シベリアに住んでいた「先史時代の謎の集団」とは? 遺伝子研究で存在が判明

2023年1月13日(金)20時0分 tocana


 1万年以上前にシベリアに住んでいた、これまで知られていなかった狩猟採集民の集団の存在が、遺伝子研究によって明らかになった。、同研究は1月12日付で学術誌「Current Biology」に掲載された。


 この発見は、7500年前までさかのぼる北アジアの人骨の遺伝子調査によってもたらされたもので、この研究により、ヒトのDNAの遺伝子の流れは、これまで知られていたようにアジアからアメリカ大陸に向かうだけでなく、逆方向にも流れていたことがわかった。


 北アジア、特に西シベリアから北東シベリアに広がる地域は、人類が地球を横断する上で極めて重要な位置を占めていたと考えられている。これまでの研究では、少なくとも1万3千年前以降、アメリカ大陸に最初に到着した人々は、かつて北アジアと北米を結んだ陸橋を渡ってきたか、その沿岸を歩いてきた可能性が高いことが明らかになっている。この回廊はベーリング地峡と呼ばれており、現在のベーリング海峡にあたる。


 しかし、この重要な地域に当時住んでいた人々の遺伝子構成については、まだ多くのことがわかっていない。この地域から調査するのに十分なDNAを持つ先史時代の人骨が「極めてまれで、なかなか見つからない」ためだと、論文執筆者の一人であるドイツのチュービンゲン大学古生物学者Cosimo Posth教授は「Live Science」に語っている。


 今回の研究では、7500年前にアルタイ地方に住んでいた先史時代の10人のゲノムを解析。アルタイは、現在のロシア、中国、モンゴル、カザフスタンの国境付近に位置し、数千年にわたりシベリア北部、中央アジア、東アジアを結ぶ移動の十字路として知られており、現生人類の最も近い絶滅種であるデニソワ人の証拠も発見されている。


 科学者たちは、アルタイに住むこれまで知られていなかった狩猟採集民のグループが、「最後の氷河期にシベリアに住んでいた2つの異なるグループの間の混合物である」ことを発見したという。これらの先史時代の狩猟採集民のDNAは、青銅器時代(紀元前3000年頃から紀元前1000年頃)から現代に至るまで、北アジア全域の多くの後期コミュニティで見つかっており、「これらの採集コミュニティがいかに大きな移動性を持っていたかがわかります」と、Posth教授は話している。


 さらに、過去5000年の間に北米からアジアへの遺伝子流出が何度も起こっており、アメリカ大陸の遺伝子が太平洋に面したロシアのカムチャッカ半島や中央シベリアに到達していたことも発見された。


 テキサス大学オースティン校の遺伝学者であるVagheesh Narasimhan氏は、「アメリカ大陸への遺伝的祖先の流れを示す多くの研究がある一方で、アメリカ大陸からユーラシアへの逆流に関する証拠はあまりなかった。今回の研究は、これらの結果を裏付ける、北東アジアからの新しいサンプルを提示するものだ」と話している。


 先史時代に生きた10人のゲノムを調べることで、研究者は過去5000年の間に北米からアジアへの遺伝子流動の複数の流れを発見した。今回の研究の主執筆者である中国・復旦大学人類学・人類遺伝学准教授のKe Wang氏は、アルタイにあるニジネチトケスケン洞窟で、シャーマンと思われる宗教衣装と工芸品を身につけた男性の発見に最も驚いたという。今回明らかになったアルタイ民族とほぼ同時代のものだが、研究チームの分析により、彼の遺骨から西に約1500km離れたロシア極東の民族と遺伝的なつながりがあることが判明したのだ。


「このことは、全く異なる遺伝的プロファイルを持つ人々が同じ地域に住んでいたことを示唆しています」とWang氏は「Live Science」に語った。


 この研究により、先史時代の人類はこれまで信じられていたよりも多くのつながりをもっていたことが明らかになったといえるだろう。今後の研究にますます期待したい。


参考:「Live Science」ほか

tocana

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