【高校選手権展望】<滝川第二>今年の漢字は“輪” 伝統崩れる危機感がチームを変える
2017年12月26日(火)22時20分 サッカーキング
「タキニはいつも一つにまとまった学年が県大会を勝ち抜いていく。チームワークが本当に大事なチーム」とFW稲田丈太郎(3年)が話すように、一致団結しなければいけない理由には、精神的な意味合いもあるが、「昨年とは違い、一人で試合を決められるようなタレントはいない」(松岡徹監督)という戦力的な事情もある。個で劣る分、いかにチームとして戦えるかが今年の鍵だったが、食事の際のルールが守れていなかったり、就寝時間を過ぎても起きている選手がいるなど、部で決めた約束を守れない選手がいたため、チームが一つにまとまっていなかったという。
そうした心の隙は結果として表れ、新人戦は準決勝、インターハイ予選も準々決勝で姿を消した。それでも、勝てない現状を「このまま無冠だとまずいな」と冗談交じりに笑える余裕があったが、夏休みを終えた直後に関西学院と対峙した県1部リーグの上位対決に敗れ、無冠が現実味を帯びたことで危機感が強まったという。
「経験や翌年のリーグなど、後輩たちに何かを残すのがタキニの伝統。僕らも昨年の先輩から県三冠と夏冬2回の全国を経験させてもらった。でも、今年はまだ何も残せていないので、何とかしないといけないと思った」。稲田がそう振り返るように、“このままではいけない”という想いで、一致団結した選手たちは、スタッフから与えられた「神は細部に宿る」という言葉を参考に、ピッチ外での取り組みを見直した。システムも4−4−2から3−3−1−3に代え、「複数のポジションをこなせる選手が多い」(稲田)という今年の強みを生かして、試合中のポジションチェンジを多用。前線の選手が競り合ったこぼれ球を稲田やMF朴光薫(3年)らが高い位置で拾い、サイドから二次攻撃を仕掛ける戦いを全員が徹底したこともハマり、チームが浮上していく。
古豪・神戸との初戦を皮切りに強豪との試合が続いた選手権予選は、「何回、引退が頭に過ぎったか分からないくらいの厳しさ」(稲田)で、何度も接戦を強いられたが、「インターハイまでは決勝など先ばかりを意識していたけど、選手権予選では目の前の試合を全力で戦うことができた」(DF上出直人、3年)ことが、粘り強い勝ち上がりに繋がった。
「応援してくれる子たちの熱意が凄かった。あれだけやってくれてるんだから、俺らも頑張らなアカンと思った」と稲田が振り返るように、応援団長のDF岩谷崚太郎(3年)を中心とした熱い応援もピッチに立つ選手たちを後押し。「試合を重ねるごとに試合に出ているにベンチ入りしたメンバーだけでなく、応援団を含めて、チームが一つになっていった」(上出)成果が、2年連続での選手権出場に繋がったのは間違いない。厳しい一年を乗り越え、タキニが作る輪は大きくなっている。選手権でもチーム一丸となり、昨年果たせなかった準々決勝の壁を超えるつもりだ。
取材・文=森田将義