新大久保でパキスタン人に本場の「ビリヤニ」の作り方を学んできた!

2024年1月18日(木)10時49分 食楽web


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●新大久保の教会で、パキスタン人のベテランシェフから本場のビリヤニの作り方を習ってきた。

 突然ですが、筆者はビリヤニが大好きです。お店で食べるのはもちろん、自分でも調理に挑戦したこともあります。しかしどうにもうまくできない……と悩んでいた2023年末のある日、SNSで見つけたのが、ビリヤニ教室の案内でした。

 そこにはこう書いてありました。『英語で学ぶスパイス使い サイラスさんとビリヤニを作ろう!』。スパイスの香り溢れる新大久保にあるキリスト教会でのイベントとのこと。これは本格的っぽいですね。しかも参加費は1000円。これはぜひ学んでみたい! ということでさっそく申し込み、参加してみました。

新大久保の教会で本格ビリヤニを学ぶ


新大久保駅から明治通り方面に向かう大久保通り沿いにある「日本福音ルーテル東京教会」

 JR新大久保駅から明治通り方面に徒歩5分ほど、韓流女子の大群が途切れたくらいの場所に、目指す会場の「日本福音ルーテル東京教会」があります。

 ちなみに『英語で学ぶスパイス使い サイラスさんとビリヤニを作ろう!』は認定NPO法人CWS Japanによるイベント「コミュニティ・カフェ@大久保」の難民・移民支援活動の一環として行われました。

コミュニティ・カフェ@大久保:新宿区の大久保・高田馬場エリアで市民・難民・移民が出会い、助け合いが生まれることを目指し開催。毎月第1・第3水曜日にコーヒーや新宿福祉作業所のパンの販売と並行し、多様なイベントやワークショップを開催している


教会内の調理室。ちょっと緊張した面持ちの講師・サイラスさん

 さて、今回の料理教室は教会の調理室で行われました。中に入ると多種多様なスパイスや食材がずらりと並べられており、すでにスパイシーな香りが漂っています。講師のサイラスさんはパキスタン人のクリスチャンでシェフ歴19年のベテラン料理人です。

 参加者は老若男女合わせて10名、そしてスタッフの方々。まずは、自己紹介タイムです。サイラスさんは日本語が話せないので「英語で学ぶスパイス使い」ということだったらしいですが、そんなに堅苦しいものではなくて英語が得意でない人は日本語でもOK! 英語ができる人がその場その場で通訳してくれる、という和気あいあいとした雰囲気です。

サイラスさん:「(英語で、以下同)私はサイラスといいます。パキスタンのラホール州の出身です。私はシェフで、このような講師の経験はないのですがベストを尽くして教えますね!」

スタッフ牧さん:「サイラスさんとは難民・移民に関する外国人相談がきっかけで出会い、しばらく相談者と支援者という関係が続いた後に、この料理教室を企画しました」

 牧さんによれば「私たちにつながる多くの外国籍の方々はさまざまな事情を抱え、制約もあり、日本社会で自らのスキルや才能を活かすことができない境遇にあります。そんな彼らが自身の能力を発揮し、日本人との交流から自信を取り戻す。そんな機会・場を提供するためにこうした活動をしています」とのこと。料理を通じての国際交流、大歓迎です!


スパイスはあらかじめ計量されて準備されていました

 まずはサイラスさんが一つ一つのスパイスの内容を説明してくれます。そのたびに近づいて、香りを嗅いでみたりする参加者たち。


当日、配布されたビリヤニのレシピの材料部分

 このレシピの量は大体5〜6人前くらいだそうで、今回は2倍の量で作りました。「tsp」がティースプーン(小さじ)、「Tsp」がテーブルスプーン(大さじ)です。

 そう、今回の計量は画像のティースプーンとテーブルスプーンを使います。料理用の計量スプーンがあればそれを使えば良いのですが、なければ普通のスプーンで代用してもOK。ビリヤニのスパイスの量は好みによって加減することも多いため、そこまで厳密じゃなくても大丈夫だそうです。


