愛知・安城に伝わる謎のソウルフード「北京飯」とは何か? 発祥の店『北京本店』で実食!

2023年1月5日(木)10時51分 食楽web


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●調査内容:愛知・安城に根付くソウルフード「北京飯」とは何かと、そのストーリーを名店『北京飯店』で聞いてきた!

「愛知県のグルメ」と言えば、まず味噌煮込みうどん、味噌カツ丼、手羽先、ひつまぶし…などが真っ先に思い浮かびます。しかし、「愛知県でしか食べられないB級グルメ」として知られるものは、まだまだ多くあり、そのうちの一つが「北京飯」というもの。名古屋から40kmほど南東にある安城に根付いたメニューで、試しに「安城 名物」と検索をかけると、筆頭に上がってくるものです。

 聞けば、60年以上も前から地元・安城で愛され続ける味のようで、地元外の筆者には全く想像がつきません。というわけで今回はその発祥の店として知られる『中国料理 北京本店(以下、『北京本店』)』にお邪魔し、店主の杉浦充俊さんに話を聞きました。もちろん、肝心の「北京飯」も実食し、その味わいもレビューします!

その歴史は60年前!「うっかり」から生まれた絶品まかないメニューだった


トロトロの玉子をご飯の上に乗せて…

『北京本店』は創業から今年で62年目を迎え、現在の店主・杉浦さんは3代目にあたるそうです。この『北京本店』が開業して2年ほど経った、今からちょうど60年前に考案されたのが「北京飯」とのこと。杉浦さんによると。

「今から、ちょうど60年前、当時の店主が、まかないを作ろうと卵を鍋で炒めていたところ、うっかり他の料理のタレが溢れて、鍋の中に入ってしまったそうです。でも『捨てるのはもったいないから』と、偶然こぼしてしまったタレ入りの卵で賄いを作ってみたところ、『これは美味しい!』となり、その日からまかないとして食べるようになったそうです。そのあまりの美味しさに、まかないいだけではもったいないので、メニューにしようと思い立ち、お店の屋号をとり『北京飯』という名前で売り出しました」(杉浦さん)

 ただし、当初は「北京飯」として出しても一体どういう食べ物なのか客に伝わりにくく、注文する人はほとんどいなかったとか。しかし、それにもめげずに「北京飯」をメニューから外さず提供し続けたことで次第にその美味しさが伝わり、やがて『北京本店』の看板メニューになったとのことです。

シンプルな丼に採用された地元の食材


「みかわポーク」を使って豚の唐揚げを揚げる様子

 この「北京飯」、“ご飯の上に半熟卵と豚の唐揚げが乗った丼ぶり”というごくシンプルなものですが、ここまでの話を聞いても、まだその味を想像できなかった筆者。杉浦さんにお願いし、その調理の様子と交えて、味わいの特徴を解説していただきました。

 まず、厨房に立った杉浦さんは豚の唐揚げを揚げます。シンプルな味わいだからこそ、素材にはこだわっており、ここで使われるのは三河ブランド豚の「みかわポーク」だそうです。


豊橋産の玉子を使います

 さらに、「北京飯」の肝でもある玉子。こちらもまた安城に近い豊橋で生産されたものを使っているそうです。杉浦さんは「地元の素材と味わいを感じてほしいから」と、やはり愛知、あるいは安城界隈への思いはアツいものがあるようでした。


豚の唐揚げを乗せて「北京飯」完成!

 この玉子は、あえて白身を残すように荒めに混ぜ、ラードと秘伝のタレを使いフワッと仕上げます。この炒めの時間はわずか10数秒。すぐに丼に盛られたご飯の上に乗せ、さらに先ほどの豚の唐揚げを乗せて完成……というものです。

お客さんからの声で再現された「北京飯」


「北京飯(肉三枚)」663円(税込)

 さっそくいただきましたが、これが実に美味! トロトロの玉子の食感と、過不足のない繊細で優しい味わいがご飯に合います。そして、香ばしい豚の唐揚げも「おかず」的でもあり、一体化した味わいでもあり、ご飯が進みます。気付くと、何杯でもいただけそうな味わいで、これはヤミツキになる人が多いのも納得です。

「玉子に使うタレは、醤油・水・砂糖などごくシンプルなものです。しかし、この配合こそがうちのこだわりです。先代の父が残したレシピには『おたま1杯』とか『柄杓1杯』など、その味を極めたプロにしかわからない書き方だったため、私が継いでからも、初めのうちは味をうまく作れず、『昔の味と違うよね』とお客さんから言われたことも多々ありました。

 しかし、同時にお客さんから『お父さんの味もっとこんな感じだったよ』と教えていただくこともあり、真摯に受けとめ2年ほど丁寧に調整していくうちに『やっとお父さんの味になったね』と言ってもらえるようになりました。その頃から、お客も増えるようになり『やっと父の味を再現できたんだ』と思うようになりました。言い換えれば、父が残してくれた大切な地元のお客さんたちが、私が継いだ後、一時味が変わった後も、食べ続けてくださったからこそ、今の『北京飯』があると思っています。本当にお客さんたちのおかげの味だと思っています」(杉浦さん)

店主・お客さん双方が守り抜いた味「北京飯」はさらなる未来へ!


「北京本店」杉浦充俊さん

 当初、初代がまかないとして考案し、地元に広めていった「北京飯」を、お客さんも一緒に守り抜いたと言い換えることもできそうですが、この思い胸に杉浦さんはさらなる展開もし続けていきたいといいます。


「北京飯缶」。「北京飯」のストーリーと味わいを胸に、新たな試みも

「父の代からずっと地元・安城の当店で『北京飯』をご提供してきました。今後は安城の中で店舗を増やすことができたら良いなと思っています。また、安城まで来られない方のためにネットショップで『北京飯のたれ』『北京飯缶』なども販売し、この味を広く知っていただきたいと思っています。ぜひこの味を多くの方に知っていただきたいです」(杉浦さん)

調査結果:愛知・安城発祥の「北京飯」は、『北京本店』という名店を舞台に店主・客双方で継承され続ける、文字通りのソウルフードだった!

 終始にこやかに接してくださった杉浦さんでしたが、話の節々には、「北京飯」への強い矜持とアツい思いを感じることができました。

 これまでの紹介の通り、「北京本店」初代が考案し、その味を歴代店主・客双方で守り抜いてきた「北京飯」の味わい。シンプルだけど、この奥深い優しい味わいは、多くの人に愛され続けた「北京飯への愛」も、他店には模倣できない大事なレシピの一つなのではないかと思いました。

(撮影・文◎松田義人)

●SHOP INFO

店名:北京本店(ぺきんほんてん)

住:愛知県安城市三河安城本町2丁目4-1
TEL:0566-75-0230
営:11:00〜14:30、17:00〜21:30
休:月曜
https://pekinhan.love/

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