強化はこれでいいのか?森保ジャパンが抱えている根本的な問題

12月23日(月)5時50分 Sportiva

 引き分け以上の結果を残せばタイトルが転がり込むはずだったE−1サッカー選手権の最終節。しかし優勝をかけたその一戦で、日本は28分に喫した失点を最後まで返すことができないまま敗れ去った。逆に3戦全勝となった韓国がタイトルを手中にし、大会3連覇を果たすこととなった。


E−1サッカー選手権で、3戦とも3バックを採用した森保監督

 スコアこそ0−1の僅差だったものの、内容は日本が完敗した印象が否めない。それを象徴しているのが、この試合で日本が放ったシュートがわずか3本だったことだ。

 ほとんどの時間帯で自陣に押し込まれた前半は、15分に鈴木武蔵が放った1本のみ。敵陣でボールを握る時間帯が増えた後半も、85分に三浦弦太がミドルシュートを狙うまでシュートを打てず、その3分後の森島司のミドルシュートで打ち止め。枠内シュートは0本だった。

 最終的なボール支配率では、日本が53.86%で上回ったにもかかわらず、ほとんどポジティブな印象を残せなかった。

 その理由はどこにあったのか? この試合を掘り下げたとき、そこには今大会の森保ジャパンが抱えていた根本的な問題が浮かび上がってくる。それは、今大会のメンバー発表の段階から垣間見られた、中途半端なチーム編成と曖昧な目的意識である。

 果たして、森保ジャパンはどのような目標を持ってE−1に臨んでいたのか。A代表の強化か、それとも東京五輪を目指すU−22代表の強化か。視点をどちらに置くかによって、試合の見え方は大きく変わる。

 その根本的な部分を明確にして韓国戦を振り返ると、よい悪いは別として、浮かび上がった疑問のうちいくつかは腑に落ちる。

 まず韓国戦のスタメンは、負傷離脱した橋本拳人に代わって田中碧が入った以外は初戦の中国戦と同じだった。2戦目の香港戦ではスタメンを総入れ替えして臨んでいたことを考えると、予想どおりだった。

 また、橋本の離脱後の香港戦67分の選手交代の狙いも、韓国戦のスタメンによってはっきりした。田中碧に代わって畠中慎之輔を投入し、田中駿汰をCBからボランチに配置変更したその采配には、田中駿汰のボランチでのテストだけでなく、田中碧を韓国戦のスタメンで使うという狙いもあったことがわかる。

 なぜ香港戦で存在感を見せていた大島僚太ではなく、田中碧だったのか。韓国がヨーロッパ組を除くベストメンバーを編成していたことを考えれば、代表キャップでも経験値でも上回る大島をスタメン起用するのが常識的だ。しかし、敢えて森保一監督は東京五輪世代の田中碧をスタメンに抜てきした。これは、「A代表の強化よりもU−22代表の強化に重きを置いた」と思われる要素のひとつだ。

 大会前は4バックも3バックもどちらも使う可能性を匂わせていたが、森保監督が、韓国戦でも一貫してU−22代表の基本システムである3−4−2−1を採用したのは決定的だった。

 とはいえ、指揮官が100%東京五輪を念頭に戦ったかといえば、そうではない。スタメン9人が東京五輪世代だった香港戦と違い、タイトル獲得のためにカギとなる中国戦と韓国戦の2試合では、国内組のA代表候補選手と東京五輪世代をミックスした今回のチームのベストメンバーを編成している。

 A代表として参戦する大会だけに、タイトルは欲しい。しかし来年1月のU−23アジア選手権や東京五輪を見据え、その世代の選手のテストや戦術のブラッシュアップもしなければならない。結局、U−22代表の強化に重きを置きながら勝利を追求するというスタンスが、采配の根源にあった。

 そんななかで迎えた日韓戦は、前半は前から激しくプレスを仕掛けた韓国ペースで展開した。対する日本も、中国戦同様、開始直後は5バックにならないように両サイドバックが高い位置をとろうとする意識はうかがえた。

 前半3分には、GK中村航輔のキックを森島が受け、相手がカットしたこぼれ球を井手口陽介が拾って前進し、相手陣内でボールをキープ。また、8分には、相手のプレッシングを受けるなか、畠中がボールの出口となって敵陣に入り込み、田中碧が上田綺世に縦パスを入れたシーンもあった。

 ただ、8分に韓国の8番(チェ・セジョン)が右サイドの7番(キム・インソン)を走らせるミドルパスを送ったシーンあたりから潮目が変わる。そこでコーナーキックを得た韓国は、4番(キム・ミンジェ)のヘディングシュートがバーを直撃。以降は、デュエルで圧倒する韓国が日本を押し込み、日本が5バック状態になるシーンが増加した。

 4−3−3を敷いた韓国のパウロ・ベント監督の狙いははっきりしていた。日本の3バックに対しては3トップが、日本のダブルボランチにはインサイドハーフがプレス。両サイドバックが日本のウイングバックに圧力をかけることで、日本のビルドアップを封じ込めようとしたのである。

