100歳超えの約9割が<女性>の時代、92歳の樋口恵子と鈴木秀子が考える課題とは?樋口「最大の問題は低賃金で働いてきた女性の年金が…」

2025年1月21日(火)6時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

内閣府が公表する「令和6年版 高齢社会白書」によると、令和19年には国民の3人に1人が65歳以上になると見込まれているそうです。超高齢化社会の中、92歳の評論家・樋口恵子さんは「ある時期から嫌な気分を引きずって生きるなんて、なんともったいないことだろうと考えるようになりました」と語っています。そこで今回は、92歳の聖心会シスター・鈴木秀子さんとの共著『なにがあっても、まぁいいか』より、毎日を機嫌よく生きるヒントの一部を、お二人の対談形式でお送りします。

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人生100年時代の大きな課題


鈴木 ヨタヘロ期というのは印象的な言葉ですね。

樋口 ある時、高齢者問題研究家で友人でもある春日キスヨさんが「ピンピンしている元気な時期と寝たきりになるまでのあいだに、何とか自立してはいるけれどヨタヨタヘロヘロしている時期がある」と話しておられたのです。

ちょうど私がヨタヨタヘロヘロになりつつあったので「わかる、わかる」と共感を覚えて、以降、「ヨタヘロ期」と言い始めました。こういう言葉遊びみたいなことが好きなんですよ。定年退職後に妻にまとわりつく夫のことを「ぬれ落ち葉」と表現して、その年の流行語大賞の候補になったこともありました。

鈴木 まぁ、「ぬれ落ち葉」は樋口さんが広めた言葉でしたか。天才的ですね(笑)。

樋口 核家族で一人暮らしのことを「ファミレス(家族がいない)」、あとは「おひとりシニア」「老いるショック」「老婆は一日にしてならず」「すべての道は老婆に通ず」というのもございます。

鈴木 アハハ。

女性と国のための「BBB」運動


樋口 それから「BB」というのも人生100年時代の大問題です。

鈴木 BBというのはどういう意味でしょうか?

樋口 貧乏婆さんのことでございます。私が懸念しているのは女性の貧困層の増加です。日本では女性の平均寿命のほうが長く、80歳以上の男女の比率は4対6。

鈴木 2024年の敬老の日に厚生労働省が100歳超え人口は9万5000人(正確には9万5119人)と発表していましたけれど、約9割が女性なのだそうです。

樋口 女性の長生きは大いにけっこうなのですが、問題は男性に比べて低賃金で働いてきた時代の女性がもらえる年金が少ないことです。未亡人だって十分な遺族年金をもらっている人ばかりではありません。

生涯働き続けることができればいいのですが、体力的に難しいということもありますし、自営業であればまだしも、働きに出るとなると雇ってくれるところがないというのが実情です。

鈴木 深刻な問題ですね。せめて同じことを繰り返さないように、これからを生きる女性には一つの教訓として心に刻んで欲しいと思います。

樋口 はい。BBB、すなわち貧乏婆さん撲滅運動を推進しなければいけません。

鈴木 まぁ、Bが三つですか(笑)。

樋口 ええ。これはつまり、女性が男性と平等に働ける社会にするということです。BBが増えれば国の財政を圧迫し、日本は貧困社会となってしまいますから、BBBは女性のためであるのと同時に、日本が生き残るためにも避けて通れない重要な課題なのです。

高齢者の気持ちを理解すること


鈴木 前代未聞の時代をどう生き抜くかというのが今回の対談の大きなテーマですけれど、今は過渡期ですね。

樋口 ここをうまく乗り切って成熟した世の中になれば、親の介護が始まっても、自分が老いた時にも、安定した気持ちで過ごすことができるでしょう。

鈴木 若い人たちが「老い」を対岸の火事を眺めるようにしていては、自分達が老いた時に困ってしまうということを伝えたいです。

樋口 とはいえ、高齢者の気持ちを理解するのが簡単なことではないのもわかるのです。私も50代の頃には、年老いた母の気持ちがわからなかった。年を取ったら動きが鈍くなると頭ではわかっていても、もっと早く歩いて欲しいなんて内心イライラしたりして。

自分が歩行困難になって初めて、体が思うように動かないことの辛さを実感しました。お母さん、あの時は理解してあげられなくてごめんなさいという感じです。シスターは健脚でいらして羨ましいわ。

鈴木 もちろんそれなりに弱ってきてはいますけれど、おかげさまで今のところ不自由は感じておりません。当たり前のように受け止めてしまいがちですけれど、年齢的なことを考えればありがたいことで、感謝しなくてはいけませんね。

80代で家を建て替える


樋口 老いるのは人間だけじゃないんですよ。持ち家が老朽化しまして、84歳の時に建て替えました。

鈴木 80代で家を建て替えるなんていうのも人生100年時代ならではという気がしますね。

樋口 あと何年住めるかわからないのにと思いましたけれど、大地震がきたら一発でつぶれるような家に暮らしているわけにはいかないし、段差のある家は暮らしづらいしと待ったなしで。

確かに綺麗になったし、小さなエレベーターをつけたりして便利にはなりました。でも有料老人ホームに入ろうと貯めていたお金を建て替えるのに使い果たしてしまい、ウツになりました。

鈴木 新しくなった家でお嬢さんと一緒に暮らしておられるなんて幸せじゃありませんか。何より心強いですよ。

介護保険制度を活用してみたら…


樋口 でも貯金が目減りすると不安になるんですよ。その点、91歳で要支援1に認定されて手すりをつけた時は、お金がかからなくて助かりました(現在は要支援2)。

鈴木 ご自身も介護保険制度を利用なさったのですね。

樋口 ええ。家の中で壁を伝って歩くようになったり、ベッドから落ちてしまったりということが続きまして。地域の包括支援センターで要介護認定の申請をしましたところ、1か月ほどした頃に調査員が家に来て、私と娘に聞き取り調査を行って、身体機能などを確認して。

その調査結果と主治医の意見書をもとに「一次判定」が行われ、最終的には介護認定審査会による「二次審査」を経て、私の場合は要支援1でした。そこで「福祉用具貸与」を活用することにしたのです。

鈴木 そういえば樋口さんのお宅の門から玄関まで続くスロープに手すりが設置してありました。

樋口 手すりがあるとないとでは大違い。以前は車が迎えに来ると、玄関からスタッフにすがりつくようにして歩いて行きましたが、今はスロープを伝って自力で歩けるようになりました。その他にも段差のある玄関やベッドなど5か所に手すりを設置したのです。

これで誰の手も煩わさずに暮らせると安堵しまして。肉体的な問題だけでなく、精神的にも楽になったのです。

鈴木 介護保険制度を活用しない手はありませんね。

※本稿は、『なにがあっても、まぁいいか』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

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