よく耳にする日本投手の駆け込み寺、「ドライブライン」ってどんなところ?

2022年12月19日(月)14時34分 ココカラネクスト

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 メジャーリーグだけでなく、日本のプロ野球選手にとっても「駆け込み寺」としておなじみの存在となった。シーズンオフを迎え、シアトル近郊のトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」に足を運ぶ選手が後を絶たない。

 日本ハム・上沢直之は、投球フォームなどの動作解析のために、12月上旬から数日間滞在。さまざまな動きを見直したところ、チェックポイントが見つかり、そこを改善すれば直球の最速を2〜3km伸ばすことが可能である手応えを得たという。これまで自己最速は152kmで、来季は155kmを目標に設定。「そうなれば真っすぐで空振りが取れるようになると思う」と目指していく。

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 近年ではエンゼルス・大谷翔平が同施設でのトレーニングメニューを実践し、主に投球面でパフォーマンスを向上させたことで知られる。大谷は重さが異なるボールを壁当てなどで投げ分け、肩肘の強化だけでなく、身体全体の適応能力を活性化させているという。「プライオボール」と呼ばれ、硬式球が約145gなのに対し、100g、150g、225g、450g、1kg、2kgと6種類の重さが用意されている。

 このオフも中日・根尾昂やソフトバンク・近藤健介らが同施設を利用したことが報じられた。もっとも2010年代後半からは、日本ハム・金子弌大やDeNA・今永昇太、浜口遥大、阪神・藤浪晋太郎、ロッテ・種市篤暉らが同施設のメニューや解析術に触れている。日本ハム・伊藤大海は苫小牧駒大時代からプライオボールを用いていたという。

 日本での広告塔が大谷ならば、本場メジャーリーグで同施設の存在を知らしめたのが、現在は性的暴行疑惑により2年間324試合の出場停止処分を科されているドジャースのトレバー・バウアーだった。インディアンス時代のメジャー2年目の2013年シーズンを終えたオフに、ドライブライン・ベースボールの門を叩いた。

 翌年からメジャー定着を果たし、2018年には28試合で12勝6敗1セーブ、防御率2・21とエース級の投手に成長。レッズ移籍後に迎えた短縮シーズンの2020年には、ダルビッシュ有との争いを制してナ・リーグのサイ・ヤング賞に輝いた。

 モーションキャプチャーを用いた解析で、ピッチデザインが飛躍的に向上したという。変化球の回転軸の見直しだけでなく、例えば高めに投じるカーブが有効など、そこでは多くの「気付き」が得られた。

 2012年、数学者だったカイル・ボディ氏が創設した当初は、薄暗い倉庫の一角にある小さなトレーニング施設にすぎなかった。それがこの10年間で巨大成長を遂げ、近年はドライブライン・ベースボール出身の指導者やアナリストたちが、メジャー各球団に多く採用されている。

 もっとも、そうした人材流出も重なり、ドライブライン・ベースボールのノウハウやメソッドの多くは球界全体に吸収されていった。日米両球界でここ数年みられた投手の急成長ぶりに寄与するところも大きかったはずだ。

「第2のドライブライン」は果たしてどこに眠っているのか。周りと同じことを試しても、突き抜けることは難しい。全米の、いや世界のベースボーラーたちは、新たな処方箋を求めてあらゆるところに目を凝らしているのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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