 日本が28分に喫した失点は、そんな韓国の狙いが結実したものだった。

 畠中のパスを自陣右サイドで受けた橋岡大樹が、対峙する左SBの3番(キム・ジンス)のプレスを浴びながら前方の鈴木に縦パスを送るも、3番の足に当たったボールを鈴木が触る前に左CBの19番(キム・ヨングォン)がカット。そのボールを3番が中央方向にドリブルで前進し、日本の守備陣を引きつけて16番(ファン・インボム)にパス。16番がプレスバックした田中碧をかわしてミドルシュートを突き刺した。

 畠中がパスをした時、日本の陣形は5バックの状態。試合を通して5バックを崩されたシーンはこれ以外になかったが、その時間帯では日本が自陣に押し込まれるシーンが続いていただけに、失点は必然だったと言える。5バック状態が長く続けば、失点の確率も上がる。森保監督が運用する3−4−2−1の課題が浮き彫りになったシーンだ。

 5バックの状態をどこまで受け入れるのか。受け入れるなら、自陣でボールを奪ったあとに敵陣までボールを運ぶ術を身につけておく必要がある。苦し紛れにボールを蹴るだけでは、セカンドボールを相手に拾われてしまい、5バック状態が続いてしまうからだ。

 よくある解決策としては、ボランチ1人が最終ラインに落ちて3バックとともに4バックを形成し、両ウイングバックを押し上げて相手のプレスを回避する方法がある。

 実際、失点後に3度ほど田中碧が落ちてビルドアップしたシーンでは、韓国の3トップは前からのプレスをあきらめている。そして37分には、その形から敵陣でボールを回し、最後は2次攻撃から左サイドにあがった佐々木翔がクロスを入れるシーンをつくっている。

 問題は、インテンシティーが高く、かつ攻守の切り替えが多い試合展開のなかで、どのタイミングでこの形をつくるかだろう。

 今回の韓国戦は、相手が前に蹴ってくるボールを跳ね返すのが精一杯という “ピンポン”ゲームになったため、落ち着いてビルドアップするタイミングが図りにくかった。そんな展開でプレスを回避する方法を見出すことも、今後の課題として残された。

 いずれにしても、前半の日本はほぼ完敗だった。前半に記録したクロスボールは3本のみで、前線3人への縦パスは失敗も含めてわずか3本。当然、有効なサイド攻撃も、3−4−2−1の特性を生かした連動した攻撃もつくれなかった。

 そこでクローズアップされるのが、森保監督の後半の選手交代策だ。劣勢が続いた前半の流れを変えるべく、最初に森保監督が切ったカードは相馬勇紀。3−4−2−1のまま、遠藤渓太に代えて左ウイングバックに投入した。

「戦いのなかで、3バックも4バックもできるようにシミュレーションしている」

 メンバー発表会見でそう語ったのは、森保監督だったはず。しかし、反撃しなくてはいけない試合展開にもかかわらず、監督自らの采配で勝負に出ることはなかった。あくまでも3−4−2−1で選手をテストしながら、システムの成熟度を上げる作業を優先した格好だ。

 ここで、シャドーの森島を下げて仲川輝人を投入し、4−2−3−1にシフトする采配は逆転を狙うには有効だったと思われる。右ウイングに仲川、左に遠藤、中央は上田と鈴木が縦関係を作る。ボランチは井手口と田中碧、4バックは右から橋岡、三浦、畠中、佐々木を並べれば、相手は守備方法を変えざるを得ない。

 さらに攻撃のアクセルを踏む場合、ボランチの井手口を大島に代え、前線の上田か鈴木を小川航基か田川亨介に代える策も考えられる。少なくとも、仲川をシャドーで起用するよりも、圧倒的に攻撃的に戦えるはずだ。

 にもかかわらず、森保監督はその選択をしなかった。要するに、後半に見せた森保監督のベンチワークは、勝利の追求よりも「U−22代表の強化に重きを置いた采配だった」ととらえることができる。

 その結果、後半の日本は試合の流れを大きく変えることができないまま、相手のプレスが弱まったにもかかわらずシュートまで持ち込む形をつくれずに終わっている。敵陣でボールを保持する時間が増えたにもかかわらず、日本の攻撃にポジティブな印象が残らなかった理由だ。

 ちなみに、後半の日本が3トップに入れた縦パスは失敗も含めて8本に増え、クロスボールも15本に増加。しかし、左に入った相馬は計7本を記録するも、そのうち味方につながったクロスは鈴木がミストラップした49分の1本のみ。大外で1対1を仕掛けるプレーは評価すべきだが、相手がわかりきった状況で入れるクロスは不発に終わった。

 結局、「結果にこだわりつつ、この大会でも選手層を厚くすること、選手もチームも成長することを考えて戦っていければ」と大会前に語っていた森保監督が優先したのは、前者ではなく後者だった。

 A代表の活動の一環として参戦したE−1だったが、実質的にはU−22代表の強化を優先した。つまり、来年3月からW杯アジア2次予選を戦うA代表の強化とは別物だったことになる。

 中途半端なチーム編成と曖昧な目的意識。韓国戦の敗因を探れば、最後はそこに突きあたる。それは、同一人物が2つのチームを率いることの弊害とも言える。

 それぞれ別のシステムを使ってチーム作りを進める森保兼任監督は、果たして来年の東京五輪までの約半年間、A代表の強化をどこまで進められるのか。その任務をスムーズに遂行するためには、少なくとも同じシステムを用いることが合理的だと思われる。

Sportiva

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