野人・岡野雅行氏 J3ガイナーレ鳥取で営業職に専念する理由

12月23日(金)7時0分 NEWSポストセブン

チュウブYAJINスタジアムには現役時代のパネルも

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 日本で開催されたサッカーのクラブ世界一を決めるクラブ・ワールドカップ(W杯)。国内Jリーグ覇者の鹿島アントラーズが欧州王者のレアル・マドリードに善戦し、華々しく話題をさらったが、この大会期間中、山陰地方にある日本一小さな県のサッカークラブでは、チームの再起を誓って闘志を剥き出しにする「野人」の姿があった。


 ガイナーレ鳥取GM(ゼネラルマネジャー)の岡野雅行氏(44)──言わずと知れた元日本代表。1998年のW杯フランス大会アジア予選で、自ら日本を初出場に導く決勝ゴールをたたき込み、一躍スターに。特徴的な長髪のヘアスタイル、驚異的な俊足を活かしたプレースタイルも重なり、浦和レッズ時代につけられた野人のニックネームを定着させた。


「もう鳥取に来て7年も経つのに、いまだに『旅行ですか?』とか、『東京から通っているんでしょ?』なんて言われるんです。ちゃんと家族で鳥取に移り住み、税金も払っているのに。この前はコンビニで、主婦から『あっ、あの人ですよね……野蛮人さん』って(笑い)」


 岡野氏が現役生活に終止符を打ったのは、2013年。浦和レッズ、ヴィッセル神戸、香港のTSWペガサスなどを渡り歩き、2009年よりガイナーレ鳥取に移籍。当時JFLだった名もなきチームで4年間選手として在籍した。


「鳥取って、東京の世田谷区よりも人口が少ないんですよ。そんな県にプロのサッカークラブがあること自体が奇跡でしたが、小さいながらも地元の企業やファンの方々の温かい応援があって、雰囲気がとてもいい。フロントも運営スタッフも手弁当で試合の設営をするなど一生懸命でしたしね。


 でも、突然Jリーグに下位リーグができてガイナーレがJ3に降格してしまったんです。ちょうどW杯ブラジル大会が始まる前で、僕は解説のオファーも来ていたので引退して東京に帰ろうと思っていたのですが、塚野(真樹社長)から『何とかチームに残って力を貸してほしい』と。


 確かに解説の仕事なんていつでもできるし、鳥取にはビッグクラブにはない結束力がある。チームも弱小で苦しい経営も強いられていましたが、逆にこれ以上落ちることはなく、たくさんの可能性を秘めている。だから、GMの仕事を引き受けることにしたのです」


 とはいえ、「僕がスーツ姿で名刺交換するなんて考えてもみなかった」と振り返るように、GM就任後の岡野氏の肩には幾多の重責がのしかかった。慣れないスポンサー回りに加え、監督選びや選手の補強などチーム強化も兼任。体がいくつあっても足りないほど多忙を極めることとなった。


 2012年12月には、米子市内にニックネームを冠した自前の「チュウブYAJINスタジアム」が完成。また、岡野氏が漁師に扮して全国からチーム強化の寄付金を募り、地元の海産物や洋菓子などの特産品を贈る、ふるさと納税的な「野人プロジェクト」は、第6弾を数えるまでになった。


 こうして岡野氏は名実ともにガイナーレ鳥取の「顔」となり、J2復帰、そしていずれはJ1の華々しい舞台を夢見て、獅子奮迅の活躍を続けている。


 だが、そんな岡野氏の意気込みに反してチームは低迷。今期は元日本代表キャプテンで「闘将」と呼ばれた柱谷哲二氏(52)を監督に迎えたが、J3の16チーム中、15位の成績でシーズンを終えた。


 そして、このインタビューを行なった12月15日、ガイナーレ鳥取は元日本代表でJ2京都サンガのアンダー世代監督を務めた森岡隆三氏(41)を来季監督に招聘する新体制を発表した。


 さっそく岡野氏に、新監督に期待する手腕や、来期のチーム展望を話してもらおうと水を向けたのだが、「じつは僕は来期からチームの現場には一切タッチしないことに決めたんです」ときっぱり。


「これまでの営業は、『絶対にJ2に昇格させるので、支援をお願いします』というやり方でずっと気張ってきましたが、現実はそんなに甘くない。だから、チームの育成強化は浦和時代から知っている強化部長の吉野(智行氏)に任せて、僕は営業に専念することに決めました。


 僕がやるべきことは、ガイナーレ鳥取という“おらが町”の地方クラブを大事に守りながら、もっとたくさんの全国の人たちにも存在や活動内容を知ってもらうこと。そのためには僕自身もガイナーレにお金を投資して、もっと経営に関わろうと思いました」


 一時は柱谷前監督とともに責任を取ってチームを去ることも頭をよぎったというが、「本当の責任は、目標を成し遂げるまでこの場所に居続けることではないか」と覚悟を決めた。


 しかし、岡野氏ほど輝かしいプレーヤーの経験や実績を持ちながら、あっさりと現場を離れることなどできるのか。


「そりゃ、チームが負け続ければもどかしい気持ちになりますし、怠慢なプレーをする選手がいれば、自分がグラウンドに出て行きたくなる時もありますが、今はそれどころじゃありません。


 裏方仕事は大変ですが、やり甲斐のある仕事ですし、選手と同じでサッカーにかける情熱がなければスポンサーにも伝わらない。苦しい時こそ笑って、ガイナーレをもっと大きくするために、自分にしかできない仕事をやるだけです」


 フロントに回っても常に本気で前線を走り続ける岡野氏──。長らく日本のサッカー界を活気づけてきた「野人」の面目躍如といったところだ。

NEWSポストセブン

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