ラーメン官僚も認める職人技が光る1杯! 『らーめん処 くろ助』の醤油ラーメンの魅力とは?
2020年1月5日(日)10時50分 食楽web
食楽web
ノスタルジックラーメンを一流の技術で「今」の1杯へと昇華!
「以前、駒込で『日本麺料理さくら(閉店)』の店長を務めていた時に、お客さんから掛けていただいた『小島さんが作るラーメンをまた食べたい』という言葉が、独立開業を決断する原動力となりました」。
そう言って笑う小島店主は、都内における数多くの実力派店主の下で修業し、ラーメンづくりに関する多種多様なノウハウを地道に習得していった努力の人。
「今般の独立開業を後押ししてくれたのは、食べ手の皆さま。だから、この『くろ助』では、お客さんとの繋がりを大切に育んでいきたいんです」と、数多くの「引き出し」を持ちながらも、目指すのは、年齢や性別を問わずに親しまれるスタンダードな1杯だ。
「醤油ラーメン」730円
基本メニューは、丼の底まで見透かせるほど澄み切った琥珀色のスープが見目麗しい「醤油ラーメン」。「人間の味の好みは十人十色。なので、お客さんの嗜好がどのようなものであっても対応できるよう、特定の素材に重きを置かないバランス型の1杯にすることを心がけました。各種素材が織りなす旨みのクロスオーバーを楽しんでいただければ」。
本品のスープは、鶏を主軸に据えながら豚・香味野菜も織り交ぜた動物系出汁と、「エソ」の煮干し(※)を主役とし甘みが採れる数種類の煮干しを加えた魚介出汁とを、絶妙なバランスでブレンドしたもの。
特筆すべきは、スープづくりに注ぎ込む労力の多大さ。特に動物系出汁は、鶏・豚・香味野菜を丁寧に炊いて「ベース」を作り、それを漉して冷却させたものに、さらに美桜鶏と京桜の丸鶏から抽出した旨みを足し上げる。完成に至るまで丸2日と、絶句してしまうほど膨大な時間をつぎ込んだ手間ひまの塊。
合わせる醤油ダレも「開発段階で20種類超に及ぶ醤油を取り寄せ、各種醤油の調合具合を徹底的に研究した」という、妥協とは無縁の産物。「最終的に、私の地元である千葉県の名門醸造所・ちば醤油の下総醤油へと辿り着きました」。舌上で風船のごとく大きく膨らむ醤油の旨み、飲み干し際、喉元に心地良い余韻を残す上質な風味。確かに下総醤油は、この1杯にとっての最適解だ。
啜り上げるたびに豊潤な小麦の香りが宙を舞う中細ストレート麺は、菅野製麺製。寸分の過不足なくスープを口元へと運び上げ、スープとの相性も申し分ない同麺は、まさに「このスープにしてこの麺あり」。小島店主の選球眼の確かさを物語っている。
「スタンダードな1杯を、押さえるべきところをキチンと押さえながら創る。そんな当たり前のことを、日々着実に遂行していくことが大切だと考えています」。
小島店主
食べ進めるにつれ、新たな旨みがひょっこりと顔を出し、味覚中枢が歓喜に沸き立つ。さりげない出で立ちに見せながら、随所に垣間見える熟練ラーメン職人の緻密な計算。気が付けば、丼が空っぽになっていた。
オープンは本年11月16日と、まだ誕生したばかりの『くろ助』だが、早くも常連客が付き始めている模様。杉並区民の「オアシス」として地域に根付くことができるか。今後とも注視していきたい、期待の新進気鋭だ。
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(※)エソ煮干しとは?
「エソ」とは、うま味が濃厚であることから、高級かまぼこ等の原料として用いられることが多い白身魚。もちろん、この「エソ」を用いた煮干しも、ラーメンスープの素材としてはレア度が高い一品である。
●SHOP INFO
店名:らーめん処 くろ助
住:東京都杉並区梅里2-24-13 民団杉並支部ビル 1F
TEL:03-5929-7506
営:11:30〜14:00、18:00〜翌1:00 ※日曜のみ22:00閉店
休:不定休
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。