脳を破壊する「ゾンビ鹿病」が人間にも感染する恐れありと専門家が懸念

1月25日(木)9時10分 カラパイア

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 北アメリカに生息する鹿が神経系を侵す謎の病によって命を落としている。専門家は、この謎の病気が人間にも感染するようになるのではないかと懸念している。

【ゾンビ鹿病(慢性消耗病)とは?】

 慢性消耗病(CWD)、またの名を”ゾンビ鹿病”というこの病気に感染した鹿は、脳みそがスポンジ状になり、体重が減る。感染して2年ほどすると、目がうつろになる、よだれが出る、肋骨が浮き上がる、頭や耳がうなだれる、同じところを繰り返し歩行するといった症状が現れ始める。

 このような症状は数日間で終わることもあれば、1年以上続くこともあるが、最後には死んでしまう。


【プリオンを介して感染。感染経路は直接接触以外にも】

 慢性消耗病は1976年にコロラド州フォートコリンズで初めて確認された。以降、アメリカ24州、カナダ、韓国、ノルウェーにおいて野生での感染症例が認められた。

 この病気はプリオンを介して動物同士で感染する。プリオンとは、誤って折りたたまれた状態(ミスフォールド)のタンパク質で、他のタンパク質にもミスフォールドを引き起こす。プリオン病は特定の種にしか感染しない傾向があるが、進化によってそうした制限を克服することもある。

 プリオンの感染経路は直接接触によるものばかりではない。ニューヨークタイムズによると、患畜と死骸が植物や土壌を汚染し、プリオンはそこで数年あるいは数十年も留まる。

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【霊長類にも感染することを確認】

 この病気が人間に感染したという報告はなく、感染した肉を食べることで人間に感染するという証拠も見つかっていない。このことから、人間と鹿の間には”種の障壁”が存在することが窺える。

 しかし、最近の研究はこれについて警鐘を鳴らしている。

 米コロラド州立大学プリオン研究センターのマーク・ザベル博士らは、慢性消耗病に感染したマカク(オナガザル科)を発見し、肉を介して霊長類にも感染することを初めて確認した。

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【プリオンの進化により人間が感染する可能性も】

 「ほとんどの研究は、種の間には強固な障壁が存在することを示していますが、最近の研究は、その障壁がこれまで考えられていたほど強固ではない可能性を明らかにしています」とNPRのインタビューで慢性消耗病同盟の主催者マット・ダンフィー氏はコメントした。

 またザベル博士のチームは、ゾンビ鹿病に関連するプリオンが現在でも進化している可能性が高いことを発見。このことから人間に感染するプリオンが出現するのも時間の問題だという。
 
 例えば、やはりプリオン病である狂牛病は羊に感染するスクレイピーに由来する。スクレイピーの原因となるプリオンが牛に感染した場合に発症するのが狂牛病である。

 人間が狂牛病を発症している牛の肉を食べると、それは人間の脳でプリオンを作り出す。アメリカ食品医薬品局によると、2016年、この症状で231人が死亡している。

 ザベル博士の考えでは、鹿のプリオンを排除するには計画的に野焼きを行うしかないという。しかし、病気について不明な点が多々あるという。

 コロラド・パークス・アンド・ワイルドライフのマイケル・ミラー氏によると、鹿の検査依頼は2017年末に3倍以上にも増加しており、コロラド州では今後もこの状況が続くと見られている。

 過去21年、ゾンビ鹿病の発症率は増加したが、それによって人の健康が害されたことはなかった。だが今後どうなるかはわからない。

 もし近隣で、ハンターの仕留めた鹿肉が陽性だった場合には、その付近にいた別の鹿の肉を口にするべきではないと専門家らは警告している。

References:npr / nytimes / cdcなど/ translated by hiroching / edited by parumo

カラパイア

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