ティースプーンとテーブルスプーンの説明をするサイラスさん

 ここで、ある参加者が、スパイスは新大久保で買えるのかをサイラスさんに質問。

サイラスさん:「はい。スパイスは全部この近くのスパイス店で買いました。みなさんも帰りに買って帰れますよ。『ナスコ』という店です」

 そう、新大久保駅の近くには通称「イスラム横丁」と呼ばれる、外国産のスパイスや米、日本ではあまり馴染みのない野菜などを売っているエリアがあり、ビリヤニに欠かせない細長いお米・バスマティライスも含め、材料は全部そこで揃います(筆者もよく買い物しています)。ちなみに『ナスコ』は最近、火事で焼けてしまったので、すぐ横の仮店舗で営業しています。


ビリヤニに使うバスマティライス

 ビリヤニは国や地域毎に様々なレシピがあります。大きく分けると3種類。

・パッキ式(カレーと半分茹でた米を何層にもして蒸す)
・カッチ式(スパイスとヨーグルトでマリネした生肉の上に半分茹でた米をのせて炊く)
・ヒンドゥー式(水分を多めに作ったカレーに洗った生米を入れて炊く)

 さらに、その中にも細かく調理法の違いが存在し、非常に複雑。筆者も色々試してみたことがありますが、それぞれ個性的な美味しさがあります。サイラスさんのビリヤニはヒンドゥー式。そして最終的に蒸して仕上げるため、「ダムビリヤニ」とも言えます。


大鍋で豪快に炒めるサイラスさん

 鍋での調理は基本的にサイラスさんが説明をしながら作業していきます。まずは鍋に油を注いで強火で熱し、玉ねぎ、にんにくを炒めて、香りが出てきたら弱火にしてホールスパイスを投入。

サイラスさん:「火が強いままだとスパイスが焦げてしまうので弱火にしましょう」


鍋に鶏肉を投入します

 ちなみに鶏肉はパキスタンだと味がよく出るため骨付きを使うそうですが、日本人には食べにくいだろう、というサイラスさんの配慮から今回は骨なし鶏を使用します。

サイラスさん:「辛さも今回は本場パキスタンの基準よりも控えめにしています」


バスマティライスを洗って水に浸けておきます

サイラスさん:「ここで米を洗って水に浸けておきます。炊く時の水の量は米の1.5倍です」

 サイラスさんが作業をしている間は、参加者さんが肉が焦げ付かないよう、鍋を適度に混ぜます。


肉に火が通ったところでみじん切りの生姜を投入

サイラスさん:「ここで生姜を入れます。生姜は最初に入れないでこのタイミングで入れると香りがよく出ます」

 生姜を入れたら混ぜてさらに炒め続けます。


トマトとタマリンドとヨーグルトとパウダースパイスをボウルで合わせます

 その後、角切りにしたトマトとタマリンドとヨーグルト、パウダースパイスを全部ボウルに入れて合わせておきます。


鍋にボウルの中身を一気に投入

 鍋にボウルの中身を投入して煮込みます。ここまでずっと火加減は弱火です。


ミキサーでライタを作ります

 今度は、ビリヤニに添えるソース「ライタ」を作ります。ライタの材料は上の表の分量外のヨーグルトとミントとパクチーです。

サイラスさん:「グリーンチリも入れることが多いのですが、辛くなるので今回は入れないでおきます」

 パキスタン料理の普通の辛さは、日本人には結構辛いんですね。筆者は辛いのは大歓迎なのですが……。


よく煮込まれた鍋の中身

 ライタを作り終えたサイラスさんが鍋の様子を確認します。ここで煮込み具合のタイミングのポイントを指南。

サイラスさん:「見てください。油が分離して表面に浮いてきています。ここまで煮込めばOKです」


鍋に水を入れます

 鍋に米の1.5倍量の水を入れます。今回は米が2kgなので3リットル。ここで強火にし、沸騰したところで塩、ブラックペッパー、ダシダ(韓国の牛出汁の素)を投入。

サイラスさん:「ダシダはなくてもいいんですが、入れると美味しいです。新大久保で売っています」

 ダシダは韓国ですごくポピュラーな牛出汁の素。牛由来なので、インド人(ヒンドゥー教徒)は使いませんが、サイラスさんはパキスタン人かつクリスチャンなので大丈夫なのです。外国の料理は、信仰によって食材がかなり違ってきます。


