【高校選手権展望】<上田西>元Jリーガー監督に導かれ “県内の強豪”の殻を破り2度目の全国
2017年12月26日(火)21時38分 サッカーキング
上田西は長野県内と県外で知名度が大きく違うチームと言える。県内では常に上位候補として存在感を示してきたが、選手権の全国大会は12年ぶり2回目の出場。ようやく全国に打って出ることができる。
チームを率いるのは、就任2年目の白尾秀人監督。ヴァンフォーレ甲府や松本山雅FC、V・ファーレン長崎、FC琉球でプレーした元Jリーガーだ。いずれも一つ上のステージに這い上がろうとしている時期に所属しており、プロの世界の厳しい生存競争を肌で感じた経歴を持つ。自身の高校時代も鹿児島県の与論と長崎県の超強豪だった国見の両方でプレーした経験を持ち、大学時代にはユニバーシアードで世界一に輝くなど、様々なチーム、選手や試合を知っていることが指揮官としての強みとなっている。
「上田西に来てから、高校生だなと課題を感じた部分は、やり切れないところ。堅守速攻の持ち味がある中で、どこかで(無理に短いパスを)つないで取られている。何でも、中途半端より徹底」と戦術の徹底を浸透させ、県内の強豪でありながら勝ち切れなかったチームを全国に導いた。
豊富な実戦経験を生かした采配も魅力だ。長野県予選の決勝戦は、注目FW新井光(湘南ベルマーレ内定)を擁する市立長野高校と対戦。「相手が4バックで来ると思っていたので、準決勝の4−3−3から3−4−3に形を変えて、サイドに起点を作ってゴール前へ攻めようと考えていたが、相手が3バックだったので、すぐに選手を呼んで『前に入れていけ』と指示をした」(白尾監督)と早々に相手のウィークポイントを見つけて縦のロングパスで強襲。FW根本凌(3年)らが3バックの狭間で起点を作って主導権を握った。
さらに、前半20分で選手を変えるなど、交代策も積極性が目立った。試合を揺さぶるのも巧みだ。守備ではプレッシングのラインを数段階に分け、試合の流れに応じて指示。「ずっと同じだと相手がやりやすい。わざと奪いに行かない時間帯も作る」と明かした。与論中時代にはサッカー以外に吹奏楽にも熱中していたという指揮官は、アイデア豊富だ。
厳しいフィジカルトレーニングで鍛えた肉体と堅守速攻の伝統に、新指揮官の戦術が加わり、殻を破った上田西が目指すのは、全国大会での勝利だ。主将の大久保龍成は「監督に『お前らは強くない』と言われて、やってやるぞと思って頑張ってきた。でも、インターハイの県予選は準決勝で負けたし、県1部リーグも優勝を目指したのに4位で勝ち切れなかった。でも、最後に気持ちを出せて、勝てて良かった。全国では優勝したいけど、まず目の前の試合を勝ちたい」と一戦必勝の姿勢を強調した。
チームは、統率力のある大久保、展開力のあるMF宮下廉、ポストプレーで起点を作る根本とセンターラインにしっかりとした軸が通っており、4バックでも3バックでも土台がしっかりとしている。マイボールになれば、丸山圭太、田中一翔の両翼が素早く敵陣突破を仕掛け、サイドアタックからゴールを狙う。初戦から全国準優勝の経験を持つ強豪の京都橘(京都)との対戦で、相手は手強いが、戦い方次第で勝機は生み出せるはずだ。エースの根本は「試合を観に来てくれる人や対戦相手に、全員で攻撃、守備をして声を出す上田西高のサッカーを見せたい」と意気込んだ。アルウィンで轟かせた歓喜の「アルプス一万尺」を駒沢でも見せられるか。自慢の応援団とともに、久々の全国大会へ乗り込む。
取材・文=平野貴也
チームを率いるのは、就任2年目の白尾秀人監督。ヴァンフォーレ甲府や松本山雅FC、V・ファーレン長崎、FC琉球でプレーした元Jリーガーだ。いずれも一つ上のステージに這い上がろうとしている時期に所属しており、プロの世界の厳しい生存競争を肌で感じた経歴を持つ。自身の高校時代も鹿児島県の与論と長崎県の超強豪だった国見の両方でプレーした経験を持ち、大学時代にはユニバーシアードで世界一に輝くなど、様々なチーム、選手や試合を知っていることが指揮官としての強みとなっている。
「上田西に来てから、高校生だなと課題を感じた部分は、やり切れないところ。堅守速攻の持ち味がある中で、どこかで(無理に短いパスを)つないで取られている。何でも、中途半端より徹底」と戦術の徹底を浸透させ、県内の強豪でありながら勝ち切れなかったチームを全国に導いた。
豊富な実戦経験を生かした采配も魅力だ。長野県予選の決勝戦は、注目FW新井光(湘南ベルマーレ内定)を擁する市立長野高校と対戦。「相手が4バックで来ると思っていたので、準決勝の4−3−3から3−4−3に形を変えて、サイドに起点を作ってゴール前へ攻めようと考えていたが、相手が3バックだったので、すぐに選手を呼んで『前に入れていけ』と指示をした」(白尾監督)と早々に相手のウィークポイントを見つけて縦のロングパスで強襲。FW根本凌(3年)らが3バックの狭間で起点を作って主導権を握った。
さらに、前半20分で選手を変えるなど、交代策も積極性が目立った。試合を揺さぶるのも巧みだ。守備ではプレッシングのラインを数段階に分け、試合の流れに応じて指示。「ずっと同じだと相手がやりやすい。わざと奪いに行かない時間帯も作る」と明かした。与論中時代にはサッカー以外に吹奏楽にも熱中していたという指揮官は、アイデア豊富だ。
厳しいフィジカルトレーニングで鍛えた肉体と堅守速攻の伝統に、新指揮官の戦術が加わり、殻を破った上田西が目指すのは、全国大会での勝利だ。主将の大久保龍成は「監督に『お前らは強くない』と言われて、やってやるぞと思って頑張ってきた。でも、インターハイの県予選は準決勝で負けたし、県1部リーグも優勝を目指したのに4位で勝ち切れなかった。でも、最後に気持ちを出せて、勝てて良かった。全国では優勝したいけど、まず目の前の試合を勝ちたい」と一戦必勝の姿勢を強調した。
チームは、統率力のある大久保、展開力のあるMF宮下廉、ポストプレーで起点を作る根本とセンターラインにしっかりとした軸が通っており、4バックでも3バックでも土台がしっかりとしている。マイボールになれば、丸山圭太、田中一翔の両翼が素早く敵陣突破を仕掛け、サイドアタックからゴールを狙う。初戦から全国準優勝の経験を持つ強豪の京都橘(京都)との対戦で、相手は手強いが、戦い方次第で勝機は生み出せるはずだ。エースの根本は「試合を観に来てくれる人や対戦相手に、全員で攻撃、守備をして声を出す上田西高のサッカーを見せたい」と意気込んだ。アルウィンで轟かせた歓喜の「アルプス一万尺」を駒沢でも見せられるか。自慢の応援団とともに、久々の全国大会へ乗り込む。
取材・文=平野貴也