北米マツダ開発『マツダ3 TCR』正式デビュー1年延期との報道。共同製作ガレージ解散の余波で
2019年12月25日(水)16時42分 AUTOSPORT web
2020年デビューに向け開発が進められていたTCR規定ツーリングカー『マツダ3 TCR』が、マツダ・モータースポーツと共同製作体制を敷いていたレーシングガレージ、LRR(ロングロード・レーシング)の解散表明を受け、発表が2021年まで延期される見込みだと複数の海外メディアが報じている。一方、フォルクスワーゲン傘下のセアトは、クプラ・レーシングを通じて2020年投入の新型『CUPRA León Competición(クプラ・レオン・コンペティション)』のオンライン事前予約を開始している。
北米マツダが運営するマツダ・モータースポーツが発表し、マツダが主宰するワンメイクシリーズ『グローバルMX-5カップ』用マシンを手掛けてきたLRRと共同開発が進められてきたマツダ3 TCRだが、当初デビュー予定とされていた2020年1月26日開幕のデイトナ24時間併催レース、IMSAミシュラン・パイロット・チャレンジを目前にして正式デビュー先送りが決まったようだ。
これは2001年からマツダとのアライアンスで『グローバルMX-5カップ』の車両製作を担当してきたLRRが2019年限りでの解散を決めたことによるもの。
北米マツダ・モータースポーツの責任者を務めるネルソン・コスグローブは、同国のモータースポーツ専門サイト『racer.com』に対し「LRRは長年一緒に仕事をしてきた素晴らしいパートナーであり、まずはマツダと戦ってくれたその歴史のすべてに感謝する」と語った。
「代表のグレン・ロングと彼らのファミリーは、マツダMX-5カップの車両製作を通じて多大なる貢献を果たした。さらに彼らは、最新のTCR規定ツーリングカーの開発と製作にも携わってくれていた」
「グレンのチームは、素晴らしいアシストと内容を伴って、次にプロジェクトを担当する人たちへの移行を支援してくれるだろう。そのため、我々もすぐに正式発表ができると考えている」
「ここまで我々は、来月のデイトナに向けTCRマシンの開発に全力を注いできたが、その計画は完全に消滅する形となった。今後はマツダMX-5カップの車両製作とTCR車両開発を一緒に進めてくれる、新たなレーシングコンストラクターを探しつつ、浮いたリソースをグローバルMX-5カップに集中させることになる」
開発進行中だったマツダ3 TCRは、350馬力を発生する4気筒ターボと6速パドルシフトを採用。次なる開発ステップは、実際のトラック上での走行テストだという。
「2020年はサーキットでの走行テストに時間を費やし、マツダ3 TCRの公式ホモロゲーション取得までに5000km以上のマイレージを稼ぎたいと考えている」と明かすコスグローブ。
「我々としては、インタークーラーを中心にあらゆるクーリングシステムの調整や、ABSのチューニングなどをメインに6〜8回のテストを行うつもりだ。すでにマツダ3 TCRはダイナモ上で走行しており、それらの数値的な結果には非常に励まされているところだ」
一方、フォルクスワーゲン・グループによる“モータースポーツ活動の完全電動化”方針の発表を受け動向が注目されていた同グループ傘下のセアトは、フォルクスワーゲンやアウディがTCR車両の開発やサポートを打ち切るなか2020年型の新型TCR車両のティザー画像を公開。オンライン事前予約(https://prebooking.cupraofficial.com)を受け付けるとともに、今後もTCRにコミットしていく意志を明かした。
「クプラはモータースポーツの世界でつねに先駆的な役割を果たしてきた。我々はTCRプラットフォームの最初の開発者であり、引き続きTCRシリーズへのコミットメントを約束する」と、ステートメントで表明したクプラ・レーシングのディレクターであるジェイミー・プイグ。
この最新TCRモデルは新型クプラ・レオンをベースとし、空力効率が改善されたのを筆頭に、前後アクスルも完全新設計となりサスペンションジオメトリーを最適化。同時に車両の前後重量配分改善も果たしている。
搭載される2リッター直列4気筒直噴ターボの出力も向上し、よりモジュラー化された電装系は、軽く、強く、よりカスタマイズが容易なシステムにもなっているという。
この新型車両の開発は最終段階に入っており、10月からトラックテストが本格化され、すでにスペイン、ポルトガル、イタリアで複数のテストセッションをこなしている。