認知症になった人の選択肢、グループホームはどんな施設か

1月22日(水)7時0分 NEWSポストセブン

静かな住宅街の中にある『きみさんち』。料理雑誌を見て、冷蔵庫の食材を確認して今日の献立を考える。買い物へ行き、調理をしたり配膳をしたりといった、ごく普通の生活者の営みがグループホームの魅力だ

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 グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の人が家庭的な環境と地域住民との交流のもと、生活支援や機能訓練などのサービスを受けながら、少人数で共同生活を営む住居。介護保険の地域密着型サービスの1つだ。認知症の親の生活の場を考える時、選択肢の1つとして覚えておきたい施設だ。


 グループホームの入居条件は、65才以上で認知症と診断された要支援2、要介護1以上の高齢者。施設と同一地域に住民票があることだ。


 また、施設基準は1ユニットあたり定員5〜9人。1施設には2ユニットまで。1人に1個室、収納を除く7.43平方メートル(4.5畳)以上が基本となる。


 そして、スタッフは3年以上の認知症介護経験のある専従・常勤の管理者、介護計画の作成担当者、利用者3人に対し1人以上の介護スタッフ(夜間は常時1人以上)の配置が義務になっている。


 対応が難しい認知症に、専門施設の人たちはどう向き合っているのだろう。家族だからこそ見えづらい認知症の人の心の内を、開設から20年のNPO法人ミニケアホームきみさんち理事長・林田俊弘さん、管理者・志寒浩二さんに聞いた。


 東京都練馬区にある『きみさんち』を訪ねた。2階建て住宅の小ぢんまりしたダイニングに5人の老婦人と女性介護職員が集まっている。


 テレビを見る人、職員と歓談する人、何かこだわりがあるのか“家の住所”を繰り返しつぶやく人、食卓から離れてみんなを眺める人。初対面の私に故郷の話をしてくれる人もいれば、目も合わせない人もいるが、それぞれが好んでこの場を共有しているような穏やかな空気だ。


「グループホームの定義として“家庭的な環境”とありますが、入居者さん同士は“家族”という感じではありません。ここはそれぞれが“自分らしい生活”を再構築する場なのです」と、林田さん。


 認知症になると少なからず生活上うまくいかないことが出てくる。本人も焦るし、家族も困惑する。本人にはそんな環境が大きなストレスで、妄想や暴言など家族を困らせるBPSD(周辺症状)となって表れることもあり、どんどん“厄介者”になってしまう。


 グループホームはそんな環境から離れ、認知症が理解される少人数の環境で、自分らしさを取り戻す場なのだ。


「大切なのは本人自身が自分の生活を組み立てることで、規則やスケジュールに従う暮らし方ではありません。朝7〜9時頃、職員と入居者さん数人が朝ご飯を作る。すると各居室から自然と集まって来ますが、自分のペースで起きる人もいます。日中は散歩をしたりテレビを見たり、思い思いに過ごしますが、冷蔵庫の中を見て昼食や夕食を相談し、足りない食材を近所に買いに行くこともあります」(林田さん)


 入浴も交替で自由に。入らなくても強いられないし、消灯時間もない。


「大人数の施設では、どうしてもルールの中にはめ込まれる。認知症の人にとってはそんなこともつらいのです。もちろんグループホームにいても混乱したりBPSDを発症したりすることはありますが、専門職員は症状もひっくるめてその人を見る。だからそれぞれの人の意思を尊重できるのです」(林田さん)


 普段意識しないが、私たちも自分の意思で生活しているからこそ楽しい。その人が認知症になる前、自分の意思で暮らしていた頃の生活感がいわば“自分らしさ”なのだ。


 夕方になると、『きみさんち』では料理雑誌を開いて夕飯の相談が始まる。「これ、おいしそうだね〜」「さつまいもあるかな?」といい笑顔が並んでいた。


◆認知症の人は猛烈にがんばっている!!


