札幌大谷|個性豊かな選手揃い、5年ぶり選手権 コロナ禍での自主トレで競争を【選手権出場校紹介】
2020年12月30日(水)17時37分 サッカーキング
4−3−3を基本システムとする今年のチームは個性豊かな選手が揃う。攻撃陣は独力で突破できるタレントを揃え、佐野宏太(3年)、山﨑遥翔(2年)はスピード勝負が可能。トップを担うキャプテンの伊東涼哉(3年)はDFからコンバートされて日が浅いものの、空中戦に滅法強く、ポストプレーで攻撃に深みを与える。インサイドハーフの岡本大地(2年)、高山大樹(3年)は攻守の繋ぎ役を担う技巧派で、展開を冷静に読みながら長短を織り交ぜたパスでチャンスを生み出す。
一方の最終ラインは「すごく良くなってきた」と田部学監督から太鼓判を押される藤本拓真(3年)が軸。エアバトルで存在感を発揮するだけではなく、正確なフィードで攻撃の起点にもなれる守備者だ。1年生ながらポジションを掴んだCB安食優斗やシュートストップに長けるGK渋井悠和(3年)も力を付けており、今予選は決勝を含めた3試合で完封して自信を深めた。
北海道を制した一方で、今年は序盤から好調だったわけではない。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって活動休止となった3月から6月に掛けて選手たちが成長。自主トレーニングでは個々に目標を設定し、タイム走では記録を報告させた。そのランキングを選手たちに伝え、再開後はその数値をもとにチームを編成。ボールが蹴れなかった時期を有効に使い、チーム内の競争をうながした。
結果はすぐに出ず、9月に再開したプリンスリーグ北海道の開幕戦では旭川実に0−1で敗れ、続く北海道コンサドーレ札幌U−18戦は0−4の大敗。さらに第3節の東海大札幌戦を2−4で落とし、チームの雰囲気は険悪になった。ただ、選手たちは下を向かず、今できることを模索。「今まで取り組んできたことに不安を覚え、自信を失った。でも、『このままではまずい』と感じ、映像を使って相手を分析するなど自発的な動きが増えたので良かったと思う」(伊東)。そうした取り組みが選手権予選で実を結んだ。
過去2度の選手権では2回戦が最高成績。勢いに乗れば、新たな歴史を作ることも不可能ではない。
【KEY PLAYER】FW佐野宏太
左サイドから勇猛果敢な仕掛けを見せるドリブラーだ。自身が憧れるドイツ代表FWレロイ・サネ(バイエルン)のようにスピードで相手を振り切ると、得意のカットインからフィニッシュに絡む。また、最近は縦への突破に磨きをかけ、崩しのバリエーションを増やしたことで迫力が増した。
しかし、今予選は人生で初めて10番を背負った影響で気持ちが空回り。初戦で奪った1得点のみに終わり、出場権を手にしたチームにおいて一人蚊帳の外で唇を噛んだ。
「札幌大谷で過去に10番を付けた選手を振り返った時に大山武蔵さん(現・FC大阪)などと比べると、怖さが物足りない。そういう想いがあり、予選ではプレッシャーに打ち勝とうとして気合いが入り過ぎたり、逆にリラックスして挑んだら試合にうまく入れなかった」(佐野)
だからこそ、本大会にかける想いは誰よりも強い。全国舞台で巻き返すべく、課題だったシュート精度の改善にも地道に取り組んできた。「自分の名前を広めたい」とは佐野の言葉。これ以上、チームに迷惑は掛けるわけにはいかない。チームに勝利をもたらし、エースナンバーに相応しい男だと証明して見せる。
取材・文=松尾祐希