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倖田來未、大塚愛、ELTの曲も放送禁止に! 独占禁止法違反判決でJASRACの横暴な手口が明らかに!

LITERA1月11日(月)13時0分
画像:『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)
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『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)

 Apple Music、AWA、LINE MUSICなど、定額制の音楽ストリーミング配信サービスが次々とスタートした昨年。「ストリーミング元年」とも呼ばれ、CD売り上げ不振にあえぎ低迷する音楽業界の新たな起爆剤になるかもしれないと期待が集まった。


 このように、2015年は音楽業界にとって大きな分水嶺となった年だったわけだが、同年4月、もうひとつ音楽業界の未来を左右する出来事が起こっている。


 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、他の事業者の参入を妨害しているとして、最高裁で独占禁止法違反にあたると認められたのである。


 我が国ではこれまでずっとJASRAC、およびその前身団体である大日本音楽著作権協会が音楽著作権管理業務を独占してきた。その歴史は1939年から長きに渡る。実は、39年に仲介業務法が施行され、JASRACが許可申請を提出した時、大日本音楽作家出版者協会という団体も続いて著作権仲介業務の許可申請をしているのだが、内務省は「音楽分野では一団体に限る」とし、許可を与えることはなかった。ここから、その後、半世紀以上続くJASRACの独占が始まるのである。


 しかし、2001年、参入規制を緩和した著作権等管理事業法が成立することで、他の民間の会社も著作権管理事業に参加することになる。他の会社の参入により競争原理が働くことで、手数料の引き下げや、新たなビジネスの創出が期待されたのだが......結果、競争どころか、JASRACは既得権益を守り続ける動きに出たのである。


 JASRACに異議申し立てをし、独占禁止法違反の判決を引き出した主人公、著作権管理事業会社である株式会社イーライセンスの会長・三野明洋氏が、その戦いの歴史を綴った本『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)を先ごろ出版。また、それに伴い、多くのメディアでJASRACのこれまでのやり方がいかに横暴であったかを暴露している。


 JASRACが既得権を守るために行っていた振る舞いのなかで問題とされたのが、放送各局との間で「包括契約」を交わしていたことだ。「包括契約」とは何か? 三野氏は「週刊SPA!」(扶桑社)15年12月8日号でこのように話している。


〈当たり前のことですが、放送局はどう頑張っても1日24時間しか放送できない。1曲5分として、一日中音楽だけかけていたとしても300曲弱。その枠いっぱいに対してJASRACが包括契約しているわけです。そのシステム上では、イーライセンスが管理している楽曲について、放送局は別途"余分な"使用料を払わなければならなかった。それではおかしいので、JASRACの管理分とイーライセンスの管理分の比率を計算して、それに基づいてこれまでJASRACに支払っていた包括契約の額を按分しましょうと、我々は提案したんです〉


「包括契約」とは、「どの曲が何回放送されたか」などを1曲ずつ正確にカウントして楽曲使用料を算出する方法をとらず、放送局がJASRACに月単位、または年単位で一括して払うことにより「JASRACに登録されている曲はすべて使用可能」という許諾をとる方式である。つまり、JASRACがこの契約システムを変えないかぎり、放送局はJASRAC以外の著作権管理会社に登録されている楽曲を使用するごとに追加の使用料が発生することになる。


〈しかしJASRAC側は「新規事業者が参入しても、こちらの徴収の方法は変わりません」と言ってきた。それは「おかしいでしょう?」と言わざるを得ない〉(前出「週刊SPA!」より)


 JASRACが「包括契約」という既得権益をかたくなに手放さなかったことにより、放送局はJASRACが管理していない曲を使用することごとに、別途申請や支払いをする義務が生じる。そこで当然起きるのは、JASRAC以外が管理している曲は面倒だから放送しないという動きである。なぜなら、JASRACは市場の90%以上を独占しており、JASRACに登録されていない曲を締め出したところで、放送局側は特に不便はないからだ。前出の『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』では、その時に各放送局でこんな内部文書が出ていたことを明かしている。


〈たとえば、J-WAVEが番組担当者あてに配布した「イーライセンス社 放送使用楽曲の管理業務開始のお知らせ」には、わざわざ丁寧に【選曲時のお願い】として、「前述のとおり、別途報告・支払いなど煩雑な作業が発生します。 *やむをえない場合を除いて、当面は極力使用を避けるよう、お願いします」と付け加えてあった。
(中略)
 さらに、FM NACK5という埼玉の放送局にいたっては、〈楽曲オンエアの制限について〉として、大塚愛、倖田來未、Every Little Thingなど具体的にイーライセンスが管理するアーティスト名と作品名の60曲リストを添付し、「オンエアを当分見合わせることに致します」としたのは決定的だった。後日、裁判では大きく問題視された〉


 そのなかには、大塚愛「恋愛写真」のようなヒット曲も含まれている。「恋愛写真」は06年にレコード大賞の金賞を受賞、さらにその年の紅白歌合戦でもパフォーマンスされている曲である。そんな楽曲ですら、JASRACの管理でないことを理由に放送を敬遠されるようになってしまうのである。


 なんともひどい話であるが、時計の針をぐっと戻して、そもそも、なぜ前述の著作権等管理事業法がつくられ、JASRACの独占ではなく民間の参入も促して競争させようという発想が生まれたのかについても述べておきたい。実はそのいきさつにも、JASRACのお役所的かつ横暴な振る舞いがあった。


 JASRACに対抗するような新規事業者も参入できるように国に働きかけたのも、これまで述べてきた三野氏なのだが、そのきっかけにはこんな事件があった。それは、1995年、三野氏が音楽プロデューサーとして仕事をし、森高千里「渡良瀬橋」のCD-ROMを製作しようとしたときのことである。


〈これまでにない形式の商品だったので、楽曲の使用についてJASRACに相談したのですが、そのときに「使用料金はビデオと同じ」だと言われた。CD-ROMの販売価格をまるで無視した話で「そんな商品は作るな」と言われているようなもの。そこで「JASRACはマルチメディアを理解していない、おかしい!」と〉(前出「週刊SPA!」より)


 1990年代中盤以降、インターネットの普及により、音楽産業は激変の時を迎えていた。アメリカでは99年に、現在のストリーミング配信の先駆けであるNapsterが生まれている。そんな状況に対し、JASRACはお役所的対応を進めるのみで、インターネットの勃興以降、変化のスピードを早めた音楽ビジネスに対応することができなくなっていた。


 そこで、新規事業者の参入を認める法改正が行われたわけだが、先ほど述べた通り、それでもなおJASRACは既得権益を手放そうとはせずあがいたのである。だが、その長い戦いも今回の最高裁判決でようやく幕を閉じた。


 ご存知の通り、いま音楽産業は崖っぷちの状態だ。特に、CDなどのオーディオソフトの売り上げは悲劇的で、サウンドスキャンジャパンの調査によれば、2014年のオーディオソフトの売り上げは1965億円。1995年の調査開始以降、始めて2000億円を切ってしまっている。


 2001年に著作権等管理事業法が成立して以来、15年近くの時を経て、ようやく本当の意味での音楽著作権ビジネスが始まる土壌が出来上がった。この動きが日本の音楽産業復活の狼煙となることを祈るばかりだ。
(新田 樹)


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