我が子の集中力が劇的に高まる「“学友”のすゝめ」

1月20日(月)6時0分 JBpress

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(篠原 信:農業研究者)

「一緒に勉強しよう」

 ある日、父から「これからは一緒に机を並べて勉強しよう」と声をかけられた。毎日1時間。中学2年生の終盤になってもなお、私はちっとも勉強していなかった。定期テストの1週間前には部活が休みになり、早く下校できたのだが、それをよいことにいとこたちとソフトボールをして遊んでいた。テスト一週間前くらい勉強するように、と言われていても、私はなぜ勉強しなければならないのかさっぱり分からなかったから、ちっとも勉強しようとしなかった。

 しぶしぶ、父の横で机に座るようになった。父はその頃、資格を取るための勉強をしていた。私は勉強したくないものだから、引き出しから教科書を出すのもゆっくりにしたり、ノートをペラペラめくるだけだったり。ただ父は、勉強しろとは言わなかった。イスを前後にギコギコ鳴らすと、「静かにしなさい」と注意はされたけれど。自分の勉強に集中するためといった感じ。

 その時私は反抗期真最中。教科書の真ん中にマンガを挟んでおいて、読んだりしていた。たぶんバレていたと思う。けれど父は注意しない。黙々と資格の勉強。


しぶしぶから快感へ

 なんだか、コソコソとサボっている自分が恥ずかしくなってきた。しゃーない、宿題くらいするか、イヤだけど・・・。宿題をしようとしても、当時流行っていたチェッカーズの歌が頭の中でこだまする。好きな女の子のことを思い出す。全然集中できない。

 ふと横を見ると、集中している父がいる。何も言わず、脇目も振らず、勉強している。なんだか、ソワソワ落ち着かない自分が恥ずかしくて、また宿題を一問。でもまたチェッカーズの歌が頭に鳴り響く。そんな落ち着かない様子の私を尻目に、父は黙々と集中して勉強し続けた。

 1カ月もすると、私も集中して勉強するようになった。定期テスト1週間前になり、どうせだから試験勉強するか、となった。相変わらずチェッカーズやアニメソングが脳内で鳴り響くが、その都度、父の集中している姿が目に入って、「しゃーない」と、学習に戻ることが増えた。

 そしてたまたま集中して勉強できたとき、「あれ? いま、すごく集中していたよね? 時間がたつのも忘れるくらい。俺でもこんなことあるんだな」という、新鮮な驚き。またそのときに学んだことはとても頭に残っていて、やり遂げた感がとても強かった。この快感が何度かあると、だんだん勉強するのが楽しくなった。テストの点数も上がった。それまで一度もテスト勉強したことがないのだから当然なのだが。

 その後、父はめでたく資格試験に合格。そして私が放っておいても一人で勉強する習慣が身についたと見ると、一緒には勉強しなくなり、「男はつらいよ」を見て大笑いする声が隣の部屋から響くようになった。


学友効果で逆転合格

 さて、私が高校1年生の頃。いとこが、高校受験で当落線上にいるということで、私が学習指導することになった。実はいとこは私よりも成績優秀、スポーツ万能、バレンタインのチョコの数は私を分母にすると無限大(つまり私はゼロ)。私が中学生活終盤で成績が上がり、私に成績が抜かれたものの、私から教えてもらうのが屈辱な様子のいとこ。

 父はいとこの指導にあたり、私にこう言った。「教える必要はない。お前はただ、いとこの後ろで一緒に勉強していればいい」

 私は、いとこの後ろで小さな小机を借りて、自分の勉強。いとこは私に背を向けて勉強。私は、集中して勉強するということはこういうことだ、というのを見せつけるべく、物音ひとつ立てずに勉強。

 いとこはなかなか集中できず、あくびをしたり伸びをしたり、ゴソゴソ音を立てるけれど、私が一切反応せず、身じろぎもせず、物音ひとつ立てずに集中して学んでいると、激しく負けず嫌いのいとこも、教科書やノートを開く音くらいしか聞こえないくらいに集中して勉強するように。

 この甲斐あってか、いとこは公立高校の過去問題にトライするごとに、点数を飛躍的に向上させ、受験での自己採点では、合格ラインを軽くクリア。危ぶまれていた希望校にみごと合格した。


男子に効果的な「集中の競争」

 この指導法は、私が大学生になって塾を主宰するようになってからも踏襲した。「横で一緒に集中して勉強する」というスタイルは、特に集中力に欠けやすい男の子には、非常に効果的なことが多い。

 もし私が教育ビジネスを始めるなら、「学友」派遣システムを構築するだろう。この方法は、塾よりも家庭教育よりも、時として劇的に効果を示すことがあるように思う。特に集中力を欠きやすい男の子の場合。

「学友」は、子どもを教えなくていい。自分の好きな学習をしてくれさえいれば。そのかわり、約束された時間は脇目もふらず、ひたすら集中して学ぶ姿を、横にいる子どもに見せつけること。集中とはこういうことをいうのだ!と。

 この指導法は、チャランポランな子が多い、男の子に著効を示す。男の子に「勉強しろ」なんて言う必要はない。むしろ、言わない方がよい。兄ちゃんの横で静かでいるなら、マンガでも読んでいて構わない、と。ただし兄ちゃんの集中を邪魔しないように、と。テレビやゲームは光と音、動作があるから、隣にいる間は禁止。

 そのうち、どうせやらなきゃいけないのだし、宿題でもやるか、という機会が放っておいても訪れる。定期テストがもうじきだし、復習でもしようかな、という機会がめぐってくる。そのとき。すぐそばですさまじい集中で学ぶ人がいると、自分も凄まじく集中できる体験をする。我を忘れて学んだ、という生まれて初めての体験は、新鮮でちょっと誇らしい。

 だんだんと、何も言わなくても兄ちゃんが隣にいる間は勉強することが増えていく。やがて「集中の競争」が始まる。ああつまんない、とあくびをすると、そんなことお構いなしに集中する兄ちゃんの様子が目に入る。「なんでこの人はこんなに集中できるのか」と恥ずかしく思う一瞬が訪れる。すると、「集中」という行為で競争したくなってくる。


学友にも相乗効果あり

「学友」本人にもよい効果がある。年下の若者に集中の見本を見せるという使命感のおかげで、自分一人だけの学習より凄まじい集中力が発揮できる。後輩に当たる人間に見本を見せるというのは快感。だから、繰り返すごとに集中力に磨きがかかる。集中するから学習効果が高くなる。しかもお金がもらえる。

 家庭教師の派遣でも、同じようなことをお願いしてもよさそうなものだが、教えるつもりの家庭教師は、どうしても教えがち。「教えなくてよい」という方針を納得させるのは意外と難しいだろう。だから、「学友」の派遣業が別途生まれた方がよいかと思う。

 資格をとりたい学生は最適かもしれない。真剣に学ぼうとしている可能性が高いから。集中して学べば資格も取れる。「学友」料としてお金ももらえる。年下の若者に集中力の強さの見本を見せつけられる。一石二鳥も三鳥もある。

 横に並んで座り、ただ一緒に学ぶだけの「学友」システムを提供できれば、子どもの学習意欲は自然に高まるだろう。こうした指導システムが始まらないかなあ、と期待している。

筆者:篠原 信

JBpress

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