーズンは、第5戦インディ500までは従来のノンハイブリッドエンジンを使い、第6戦デトロイト以降はハイブリッド機構をもつ新型パワーユニットを導入するという変則的な1年となる見込みだ。シーズン途中に度欧入される新たなシステムにいち早く対応するドライバーが現れるのか、はたまたエンジンコンストラクターの勢力図に変化が現れるのか。来季のインディカーは、第6戦デトロイトでの“第2の開幕”にも注目したい。

8月のハイブリッドエンジンテストに訪れた(左から)シボレー・インディカープログラムディレクターのロブ・バックナー、インディカー社長のジェイ・フライ、ホンダ・ハイブリッドプロジェクトリーダーのマット・ナイルズ
2023年8月のインディアナポリス ハイブリッドエンジンのテストの様子

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