【技術特集】ホンダF1パワーユニットは、なぜあれほどに壊れ続けたのか(4):想定外の異常振動

2017年12月28日(木)7時30分 AUTOSPORT web

 2017年のホンダ製F1パワーユニットは、まるでガラスのように脆い存在だった。フェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンは、PU由来のトラブルで計9回のリタイアに見舞われ、合計390ものグリッド降格ペナルティを科された。これほどの信頼性の低さを、いったいどう理解したらいいのだろうか。F1i.comで技術分野を担当するニコラ・カルペンティエが分析する。


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 ターボハイブリッドのF1パワーユニットが優れた戦闘力を発揮するためには、まずはV6エンジンが強大なパワーを持ち、同時に燃料消費もできるだけ少なくする必要があった。そのためのリーンバーン(希薄燃焼)技術の確立は、ホンダがライバルたちに追い付くための絶対条件だった。


 しかし、レースでの燃量は105kg以下、1時間当たりの燃料流量は100kgという厳しい制限が困難に輪を掛けた。解決の決め手は、『副燃焼室』技術の確立であり、すでにメルセデスは2014年から、フェラーリも2015年中盤、ルノーでさえ2016年から開発を開始。ホンダの立ち後れは、明らかだった。


 とはいえ1970年代にCVCCを世界に先駆けて実用化したホンダにとって、この技術がまったく未知のものだったわけではない。後追いながらも2017年シーズンのRA617Hには、新燃焼システムが導入された。開発部門での単気筒のテストは、期待通りの結果が出たという。しかし6気筒で同様のテストを行うと、複雑な問題が頻出した。さらに車体に組み込んで実走テストを行うと、異常振動を始め予想外のトラブルに悩まされることになる。


「新たなコンセプトの2017年型パワーユニットは、パワーに関しては前年最終戦とほぼ同じレベルから出発していました」と、長谷川祐介ホンダF1総責任者(当時)は語る。


「最大パワーは確かに同レベルだったのですが、低回転域ではかなり非力だった。9000回転前後に大きな穴があり、トルクも非常に薄い状態でした。テストベンチではそんなことはなかったのに、サーキットでの実走で1万回転から9000回転に落とすと、トルクが急激に落ちる症状に見舞われました」


(第5回に続く)


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