 認知症の人は家族や住み慣れた家から離れることも大きな不安だろう。施設への転居を拒むケースもよく耳にするが、『きみさんち』ではほとんどの人が、3か月以内には落ち着くという。


「人間本来の適応能力に加え、認知症の人ならではの人間力のなせる業かもしれません」と言うのは、日々入居者に接する管理者の志寒さんだ。


「ある人はもの盗られ妄想が激しく、精神科での入院を経て『きみさんち』に来られました。またある人は認知症で衰えていく不安を日記に綴りながら家族とうまくいかず、地域の人の手助けを得てここに。


 みなさん認知症になったことで居場所を失いかけ、不本意ながらも入居されたのです。

 料理が得意で世話好きなある人は、自分が住み込みのヘルパーだと思い込み、『きみさんち』のすぐ近所に住んでいたある人は、自宅の工事のためにここに借り住まいしていると思っている。


 認知症ならではの妄想や作話と言うこともできますが、自分の今の状況を合理的に説明するストーリーを作っているのです。“だから私は今、ここにいるのだ”と。ぼくらは自分が自分でいることを説明するのに頭は使わない。でもここにいる人たちは猛烈にエネルギーを使って自分の居場所を作っているのです。だから時々疲れてヘタるけれど、このたくましさ、すごいと思う」(志寒さん)


 家族には不安や甘えをぶつけられるから、かえって関係を維持するのが難しい。でもグループホームの入居者同士は他人。気安さはあるが緊張感もあり、それぞれ自分の居場所を構築するのにほどよい環境だという。


「誰しも自分の居場所を勝手に作られるのは嫌ですよね? 認知症になっても、自分の生活や人生を作る力はまだまだ残っているのです。それをぼくらは引き出して支えるだけです」(志寒さん)


 驚いたのは『きみさんち』での看取りの話だ。ともに暮らした仲間とのお別れは、さぞ大きなショックだろうと想像したが、みんなとても穏やかに受け止めていたという。


「100才を超えて亡くなったお仲間を送り出す時“この人はただものじゃない、徳のある人だよ”と称えて…。人の死をちゃんと得心している。人としてぼくらよりずっと達者なのだとあらためて思いました」(志寒さん)


 老親を介護する家族へ、認知症対応のためのアドバイスをもらった。


「もっとも重要で、専門家でも難しいのは、“待つ”こと。家族のペースで事を運ぼうとすれば、先回りして指示したくなりますが、矢継ぎ早に言葉をかけると、認知症の人は混乱するのです。本人のペースを見守り、危険がないかだけをチェックしてあげてください」(林田さん)


 そして介護家族の困り事に多いのが入浴や着替え、歯磨きなどいろいろな拒否。これには、なんとかやらせようとするのではなく、まず“受容”。


「拒否の理由はいろいろですが、まずは本人を受け入れる。多少、変でも、汚れてもよしとする。家庭内ではもっとほったらかしでもいいと思う。認知症の人は機能が衰えつつある中で、実は周囲に順応することに必死なのです。


 病気のために、何をするにも時間がかかり、出来栄えもよくない。家族は“昔はもっと上手にできたのに”と思うでしょう。でも今、そのために使っているエネルギーは昔の110%。身近にいる人はそこに気づけるくらいの距離が必要です」(林田さん)


 家族にはいずれも難題だ。でも思い詰めてその無理をこじらせれば、虐待にもつながると林田さんは言う。


「介護に取り組む家族には、相談できる3種類の仲間を作ってほしいと思います。1つは医師や介護職などの専門職。もう1つは家族会など、身近な地域などで介護のことを話せる仲間。そして介護に関係のない友達。さらにグループホームのような施設を利用し、ほどよい距離とやさしくできる関係を保つことも選択肢に入れておいてください」(林田さん)


※女性セブン2020年1月30日号

NEWSポストセブン

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