ジダンの選手起用の慧眼と決断のすごさ。レアルは戦術もバルサを上回る

12月19日(木)16時30分 Sportiva

 伝統の一戦と訳せる「クラシコ」は、バルセロナとレアル・マドリードの”存在をかけた攻防”である。

 どちらかと言えば、バルサのほうが強迫観念は強い。なぜなら、軍事的独裁政権により民族的に弾圧を受けていた時代、中央の象徴だったレアル・マドリードに勝つことでのみ、自らの正当性を訴えられたからだ。たとえリーグ優勝しても、クラシコで敗れて解任された監督がいるし、レアル・マドリードに移籍したルイス・フィーゴがカンプノウに戻ってきたときには、子ブタの頭がピッチに投げ込まれた。

 もともと今年10月に予定されていたクラシコが延期されたのも、カタルーニャ州の独立運動の激化に端を発した大規模なデモ、ストライキが起きたためだ。

 12月18日、ようやく開催されたクラシコでも、現地警察が独立過激派と衝突した。過激サポーターも入り乱れ、警察官2人が重傷、100人以上がケガをしたという。逮捕者も出ており、会場の外では火がつけられる騒ぎがあった。

 しかし、当のクラシコは、双方じりじりとした様子で決着がつかず、0−0とスコアレスドローに終わっている。


カンプノウでのクラシコがスコアレスドローに終わり、憮然とした表情のリオネル・メッシ

 本拠地カンプノウで戦ったバルサは、リオネル・メッシ−ジョルディ・アルバというホットラインが、最強時代を彷彿とさせるシーンを作り出した。クラシコ特有の緊張感のなかで触発されたのか、ジェラール・ピケも今シーズン最高に近いパフォーマンスだった。そしてGKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンはビルドアップで相手に蓋をされてもロングパスを通す芸当を見せた。

 しかし、バルサ本来のパスのリズムは影を潜めている。セルヒオ・ブスケッツが高熱で先発から外れた事情はあったにせよ、ボールプレーの質は無残だった。必然的に、アントワーヌ・グリーズマン、ルイス・スアレスも不発に終わっている。

 右サイドバックのネルソン・セメドは、明らかにノッキングしていた。上がる、受ける、預けるというタイミングが、バルサのオートマチズムに合わない。セメドが次第に勢いを失い、下がり始めると、中に絞って守るために、流れてきたカリム・ベンゼマにスペースを使われる。右サイドの不安で全体も下がって、メッシ、スアレスはプレスも弱いため、容易に自陣に踏み込まれたのだ。

 ボクシングのように優勢の判定があったら、軍配が上がったのは、レアル・マドリードの方だろう。

 レアル・マドリードは序盤こそ劣勢だったが、10分を過ぎたころから五分に戻し、その後は優勢だった。数字など参考にしかならないが、ほとんどのデータで勝利している。シュート数、枠内シュート数、コーナーキック、パス成功率、ボール奪取数などで、いずれもバルセロナを上回った。特筆すべきは60%以上、バルサ陣内でプレーしていた点だろう。攻守のバランスがよく、前線でのプレスが効いていた。

 あえてマン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら、ウルグアイ代表MFフェデリコ・バルベルデだろう。

 この試合のバルベルデは、レアル・マドリードという巨大な乗り物を動かす車輪になっていた。中盤で常に優位なポジションを取り、自分のエリアでは目覚ましい強度を見せ、奪ったボールをそのままゴールに運んだ。実際、いくつも際どいミドルシュートを放った。右足ボレーでエリア外から合わせたミドルシュートは出色。後半途中で交代するまで、インサイドハーフとしてプレーを動かし、周りの選手にもアドバンテージを与えていた。

「メッシのマンマーク」

 試合前、バルベルデの役割は「汚れ役」と予想されていたが、その小さな枠にははまらなかった。

 今シーズン、序列の低かったバルベルデを抜擢したジネディーヌ・ジダン監督の慧眼と決断も、あらためて評価されている。

 ジダンはこの一戦で、戦術的に上回った。バルサのサッカーを封じ込め、有効打を当てていた。

「真剣な90分で、いいクラシコだった。足りないのはゴールだけ。結果に関しては、あまり味がしない(よくも悪くもない)ね。選手たちは、勝ちに値するだけの試合をしていたから」

 ジダンはそう言うが、その選手マネジメントはもはや神がかっている。バルベルデの抜擢だけではない。ガレス・ベイル、イスコなど、反目しているように見えた選手も、クラシコでは献身的だった。

 ジダンにとっては5度目のクラシコだが、一度も負けていないのだ。

 一方で株を下げたのは、バルサ指揮官であるエルネスト・バルベルデだろう。ブスケッツ不在で、”石橋を叩いて渡る”布陣になったことは不運だった。しかし、相手の優勢を許し、最後まで流れを変えられていない。右サイドの城門が叩き割られそうになったところで、ようやくアルトゥーロ・ビダルを右サイドに投入。本丸を攻め落とされずに済んだものの、常に後手に回っていた。

 バルサは、メッシひとりに対する依存度の高さをあらためて示した。

 クラシコ後、リーガ・エスパニョーラの順位は変わっていない。同勝ち点(36)でバルサが首位だが、サンティアゴ・ベルナベウであるクラシコのことを考えれば、2位のレアル・マドリードが有利になったか。スペインにおいて、アウェーでの引き分けは勝ちに等しい。

 決着のつかない一戦が、図らずも今シーズンのリーガ全体の拮抗を表していた。

Sportiva

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