プジョーのEV「e-208」はお買い得? 競合他車と比較

1月22日(金)7時30分 マイナビニュース

プジョーの新型車「e-208」は電気自動車(EV)の選択肢として注目すべき1台だと思う。ほかの輸入EVに比べて価格は手ごろだし、サイズ感が日本の道路にフィットしているからだ。競合他車と比べて何が、どのように優れているのか。日産自動車「リーフ」などと比較してみたい。
○価格で国産車と勝負できる「e-208」
e-208は自動車業界で使われる区分で「Bセグメント」に位置づけられる。競合車には、同じくフランス車のルノー「ルーテシア」のほか、国産車ではトヨタ自動車「ヤリス」やホンダ「フィット」などをあげることができる。ただし、それらにEVの選択肢はない。身近なEVとして、国産車には日産のリーフがあり、ホンダの「Honda e」(ホンダe)がある。それらはEV専用車だが、プジョーはガソリンエンジン車の「208」とEVの「e-208」を2本立てで展開している。
車体寸法を比較してみると、e-208の全長が4,095mmであるのに対し、リーフは4,480mmと長く、ホンダeは3,895mmと短い。
車幅はe-208が1,745mmであるのに対し、リーフは1,790mmでやはり幅広だが、ホンダeは1,750mmとわずか5mmの違いでしかない。e-208とホンダeは、車体寸法的にはほぼ同じといえる。リーフは若干大きいが、かといって見た目を含め大きく異なるわけではないので、選択肢としては競合とみていいのではないか。
ちなみに、輸入車のEVではBMW「i3」の車体寸法がe-208に近い。テスラ「モデル3」は4ドアセダンなので、全長が4,695mmとより長くなる。
いずれにしても、上記の各車は大きすぎず、比較的身近に利用できるEVだ。
では、価格はどうか。e-208は389.9万円からで、リーフは332.64万円、ホンダeは451万円、i3は499万円、モデル3は511万円からとなる。
リーフは最も安いが、この価格は「S」という廉価グレードのものだ。装備面を見るとSには運転支援の「プロパイロット」が装着されておらず、オプションでの注文もできない。Sの1つ上のグレードとなる「X」の価格は381.92万円。こうなると、リーフとe-208は価格面でほぼ並ぶといっていいだろう。
○「e-208」は航続可能距離も遜色なし
次に、車載のリチウムイオンバッテリー容量を見ていきたい。1度の充電でどのくらいの距離を走れるかに直結する部分だ。
50kWh(キロ・ワット・アワー)のバッテリーを積むe-208は、フル充電で403キロ(JC08モード)を走行可能。リーフには40kWhと62kWhの2つの選択肢があり、航続可能距離(JC08モード)は前者が400キロ、後者が570キロとしてある。
ちなみに、現在はWLTCモードでの表示が行われているので、数値はより厳しいものとなっている。ただ、こちらの方が実用での走行距離には近いといえる。WLTCモードでの航続可能距離はリーフの40kWhで322キロ、62kWhで458キロだ。
ホンダeはリチウムイオンバッテリーの車載容量が35.5kWhと少なく、航続可能距離はJC08で308キロ、WLTCで283キロとなっている。上級グレードの「アドバンス」は若干、この距離が短くなる。i3はWLTCモードで360キロと公表されている。
数字を並べ立てたが、e-208のリチウムイオンバッテリー容量と航続可能距離は、他車と比較しても遜色ない性能だ。別稿の試乗での経験からすれば、空調を使いながらでも、現実的に300キロは走行できるのではないかと思われる。
カタログ表記のWLTCは実用に近いとはいえ、空調は使わずにモード測定した結果だ。他車のカタログ数値がe-208よりややよい数字であったとしても、空調を使いながらの運転ではカタログ値を下回る可能性がある。その点を踏まえると、やはりe-208のバッテリー容量と実際の走行距離に対する満足度は、既存のEVと比べても、標準の水準にあるといえるだろう。つまり、EVとして選択肢に入れられるだけの性能を持ち合わせているということだ。