鍋に米をざばっと投入

 このあたりで、先ほどから水に浸けていたバスマティライスをザルで水切りして、鍋に投入します。サイラスさんが全体を混ぜ、表面を丁寧にならします。そして強火のまま10分加熱。


全体を満遍なく混ぜます

 煮詰まってきたら再び全体を混ぜ合わせてから表面を平らにします。


食品用着色料を牛乳で溶かします

 食品用着色料を牛乳(分量外)で溶かして黄色い液体を作ります。レシピでは「kewra essence」となっていますが、この日はなかったので牛乳で代用していました。kewra essenceとは、アダンという南アジア原産の木から作られる甘い香りの水です。


ビリヤニの表面にハーブなどを散らします

 ビリヤニの表面に食品用着色料、パクチー、千切りにした生姜、レモンを散らします。


鍋にアルミホイルで蓋をしてさらに蓋をしっかり閉める

サイラスさん:「ビリヤニは色々な作り方がありますが、こうやって蒸して作るビリヤニは、ダムビリヤニと言います」

 火加減は最初の30秒は強火にしてパチパチ音がしてきたら弱火にします。

サイラスさん:「このまま弱火で15分、そして火を止めて8分くらい蒸らします」


いよいよビリヤニご開帳

 チャイなどを作りながら待つことしばし。サイラスさんがアルミホイルを外すと、ものすごく美味しそうな湯気とスパイスの芳香が! ビリヤニの完成です!「美味しそ〜!」「早く食べたい!」「お腹空いた!」と盛り上がる参加者たち。


サイラスさんが盛り付けてくれます

 サイラスさんが汁物用のお椀を持ってきました。何に使うのかと思ったら、それを型にしてビリヤニを盛り付けてくれました。参加者たちはそれぞれ自分の皿を持ち、給食のように順番に並びます。


一人前のビリヤニセットができました!

 ビリヤニの上にはミントの葉をのせ、ライタを添えて。お店のようなビリヤニプレートができました!


食事は調理室横の和室で(食楽web)

 ビリヤニをもらったら和室に移動。みんな揃って「いただきま〜す!」。ほとんどが初対面の参加者たちですが、一緒に料理をして打ち解けた雰囲気になってきました。それぞれのビリヤニ遍歴など語り合いながら楽しくお食事タイム。

まとめ


ライタはビリヤニにかけます

 サイラスさんのビリヤニは、お米パラパラ、しっかりスパイシーながら辛味はかなり控えめ、塩味も控えめなヘルシーなお味でした。大盛りにしてもらったのにペロリと食べてしまい、お代わりもしちゃいました。

 後日スタッフの牧さんから届いたメールには、「半年前に生活相談に現れた時の彼(サイラスさん)と先日の料理教室で講師を務めた彼とは、まるで別人のように思えるほど、生き生きと自信に満ちていました」と書いてありました。

 サイラスさんも参加者もみなさんも筆者も、みんなとても楽しかった! 美味しい食べ物は国も人種も超えてみんなの心をつなぐんだな、と改めて思った次第です。

●DATA

コミュニティカフェ@大久保

住:東京都新宿区大久保1丁目14−14(日本福音ルーテル東京教会内)
営:第1・第3水曜日の13:00〜17:00
https://www.facebook.com/community.cafe.okubo

●著者プロフィール

工藤真衣子
Photographer:人物を中心に様々な媒体で撮影。グラビア、インタビュー、プロフィール、ドラマ映画スチールなど。ライター:食レポ、レシピ記事は現地系異国メシ、珍しい食材、味のある店など個人的に好きな店や料理を紹介。新宿御苑前で写真館「スタジオ アトリーチェ」経営。

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