【コラム】M150杯で「種まき」は完了…五輪に向けて若武者たちのテストが始まった

2017年12月17日(日)10時52分 サッカーキング

U20日本代表の決勝戦のメンバー [写真]=川端暁彦

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 3年後に「U−23」となるU−20日本代表、すなわち東京五輪代表の最初の活動となったM−150カップがタイ王国のブリーラムを舞台に、12月9日から15日にかけて開催された。今回のメンバーは今年5月のU−20ワールドカップに臨んだ23名は全員が招集外となり、初代表の選手も多数含んだ、いわば“チャレンジャーチーム”によるトライアルという位置付けだった。

 結果としては初戦で地元のU−22タイ代表に1−2と敗れたものの、現地の暑熱にも慣れてきた第2戦ではU−22北朝鮮代表を4−0と一蹴。3チームが1勝1敗で並んだ状況から得失点差でグループリーグを1位通過。U-22ウズベキスタン代表との決勝戦に臨んだ。この試合は2−2からのPK戦の末に敗れてしまったものの、選手を見極めるという意味でも、チーム作りの第一歩という意味でも、一定の成果が観られる大会となった。

 来年1月に行われるAFC U−23選手権に選ばれるのはU−20ワールドカップメンバーだと思われている向きもあるが、そう単純な話でもない。U−20W杯の登録メンバーは21人なのに対し、AFC U−23選手権の登録は23人なので単純に考えても新たに2人が必要だし、FW小川航基(ジュビロ磐田)のように長期戦線離脱中の選手もいる。MF堂安律(フローニンゲン)のように海外移籍をしてしまった選手は当然ながら招集不能だし、これから移籍しそうな選手の招集も現実的ではないだろう。加えて、今回はタフなスケジュールをこなしてきたFW久保建英(FC東京U−18)らが休養を優先して招集を見送られる見込み。もちろんJリーグで結果を出している選手たちや下の世代の選手の新規招集もありそうなのだが、意外に「枠」自体はあるのだ。今回のM−150杯はその争奪戦という色合いもあった。

 誰が生き残りを果たすだけのアピールを見せたのかを言い切るのは、ポジションの絡みもあるので簡単ではない。ただ、森保一監督が第3戦(決勝戦)の先発メンバー選考について述べた、「ここまでの2試合で結果を残した選手や練習でのパフォーマンスが良かった選手と、もう1度観ていたい選手。第1戦と第2戦が同じ条件の試合だったとは思わないので」と述べていた言葉を思えば、第3戦の先発に入った選手がまず有力候補と観るべきだろう。

 すなわち、超長身GKオビパウエルオビンナ(流通経済大学)、ランニング能力と打開力を兼ね備えるDF長沼洋一(モンテディオ山形)、高さに加えて一発のフィードもあるDF庄司朋乃也(セレッソ大阪)、190cm近い高さに加えて最近は機敏さも増してきたDF立田悠悟(清水エスパルス)、左足のキックという絶対的武器を持つMF浦田樹(ギラヴァンツ北九州)、レンタル修行で動きの量も引き出しも増えたMF平戸太貴(FC町田ゼルビア)、圧倒的なリーダーシップと意欲的な守備意識、決定的仕事をこなす力を見せ付けたMF神谷優太(湘南ベルマーレ)、多彩な技術と的確な判断が光ったMF井上潮音(東京ヴェルディ)、そして初代表ながら怪物的なポテンシャルを示したFW上田綺世(法政大学)といった選手たちだ。

 とはいえ、今回の大会でアピールしきれなかった選手たち、AFC U−23選手権に選ばれなかった選手たちがノーチャンスという話でもない。これはあくまで「種まき」として理解すべきなのだ。3年後に向けて戦力の発掘は大きなポイントだが、あくまで本番は「3年後」である。「現時点での序列はもちろんあるが、それが五輪のときにどうなっているか」と指揮官自身が喝破したように、いまはまだ力不足だったとしても、ここで得た課題なり刺激なりを糧として大きく伸びてくる選手が出てくる可能性もある。

 今回の遠征を通じて森保監督は「ポテンシャル」という言葉を使っているが、そうした選手たちの潜在性能を見極めようとしていた節もあった。「まだまだ足りないと分かった」と語ったのはFW小松蓮(産業能率大学)で、「来て良かった」と漏らしたのは井上だが、ここで刺激を得た選手たちが「五輪」という一つの目標に向かってどう変わっていくのか。そちらのほうが「3年後」に向けてより重要な要素なのかもしれない。

文・写真=川端暁彦

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