片頭痛の前兆・予兆とは? つらい痛みを和らげる方法
2025年1月21日(火)11時0分 マイナビニュース
子どもから大人まで、片頭痛に普段から悩まされている人は少なくありません。片頭痛が持続する時間や強さは人によって異なります。中には、片頭痛の前に前兆症状があるという人もいることでしょう。
片頭痛とはどんな頭痛なのか、また片頭痛の原因や予防方法について知っておきましょう。
○■片頭痛とは?
「片頭痛」とは、頭の片側が痛むことからついた名前です。ただし、片頭痛に悩む人の4割近くは頭の両側に痛みを感じています。片頭痛の特徴は、頭痛を引き起こす原因となる病気を持っていないのに引き起こされる点です。なお1年間で日本人の成人の約8.4%が片頭痛を起こすと言われており、中でも30代の女性の約20%、40代の女性の約18%が片頭痛を起こしています。
○<片頭痛の前兆と予兆>
片頭痛は主に「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」に分けられます。
前兆のある片頭痛の90%以上には、頭痛が起こる前に「キラキラした光やギザギザの光」(閃輝暗点)など、視覚的な症状がみられます。その他にも「ちくちくした感じ」や「感覚が鈍くなる」といった感覚症状、言葉が出てきにくくなる言語症状なども起こります。
こうした前兆は60分以内で終わって、片頭痛が始まるのです。
なお、片頭痛が始まる前に「なんとなく頭痛が起きそう」と感じたり、眠気や気分の変調・疲労を感じたり、集中力の低下、首周りの凝りが起こることもあります。これは前兆とは区別されており「予兆」と呼ばれています。
○<片頭痛の持続時間や強さ>
片頭痛が起こるとその痛みは4〜72時間持続します。頭の片側にずきずきと脈打つような拍動性の痛みが起こります。痛みの強さは中等度〜重度です。
なお、歩いたり階段を昇り降りするなどの運動をすると、さらに頭痛が強くなるのも特徴です。
頭痛が起こっている間は感覚過敏となり、普段は気にならない光や音、においに不快感を覚える人が多くみられます。また吐き気や嘔吐を伴うこともよくあります。
○■片頭痛の原因
片頭痛が起こるメカニズムははっきりとはわかっていません。前兆や拍動性の痛みが起こることから、かつては頭部の血管が拡張し過ぎて起こるといわれていましたが、片頭痛と実際の脳の血流の増加の起こる時期が一致しなかったため、血管説は否定されることとなりました。
また、家系解析や双子研究などによって、片頭痛には複数の遺伝子が関係していると推測されています。その一方で、片頭痛を引き起こす原因遺伝子はまだ特定されていません。
現在、片頭痛の原因として注目されているのが神経です。大脳皮質ニューロンの過剰な興奮とそれに続いて起こる抑制状態が大脳皮質に伝わる「皮質拡延性抑制」によって、片頭痛の前兆が起こるという説が有力となっています。
また、三叉神経が刺激を受けて神経原性炎症が起こり、片頭痛が引き起こされるという説も注目されています。その他にも神経ペプチドや光受容器との関係も知られていますが、最終的な片頭痛の原因についてはまだ研究途上です。
○■日常生活でできる片頭痛の予防法
片頭痛が慢性的に起こっている場合は、毎日飲み続けることで片頭痛を防ぐ予防薬や痛みを抑える薬剤を処方してもらって服用する方法が一般的です。そのため片頭痛で悩んだら、まずは医療機関に相談しましょう。
それとともに、薬剤を使わない予防のための対処方法も行うのがおすすめです。まずは片頭痛が起こった日時や痛みの強さ、日常生活への影響度合い、痛み止めを飲んだかどうかなどを書いた「頭痛ダイアリー」をつけてみましょう。「頭痛ダイアリー」で検索すると、記入用紙をダウンロードすることもできるのでおすすめです。
頭痛ダイアリーをつけ続けると、どんな時に片頭痛が起こりやすいかわかってきます。片頭痛の誘因がわかったら、普段の生活でそれをできるだけ避けるようにしましょう。 なお、天気のように避けようがない誘因がわかったとしても、事前に痛み止めを飲んで痛みを軽減できるようになります。
○■片頭痛と上手に付き合うために
片頭痛はじっと我慢すれば起こらなくなるというものではありません。また、片頭痛だと思っていても別の病気という可能性もあります。
繰り返される片頭痛に困ったら、まずは医療機関に相談しましょう。痛みの頻度や強さに合わせて、予防薬や痛み止めを処方してもらうことができます。また、頭痛ダイアリーをつけることで片頭痛の誘因を見つけ出して、片頭痛が起こりにくいように対処していくのもおすすめです。
慢性的な片頭痛は、気長に対処することで完全になくすことはできなくても、日常生活を過ごしやすくすることはできます。医療機関の手も借りながら、片頭痛と上手につきあっていきましょう。
参照:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修「頭痛診療ガイドライン2021」
最後に片頭痛の予防法や症状を和らげる方法に関して、脳神経内科の専門医に聞いてみました。
片頭痛は命にかかわるような危険な頭痛ではありませんが、寝込むようなつらい頭痛が生じて仕事や学校を休んだり、休まなくても効率が落ちてしまったりする場合が少なくありません。頭痛がない日でも、会話が減ったり不安から行事を躊躇したりする方も少なくありませんが、家庭の中心となる20代〜40代の女性に多い頭痛であり、家族の幸福にも影響してしまう可能性があります。
頭痛が生じた場合には一般的な痛み止めが用いられる場合が多いですが、ひどい頭痛には効果が十分でなく、予防的に使用したり繰り返し服用したりして使用頻度が増えてしまうケースも少なくありませんが、頻回に使用すると頭痛がかえって悪化し、慢性的につらい頭痛に悩まされる恐れがあります。
痛みが強い場合にはトリプタン系の薬剤が有効ですが、薬局では購入できませんので病院で処方してもらう必要があります。つらい頭痛が頻回に生じる場合には予防薬もあります。まずは内服薬から試しますが効果が十分でない場合が少なくありません。このような場合にはCGRP製剤という非常に有効性の高い注射薬があります。高価ですが頭痛が劇的に減少してハツラツとした生活を取り戻せる可能性がありますので、つらい頭痛でお悩みでしたら一度頭痛専門医にご相談ください。
○山口 啓二(やまぐち けいじ)先生
一宮西病院 脳神経内科/副院長、脳神経内科部長
資格:日本神経学会 神経内科専門医、日本内科学会 総合内科専門医、日本頭痛学会 頭痛専門医