【新型コロナ】1人で100人以上感染!「腸チフスのメアリー」元祖スーパー感染“人源”のエゲツない歴史とは?

2020年4月22日(水)12時0分 tocana

 新型コロナウイルスの感染者数、発表以上に多い。感染者とカウントされるのは発症して医療施設で受診した者が大半で、感染していても症状が出ない不顕性(ふけんせい)感染者がいるからだ。


 この無症状感染者こそ、感染症問題で最も気をつけなければならないもののひとつだ。感染してから発症するまでの潜伏期間が危険なのは周知されているが、自己免疫が勝利して、症状が重く出ないまま回復した者もいる。インフルエンザなどでは「症状が消えてからも一定期間、出勤や登校しない方がいい」と言われるのはこのためだ。そして不顕性感染者は、そもそも感染しながら症状が出ないタイプの人で、無自覚にウイルスを撒き散らしてしまうスーパースプレッダー(感染力の強い感染者)化する最悪のケースを生む。


 実のところ、海外で強行的に都市封鎖しているのはそのリスクがあるためであり、多くはその時点での感染者数に左右されたものではない。日本では緊急事態宣言をした安倍晋三首相が、自粛要請にとどめた理由を「日本ではそこまでの状況ではない」と説明したが、「そこまでの状況」になるのが怖いから、多くの国で都市封鎖に踏みきったのである。


 英語圏では、その恐怖の実例「腸チフスのメアリー」が何度も持ち出されている。1900年から7年間、家政婦のメアリー・マローンが務めた先々で感染者が発生し、これを疑った衛生士らが強制的に拘束して検査したところ、彼女の便からチフス菌が検出された。しかし、当時は症状のない保菌者が認知されておらず、メアリーは3年後、居住地を明らかにすることなどの条件で解放されたが、それからさらに5年後、再び感染源となっていたことが発覚、ニューヨークの病院で偽名を使って働いていたことで感染を拡大させていたのだ。彼女自身は心臓発作で70歳で死亡するまで23年も病院に隔離されながら症状がないままだった。


 一部では「匂いや味がしなくなったら新型コロナウイルスのスーパースプレッダーかもしれない」などという記事があったが、そもそも無自覚なスーパースプレッダーは、匂いや味の症状など出ない。そのためマスクや手洗いをしながらも、普通に電車に乗って仕事をしたり買い物をしたりして過ごす。行く先々で感染が出ても「自分は感染しなくて運がよかった」と安堵するだけで感染源であり続ける。たとえば、それが千葉や埼玉などから東京に通勤している者なら、満員電車も含め出先での感染者を増やすが、自宅に帰って独り暮らしなら周辺で感染者が出ないから、なお正体不明の感染源として発見されない状態が長引く。


 SARSでは1人で86人に感染させた人がいたことが分かっている。そう考えると、1人で100人以上感染させる可能性もある。感染症は一般的に2・8ルールと呼ばれるものがあり、感染者のおよそ2割が他に感染を広げる者になるといわれる。英イングランド主席医務官は現在、この2割に症状の出ないスーパースプレッダーがいる可能性を疑って発見を最優先にしている。発生源の武漢でも、都市封鎖前は感染者の8割以上が症状に気付いていなかったという報告があった。ヨーロッパで爆発的な感染拡大が起きたのも不顕性感染者のスーパースプレッダーがいたからだとの見方がある。


 街に出ると、コホンと咳をした人を周囲の人が怖がって離れたりしているのを見かけたが、本当に怖いのは咳ひとつない保菌者の方だ。何も症状が出ていなければ、パーティーやイベントに行かずとも友達とお茶ぐらいはするし、日々スーパーマーケットやコンビニに出入りする。日本政府の「不要不急の外出自粛要請」で抑えられないのがこれだ。「人との接触が8割減れば2週間後に感染者が減少する」と話した安部首相の目論見にコロナ版メアリーは想定されているのだろうか。

tocana

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