引退後も来日。フェルナンド・トーレスが明かすJリーグを選んだ理由

12月19日(木)6時0分 Sportiva

Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由

元サガン鳥栖 フェルナンド・トーレス(1)

今年27年目のシーズンを終えたJリーグ。現在は、じつに多くの国から、さまざまな外国籍選手がやってきてプレーするようになった。彼らはなぜ日本でのプレーを選んだのか。日本でのサッカーや、日本での生活をどう感じているのか? この連載では、彼らの本音を聞いていく。

◆ ◆ ◆

 フェルナンド・トーレスは今、母国スペインに拠点を置きながら、サガン鳥栖のアドバイザーとしてクラブと密に連絡を取り合っている。


日本でプレーすることになった経緯を語るフェルナンド・トーレス

 8月23日のヴィッセル神戸戦で現役を退き、家族と1年ほど送った日本での生活にピリオドを打った。けれど、その後も「大きなポテンシャルを宿す鳥栖が、それにふさわしいクラブになれるように手助けしたい」と思い、引き続きクラブとの関係を維持。トレーニングや育成などに関する助言をして、「時間が許すかぎり、日本にも来るようにしたい」と言う。

 11月下旬、引退後初めて来日したトーレスがJリーグを訪れた際に、このインタビューが実現した。村井満チェアマンが同席する場で、まずはこの元スペイン代表FWが現役最後の舞台に日本を選んだ経緯から訊いた。

「アトレティコ・マドリードとの契約が終わり、次の所属先を考えていた時、正直に言うと、ファーストチョイスは日本ではなかったんだ。ただ、日本行きを強く勧めてくれた人がいて、少しずつ考えるようになっていった。日本を知る人に話を聞くと、誰もがすばらしい国だと言う。敬意、親切な人々、プライベートを尊重してくれるところなどがある、と。

 Jリーグの映像を観るようになり、フットボールのレベルが高いこともわかった。そして妻や家族と話したら、日本がベストかもしれないね、と言ってくれたんだ。家族にとってすばらしい生活、クオリティーの高いフットボールがあるようだったからね。ただ、僕らがそれまでに知っている文化や生活とは大きく異なるはずだったから、大きなチャレンジになるとも思っていた。フットボーラーとしても、人間としても。でも今こうして振り返ると、とてもよい決断だった。1年ほどプレーして、現役を日本で終えることになって、すごくよかったと感じているよ」

 では、実際に日本で生活を始めてみて、印象は想像どおりだったのだろうか。

「僕らがこれまでに知っていたものとは、完全に異なる日常があった。ヨーロッパと日本では、文化や慣習、考え方が違うからね。たとえば日本の小学生が子どもたちだけで学校に通う姿には、とても驚いたな(スペインでは通常、親が送り迎えする)。うちの小さな子どもたちは、日本の学校や友だちとの日々の生活を通して学んだ価値観を備えている。きっと、これからも忘れることはないだろう。

 それから、多くの新しいことを発見した。宮島や高千穂、福岡など、家族でいろんなところを旅行し、たくさんのすばらしい場所を見つけた。美しい寺を巡り、静かな場所で心を安らげることができたのは、本当によい思い出だよ。自分自身に立ち返り、静寂を味わえた。都会ではまずできない贅沢だね。

 日本での日々は、家族全員にとって、本当にポジティブな経験だった。だからこそ、これからも日本とのつながりを保ち、できるかぎり戻ってきたいと思っているんだ」

 彼の幼少期のアイドルのひとりは、スペインでは『オリベルとベンジ(Oliver y Benji)』の題名でテレビ放映されていた『キャプテン翼』の大空翼(オリベル)だ。日本で生まれたこのアニメの存在も、移籍の決断を後押したのかと思ったが、それはトーレスにもっと根本的な影響を与えたという。

「それは移籍の理由のひとつではなく、僕がフットボールを始めた理由のひとつだ。5、6歳の頃、僕は学校やストリートでボールを蹴っていたんだけど、当時のスペインにはフットボールの試合の映像を流すチャンネルがほとんどなかった。だから選手を観るにはスタジアムに行くしかなくて、その頃の僕にはあまりチャンスがなかったんだ。

 そんな時に『オリベルとベンジ』の放映が始まり、毎日ドキドキしながらそのアニメを見ていた。少年が引越しをして、新しい友だちをつくり、新生活に馴染んでいき、フットボールの練習に明け暮れる。何度も困難に直面し、それらを乗り越え、プロや代表選手になって、大きな大会に出場する。そんなストーリーは、僕にプロのフットボーラーになる夢を与え、その夢を生きるとはどんなことかを教えてくれた。つまり、希望を与えてくれたんだ。あのアニメが大好きだったよ」

 にこやかに彼の話を聞いていた村井チェアマンは、トーレスやアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャといった超一流の選手がJリーグでプレーするようになって、さまざまな好影響がもたらされたと語る。


11月下旬、フェルナンド・トーレスが来日。Jリーグを訪れた

「プレーや技術はもちろん、プロフェッショナルとしての心構えなど、世界の頂点を極めた選手たちから、日本人選手が多くのことを学んだはずです。リーグ戦を一緒に戦うというのは、生活を共にするわけですから。またトーレスさんやイニエスタ選手は、育成年代からプロになるまで、ずっと同じクラブで上がっていった。その意味では、育成に携わる関係者も学ぶことが多かったのではないでしょうか」

(つづく)

フェルナンド・トーレス
Fernando Torres/1984年3月20日生まれ。スペイン・マドリード州出身。数々のビッグクラブでプレーし、スペイン代表での多くのタイトルを獲得したFW。2018年7月にサガン鳥栖への移籍を発表し、Jリーグでプレー。2019年8月に現役を引退した。アトレティコ・マドリード→リバプール→チェルシー→ミラン→アトレティコ・マドリード→サガン鳥栖。

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