<発達障害を知ろう>自閉スペクトラム症(ASD)が悩む”感覚過敏”をやわらげる工夫

1月14日(日)11時0分 週刊女性PRIME

視覚過敏のあるちあきさんの視界。左がちあきさんが見ている世界、右はサングラスを着用したときの視界イメージ。屋外でこのレベルなので、スキー場のゲレンデなどはゴーグルなしではありえないまぶしさに

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 発達障害、中でもASDの人は、光を目がつぶれるほどまぶしいと感じたり、シャワーが痛くて浴びるのを嫌がるなど、刺激を強く感じたりすることが多い。

 これらは『感覚過敏』といわれる症状で、五感から届く感覚の情報に脳が過敏に反応してしまうもの。感知する皮膚や眼球に異常はないが、反応があまりに激しいので本人はつらい。発達障害がなくても感覚が過敏な人もいて、発達障害に併発しやすい別の問題とも考えられている。

 精神科ナースや医師たちによるプロジェクト『ぷるすあるは』のスタッフで精神科ナースの細尾ちあきさんは、自身も視覚や触覚、嗅覚などにさまざまな感覚過敏をもっている。

「子どものころからいつもまぶしがっていました。晴れた日は輪郭がよく見えずサングラスが必須。触覚過敏もあって、長時間かけていると、メガネが当たる鼻の上と耳の後ろがちぎれそうなほど痛くなります」(細尾さん)



 乳幼児なら、感覚統合療法という治療によって、脳の成長とともに刺激をやわらげることはできるそう。

 一方、大人はできるだけ苦しみを軽減するために、自分で工夫するしかないのが実情だ。

 また反対に、感覚が極端に鈍い『感覚鈍麻』の人もいる。問題を感じないから支援を訴える人も少ないが、触感の鈍麻は大ケガにつながるケースもありうるので、さらに注意が必要。

「気づかないうちにヤケドを負ったり、ケガをしていたりしたら疑ってみて。感覚の問題はようやく支援の対象となったばかりで、これからの課題です」(細尾さん)



■当事者が語る症状



■嗅覚・視覚・触覚が過敏なちあきさん(40代女性)の場合

 私は音、匂いに特定の苦手なものがありますが、とても過敏なのは視覚と触覚だと思います。中でも視覚は、駅のタッチパネル式券売機で切符が買えないので、みどりの窓口に並びます。画面の向こうから夜の工事現場のライトが自分に向かって直撃しているように感じられて、まぶしいよりも痛いです。

 パソコンの画面は明るさを最低レベルに設定。大量のテレビや照明が並ぶ家電ショップは、なるべく避けます。カラフルなテキストを頑張って読もうとすると、目が“はじいて(視覚の刺激が強すぎて)”見えません。

 カラフルなポスターやチラシが視界に入ると気になって、目が回って気持ちが悪くなってしまいます。特定のテキスト・フォント・色の組み合わせで作られた資料は、文字が逃げて読めないんです。苦手な刺激にさらされ続けると、体調まで悪くなって集中できなくなり、ひどくなると冷や汗や寒けまでして、とてもしんどいです。

■聴覚・触覚が過敏なO・Tさん(30代男性・ASD)の場合

 視覚や聴覚も過敏だけれど、どうにもならないと感じるのは触覚ですね。まず毛糸の服は一切ダメ。スーツの裏地もガマンができないから年中、裏地のない夏物を着ています。それに、足の親指のつま先に物が触れる感触に耐えられず、社内では「足がムレやすいから」とサンダルばき。社外の仕事相手に会うときだけ、つま先に当たらない大きな革靴をはきます。

 あとは身体全体、人に触られるのが極端に苦手。ゾワゾワした圧迫感があって恐怖を感じます。手足に多量の汗をかいて、お腹のあたりまで違和感が起こってくる。手に液体やジェルがつくのも嫌なので、自分の汗が不快で、あまりに解放されないと失神します。人にぶつかるのが怖くて、電車に乗らず移動は車、狭い店には入りません。人がそばにいるだけでソワソワして手が震え、誰かが近くを通るたびにビクッとする。

 子どものころ恋愛マンガに憧れたけど、実際に彼女ができたら手も握れず、キスもできない。ベッドインのときも自分に触れないように伝え、ボクは上にシャツを着たまま。歴代の彼女に怒られましたね。でも、不思議と今の彼女だけはどこを触られても大丈夫。すごく安心できる相手だからでしょうか。大事にしたいです。

