ダイエット効果が期待される葉野菜<アマメシバ>。しかし台湾で9人が死亡、8人が肺移植手術を受ける事態に…食習慣の発祥地・インドネシアで健康被害が起きない理由とは
2025年1月3日(金)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
「健診で指摘された異常値を健康食品で下げよう」「ダイエット食品で楽に痩せよう」など、健康食品を生活に取り入れる人が幅広い世代で増加しています。しかし2024年3月、サプリメントを摂取した消費者に健康被害が多数発生し、大きな問題となりました。そのようななか「実は、機能性や安全性について何の保証もない健康食品が多く販売され、健康被害の大半はこれらの製品で発生している」と指摘するのは、一般社団法人日本食品安全協会代表理事の長村洋一さんです。そこで今回は、長村さんの著書『健康食品で死んではいけない』より一部引用、再編集してお届けします。
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死者まで出したダイエット効果で人気の葉野菜
アマメシバは、今も昔もインドネシア、マレーシアなどでは栄養のある野菜として食べられている。そんな野菜で死者を出す健康被害が発生している。
アマメシバが台湾に輸入されるようになってから、ある程度の量を食べるとダイエットに効果があることが見つかり、その名も「減肥菜」という名称で売られ始めた。
そこでも確かに効果が認められたことで、野菜のままではなく粉末にしたほうが手っ取り早く大量にとれると、乾燥アマメシバの粉末が出回りだした。
野菜のなかには95%くらいが水分というようなものもあり、100gの野菜でも乾燥させれば5〜6gぐらいになってしまうので、大量摂取が容易となる。
適量ならよい効果が得られるが、大量摂取で健康被害続出
この粉末の形での大量摂取を可能にしたことが、非常に深刻な問題を引き起こした。厚労省が把握しているだけで、アマメシバの摂取により台湾で発生した患者数は計278人で、うち9人が死亡し、8人が肺移植手術を受けた。
日本でも同じような健康被害が出始めたときに厚労省が即座に対応したが、3人の死亡者が出てしまった。
そのとき健康被害者全員に共通した症状は閉塞性細気管支炎であった。この疾患は肺胞に近い膜様細気管支と呼ばれる部分が閉塞し、咳、喘鳴、呼吸困難などの症状が出るまれな呼吸器疾患である。
残念なことに治療しても改善が期待できない場合が多く、野菜だから安心と考えて摂取した人たちは大変気の毒なことであった。
量を間違えると深刻な健康被害に
問題点を探ってみると、アマメシバは、マレーシアなどでは炒めたりスープに入れて食べるのが一般的で、1週間に116〜200g程度の量を摂取しているという調査結果がある。
ところが、台湾において健康被害を生じた事例では、毎日の平均摂取量が131gと大量に摂取していたことが台湾行政院衛生署の調査結果で明らかになっている。
(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
この量は、マレーシア人の摂取量の約5〜8倍以上であり、摂取量の違いが健康被害を引き起こした原因であると考えられている。
この野菜の食習慣発祥の地であるインドネシアにおいては健康被害が発生していないのに、台湾では多数の死者まで出るような問題に発展してしまった。適量ならよい効果が得られるものでも、量を間違えると深刻な健康被害をもたらす。
アマメシバに含まれる化学物質
アマメシバにはパパヴェリン、チモール、ユーフォルビンといった化学物質が含まれている。
このうちパパヴェリンは急性動脈塞栓・末梢循環障害・冠循環障害における血管拡張と症状の改善や、胃炎・胆道系疾患における内臓平滑筋の痙攣(けいれん)症状を抑える医薬品として使用されている。チモールも殺菌、防腐剤として用いられる医薬品である。
一方、ユーフォルビンは多くの植物に含まれている天然毒素で、腹痛、嘔吐などを引き起こしたり、皮膚につくとアレルギー様の皮膚症状を引き起こしたりする。
実は、こんな怖いものが入っている野菜は特殊な野菜である、と考えるのは間違っている。日常われわれが口にする自然の野菜には、種々の天然毒素が少量だが含まれているのが普通なのである。
※本稿は、『健康食品で死んではいけない』(講談社)の一部を再編集したものです。
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