競走馬の疲労回復術 横になって眠るのはせいぜい1時間程

12月10日(日)7時0分 NEWSポストセブン

角居勝彦調教師が競走馬の疲労回復について語る

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 中長距離のトップクラスともなれば、秋は天皇賞(秋)→ジャパンカップ→有馬記念というのが、王道ともいえるローテーション。関西馬にとってはすべて長距離輸送が伴うし、その前に毎日王冠や京都大賞典を叩くというケースも多い。激戦を乗り切るためには、「疲労回復」が重要のはずだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、競走馬の疲労についてお届けする。


 * * *

 結果が芳しくなかったレース後の陣営のコメントに、「見えない疲労があったのかもしれない」というものがあります。


 分かったような分からぬような、便利な言い訳です。敗因がはっきりせず、そんなことくらいしか言えない場合に飛び出す言葉なのでしょうか。


 疲れが敗因。そのとおりかもしれません。レースや輸送の緊張で馬に疲れがたまる。陣営は「見えるもの」として疲れを感じ取り、払拭しなくてはいけない。


 疲労のサインは、飼い食いが落ちる、体重が落ちる、毛艶が悪くなるなど。下肢部がむくむこともあります。


 さらに分かりやすい場合も。朝、馬房から出たがらない。さっきまで飼い葉を食べていたのに、横になるといくら尻を叩いても起き上がらない。「疲れてるから、調教はイヤ!」という意思表示です。


 そういったサインがなく、元気いっぱいに見えたのに凡走すると、前記のコメントが登場するわけです。競走馬の疲れをどう取るか。いつも心を砕いています。


 まずはレース間隔。オープン馬ならばレース間隔が最低でも1か月は開くからほぼ心配ないのですが、それでもGIIの後より、GIの後の方がこたえていますね。これは時計が速い遅いじゃなくて、やはり大レースの重圧を感じているのかもしれません。輸送の際は、眠ることなどできませんからね。


 それでもキャリアを積んだ馬は、レースに向けて自分で体調をコントロールできるようになることがありますが、500万下や未勝利馬などはレース間隔を詰めることも多く、レースの疲労とどう向き合うかがとても重要です。


 中2、3週のローテーションで1クール3走が目安。経験則だと、それ以上使うと疲れが取れにくい。季節によって疲労度が変わり、夏場は2走、逆に冬場は4走でいける場合もあります。


 人間の場合、睡眠こそが唯一最大の疲労回復手段だそうです。馬は少し違いますが、よく眠れるようにということは考えます。


 人間ならば風呂に入って、アルコールを飲んでぐっすり眠れるという人が多い。馬の場合、日常的に言えば、状態のいいまま、肉食動物に襲われる危険性がない馬房に入れば、横になって休みます。


 だからといって何時間もずっと寝ているということはありません。やはり肉食動物に襲われるかもしれないという本能があるし、長い間横になっていると自分の体重で壊死してしまう。だから横になるのはせいぜい1時間ぐらいだと思います。


 立って寝るときもありますが、声をかければびくっと耳が動いたりするので、深い眠りではないのです。


●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。今年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が発売中。


※週刊ポスト2017年12月15日号

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