おしっこが赤ワインに……!「痛みのない血尿」が一番危ない理由

1月25日(土)11時0分 文春オンライン

 少し前に、「血精液症」という症状についての記事を書いた。白いはずの精液に赤い血液が混じるという、見た目はショッキングな症状なのだが、多くの場合はそれほど心配しなくていい——という内容だった。


 精液に血が混じっても大丈夫なら、尿に混じったって同じことだろう……と考えるかもしれない。


 ところがそう簡単な話ではないのだ。


 おしっこに、見ただけでそれと分かるような血液が混じっている場合は、あまり呑気にしてはいられない。とりあえず、近くの泌尿器科を探すくらいのことはしたほうがよさそうだ。



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「痛みがない血尿」こそ危ない


 一口に「血尿」と言っても、見たことのない人には、それが一体どんなものなのか、見当もつかないだろう。


「尿の色合いはその時々で濃淡があるし、人によって色の表現の仕方も異なるので一概には言えませんが、よく言われるのが“鉄さび”とか“赤ワイン”、あるいは“濃い紅茶”に似た色合い——というもの。ただ、色が濃ければ重症とか、薄ければ安心ということはない。血尿の色の濃さは、病気の悪性度に比例しません」



 と語るのは、大阪市中央区日本橋にある岩佐クリニック院長で、泌尿器科医の岩佐厚医師。血尿は男性にも女性にも起き得る症状だが、確実に驚いて慌てるのは男性だという。


「女性は生理があるので、“出血”にもある程度馴れている。ところが男性にはその免疫がないので、多くの場合はうろたえることになる」(岩佐医師、以下同)


 血尿が出る原因はいくつかある。良性の前立腺肥大症などの可能性もあるが、注意しなければならないのはやはり悪性の疾患、つまり「がん」だ。


「痛みなどの症状がなく、それでいて目で見てそれと分かる血尿を“無症候性肉眼的血尿”と呼びます。痛みがあれば膀胱炎や尿管結石などの可能性が出てきますが、そうした症状が何もないのに血が出るなら、膀胱がんなどの重大疾患を疑わないわけにいきません。男性の場合、前立腺がんで血尿が出ることもありますが、確率として高いのは膀胱がん」



「死ぬほどつらかった……」尿道に管を通す“膀胱鏡検査”


 血尿の原因を特定するには、尿道から膀胱鏡という内視鏡を挿入して膀胱内部を観察するしかない。もし、あなたの周囲に膀胱鏡検査の経験者がいたら、その時の感想を訊ねてみてほしい。検査を受けたのが5年以上前であれば、まず間違いなく遠い目をして「死ぬほどつらかった……」と述懐するはずだ。


 つい先ごろまでの膀胱鏡は、金属製の筒だった。直径約8ミリ。鉛筆ほどの太さの硬い管だと思ってほしい。硬いから「硬性鏡」と呼ぶ。この硬性鏡を尿道に押し込んで行く。普段は好きなところで自由に曲がっている尿道が、硬性鏡によって強制的にまっすぐになっていく。そして、先端が膀胱に到達すると管の内部にカメラなどの検査装置を挿入して内部を観察するのだ。



 これは確かに痛そうだ。想像しただけで内股になってしまう。一度でも経験した人にとって、それはまさに武勇伝であり、多少の誇張を交えて周囲に吹聴しても誰も咎めることはできない。そして、そんな体験談を一度でも聞かされたことのある人は、恐怖心が先に立って、たとえ血尿が出ようとも泌尿器科の門をくぐろうとしない。結果として早期発見を遅らせてしまうのだ。


「軟性鏡」で、痛みは従来の百分の一以下に


 ところが、医学の進歩はこの領域にも及んでいる。「軟性鏡」とよばれる、胃カメラを細くしたようなフレキシブルな動きをする膀胱鏡が開発され、今では大半の泌尿器科でこちらが使われている。



「過去に硬性鏡を経験したことのある人が軟性鏡で検査をすると、その苦痛の小ささに驚かれます。中には“痛みは従来の百分の一以下だ”と絶賛する人もいる。ただ、これはあくまで比較の問題であって、初めて受ける膀胱鏡検査が軟性鏡の人は、やはり怖がりますね。そもそも尿道にモノを入れること自体、経験がないわけですから」


 ちなみに成人男性の尿道は平均して18センチなのに対して、女性のそれは約3センチと短い。短いから女性のほうが尿失禁のリスクが高いのだが、短い分だけ膀胱鏡検査に伴う苦痛は小さい。どっちがいいやら悪いやら……。



膀胱がんを早期で見つけることが難しいのは“女性”


 他の多くのがんと同様、膀胱がんも早期で見つけられれば、タイプにもよるが治療成績はいい。国立がん研究センターの集計による5年生存率を見ると、男性は78.9%で女性は66.8%。女性の成績が悪い理由を、岩佐医師が分析する。


「先にも触れたように、女性は生理による出血があるので、血尿に気付いてもすぐに病気を疑わない傾向にある。また、医療機関を受診するにしても、最初から泌尿器科に行く女性は少なく、多くは婦人科に相談する。その結果、膀胱炎を疑ってしばらく治療を行い、それでも治らないのでようやく『一度泌尿器科に診てもらっては?』という流れになることが多い。そのため、病気発見までに時間がかかるのです」


 岩佐医師はこうも言う。


「婦人科でも尿の細胞診検査は行いますが、そこで“陰性”となると、一旦はがんの可能性が排除されてしまう。でも、実際にはがんがあっても陰性になることは珍しくない。最初から泌尿器科に来てくれていたら、と悔やむことはありますね」



 男も女も、「血尿が出たら泌尿器科」と考えておいたほうがよさそうだ。


近年増えている「血尿を見つけづらくする環境の変化」


 本来、血尿に気付きやすいのは男性だ。それは、尿を直接見やすい姿勢で排尿するから。


 しかし近年、「しぶきが跳ねて床が汚れる」などの理由から、“座尿男子(座って排尿する男子)”も激増中だ。こうなると尿の色を確認しづらくなる。


 もう一つ、やはり近年増えている「血尿を見つけづらくする環境の変化」がある。それは「便器のカラフル化」だ。


「白い便器にワインレッドの尿が当たれば一目瞭然ですが、最近はワインレッドの便器もある。それ以外にも青い便器に黄色い便器と、汚れが目立たず、しかも見た目におしゃれな色の便器が増えたことで、血尿に気付きにくくなっているのは事実です。その分、駅や会社のトイレで気付くケースが増えています」


 これから家を建てる皆さんは、少し掃除が大変かもしれませんが、便器は「白」がよろしいようで。



(長田 昭二)

文春オンライン

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