骨転移した前立腺がんの新しい放射線治療薬「ゾーフィゴ」

1月1日(月)16時0分 NEWSポストセブン

前立腺がんの新しい放射線治療薬について解説する

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 前立腺がんの新しい放射線治療として、骨転移した前立腺がんに向けた放射線医薬品ゾーフィゴ治療を紹介する。


 がんに対する放射線治療は、放射線トモセラピー治療などを使った体外から照射する外照射が主に行なわれているが、ゾーフィゴ治療は放射性物質入りの薬剤を静脈注射し、骨転移のがん細胞を攻撃する放射線内服療法だ。


 JCHO東京新宿メディカルセンター放射線治療科の黒崎弘正部長に話を聞いた。


「前立腺がんは肺がんと違い、ゆっくり進行することが多いので、骨転移したといっても短期間に命を落とすことはありません。とはいえ、今まで骨転移に有効な治療法が少なく、抗がん剤治療や外から放射線を照射し、痛みを緩和するくらいしかありませんでした。この放射線医薬品ゾーフィゴは、骨転移のがん病巣に集まり、放射線でがん細胞を破壊します」


 ゾーフィゴの主成分である塩化ラジウム223は、骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集まりやすい性質がある。注射で体内に入ると代謝が活発な骨転移がん細胞に集中して運ばれ、α線という放射線を出す。α線はそれまで使われていたβ線に比べて約7000倍という高いエネルギーで強力にがん細胞を破壊する。しかもα線が届く距離は体内で0.1ミリメートル未満とごく短いため、正常細胞に影響を及ぼすことなくピンポイントでの治療が可能だ。


 治療は月に1回の注射を4週間空けて合計6回、5か月にわたり、外来で治療を行なう。骨の痛みが減少するだけでなく、骨転移のマーカーであるALP値は、ほとんどの患者で低下する。しかし、前立腺がんのマーカーであるPSA値は半数弱しか下がらず、どこか別の場所にがんが潜んでいる可能性もある。


 この治療では痛みが緩和するだけでなく、骨転移した前立腺がん患者の生存期間を延ばすことができる。国際共同第III相試験で生存期間が約4か月延び、死亡リスクも約30%低下した、というデータが報告されている。JCHO東京新宿メディカルセンターでは、保険承認から約1年半の間に治療実績が24人と国内トップクラスだ。


「副作用としては、血液成分の減少や嘔吐、吐き気、食欲不振などが報告されています。ですが、いずれもそれほど重篤なものではありません。治療中は日常生活においての制約もなく、患者さんにとっては負担の少ない治療といえます」(黒崎部長)


 この薬品は、ラジオアイソトープ管理区域でないと注射できないため、その設備が整った医療機関でなければ治療が受けられない。末期ではなく、骨転移が発見されたばかりの患者に注射することで、一層の延命効果が期待できる。


 前立腺がんは様々な治療法があるので、放射線治療科と泌尿器科の連携が取れていることが、病院選びの一つの判断基準になるだろう。


■取材・構成/岩城レイ子


※週刊ポスト2018年1月1・5日号

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