e-208の上級グレードである「GT Line」に試乗してみると、その運転感覚と乗り心地は大いに購入意欲をそそられるものだった。より廉価なグレード「アリュール」(Allure)の満足度はどうだろうか。
GT Lineと装備を比べてみると、アリュールはタイヤの寸法が195/55R16となっていて、17インチのGT Lineよりも扁平ではなくなる。この差は見栄えに関係するし、操縦感覚や乗り心地にも影響を及ぼすはずだ。見栄えについていえば、個人的には扁平すぎないタイヤが好ましいと感じている。また、タイヤ交換やスタッドレスタイヤを準備する際などには、16インチの方がタイヤ価格が安上がりになる。そして、一般的には、あまり扁平でないタイヤの方がしなやかな乗り心地となり、日々利用するうえでは快適さが高まると想像できる。
それ以外に、装備面でどのような差があるのか。大きな違いとして、アリュールでは「パノラミックガラスサンルーフ」のオプションが選べない。ただ、多くの場合、なくてもそれほど問題のない装備なのではないだろうか。そうなると、車種構成としては廉価な位置づけとなるアリュールの魅力は、競合他車と比較しても侮れない。それが389.9万円で購入できるのだから、心は動く。
ただ、e-208に「これがあれば」という装備が付いていないのは残念だ。シートヒーターとハンドルヒーターのことである。これらの装備は体を直接温めてくれるので、空調(暖房)の温度を高めに設定しなくても寒さを抑えてくれるというメリットがある。体を温めることができれば、天候によっては空調を使用しなくても済むほどだ。それでいて、シートヒーターやハンドルヒーターの電力消費は、空調機器の何十分の一でしかない。この消費電力の少なさは、当然ながら走行可能距離に効いてくる。
同じ部品を多用するプジョーのSUV「e-2008」であれば、GT Lineの前席にシートヒーターが標準装備されている。その効果は絶大で、冬の早朝に試乗した際には非常に役立った。EVにとって、シートヒーター(前後席)とハンドルヒーターは、全車に標準装備すべき機能なのである。
そのほか、私がEVを購入するなら、クルマから自宅へ給電できるヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH)という機能を使いたいと考える。昨今の自然災害の甚大化で、停電の可能性が全国的に高まっている。同時に、我々の生活は電気に依存してもいる。身近な携帯電話ひとつをとってみても、電力が遮断されれば充電切れとなり、日常生活に大きな不便をもたらしかねない。
自然災害が起こっていなくても、この冬は寒さの影響で全国的に電力消費が増え、各電力会社の供給能力がひっ迫し始めている。こうなると、停電の可能性がさらに広がる懸念もある。すでに気候変動は進行しつつあり、この先の気象がどう変化するかは読めない事態となっているからだ。
日産と三菱自動車工業は10年以上も前からEVを導入し始めているが、東日本大震災の際に、EVからの給電がいかに災害支援に役立つかを実体験していることもあって、VtoHの活用を前提とした取り組みを進めている。ホンダeも、表立って公表してはいないが、VtoHには対応している。
それに対して海外の自動車メーカーは、まだEVの経験が十分ではないため、クルマとしての性能向上には熱心であるものの、エンジン車とは違うEVの、駐車しているときにも役立つ機能にはまだ熱心に取り組んでいない。したがって、e-208だけでなく、あらゆる輸入EVは、クルマとしての魅力がいかに高くても、EVならではの多様な機能性については日本車に劣るのだ。
e-208の魅力にいくらそそられても、VtoHに対応していないところで気持ちが引かされてしまう。EVとして、持てる能力を存分にいかしきれていないからだ。電動化によって自動車評論は、単なるクルマの評価では済まない時代となってきている。
御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら

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