■嗅覚が過敏なN・Hさん(30代男性)の場合

 嗅覚の過敏さに気づいたのは大人になって“感覚過敏”の存在を知ってから。それが普通だと思って育ってしまった。

 隣の部屋の人の香水が匂う。隣の隣の部屋で、から揚げを食べているのがわかる。月に1度、「お母さんから血の匂いがする」なんてこともずっと気がかりでした。触覚過敏もあるのでマスクもダメ、鼻栓もできずつらかった。薬を服用するようになってからは、少し治まったのでよかったです。

■痛覚が鈍麻なA・Tさん(40代女性・ADHD)の場合

 気づけばアザができていたり、手足から血が出ていたりすることはしょっちゅう。誰かに指摘されるまで自分ではわからないことがほとんどです。先日も、腕が赤く腫れていると夫に言われ、単にぶつけたのかと思い放っておいたら、パンパンに腫れ上がって……。病院で、毒を持つ虫に刺されたのだろうと言われました。



■感覚過敏のあらわれ方とその工夫



<視覚>

□ 光がとてもまぶしい。フラッシュは苦手

□ テレビやパソコンの画面がまぶしい

□ とても苦手な色の組み合わせなどがある

□ 気づくと反射するものや回っているものを注視している

□ 人混みはすごく疲れる(音の刺激も重なる)

●工夫

□ サングラスを使う

□ 教室では刺激の強い掲示物が目に入らない席へ

□ 室内は間接照明を活用する

□ パソコンの画面は暗めに設定

□ 人混みでの長居はNG。安心できる人と一緒に行く

<聴覚>

□ 突然の大音量がとても苦痛

□ サイレン、雷、怒鳴り声、特定の音や声が苦手

□ 騒々しい場所で話の聞き取りが難しい

□ 時計の秒針、換気扇などの生活音が気になる

●工夫

□ 苦手な音、大きな音のする場所に近づかない

□ 授業中つらいときは先生に話して別の場所へ

□ 耳栓、ヘッドホンを活用

□ 好きな音楽をかけて、苦手な音をまぎらわせる

□ 行事などでは大きな音が鳴るか事前にチェック

<嗅覚>

□ 特定の匂いがとても苦手

□ 化粧品売り場、食品売り場、動物園など苦手な匂いの場所にいられない

□ ほかの人が気づかない匂いにも気づく

□ なんでも匂いをかいで確かめる

●工夫

□ 苦手な匂いの場所になるべく行かない

□ 身につけるもの、家に置くものは購入時に匂いを確認

□ マスクをする

□ 好きな香りを持ち歩く

<触覚>

□ 着心地にこだわり、苦手で身につけられない服がある

□ 手がベタベタしたり、手に水がつくのがイヤ

□ 髪をとかすこと、歯磨き、爪切りを人に任せられない

□ 軽く触れられただけで大きく身をひく

□ 握手やハグが苦手

□ 気に入った手触りのものに常に触れている

●工夫

□ 苦手な服は着ない

□ タグを縫い目から取る、ゴムなどははずす

□ 身につけるものは着心地を確かめて買う

□ 着心地が大丈夫な服は同じものをそろえる

□ 周りの人に、急に触れないようにしてもらう

<味覚>

□ 特定の味がすごく苦手

□ 味が違うことに敏感で、決まったものをずっと続けて食べる

□ 味や食感が混じり合うことがイヤ

□ 特定の食感がとても苦手(ネバネバ、揚げ物の衣など)

●工夫

□ 苦手な食べ物は無理に食べない

□ 給食のかわりに弁当持参を相談

□ コンディションがよいときに、違う調理法で食べてみる

□ 食事会などのときは事前に感覚過敏について説明しておく

<そのほか>

□ ブランコや遊具が怖い

□ 乗り物やエレベーターですぐに酔う

□ 温度に敏感で暑がり&寒がり

□ 注射などの痛みにもとても敏感

●工夫

□ 苦手な乗り物、遊具に乗らない

□ 冷暖房を積極的に使う

□ 注射の目的や手順などを説明してもらう

<教えてもらったのは>

NPO法人ぷるすあるは

精神障害や心の不調、発達障害のある人や、その家族を応援するべく、絵本やウェブサイトを通して情報を発信。ともに制作部のスタッフで、本職は行政機関で働く臨床心理士でボランティアとして参加する緒方広海さんと、精神科看護師で絵本やイラストを担当する細尾ちあきさん。

<参考資料>

『発達凸凹なボクの世界—感覚過敏を探検する—』(ゆまに書房)

教室での話し声や、給食の匂いが気になって、みんなと同じように過ごせない……感覚過敏の小学生タクが体験している世界や気持ちを描き、かかわりのヒントを示す絵本。

週刊女性PRIME

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