トヨタも参戦! 小さな電気自動車が増える理由

1月26日(火)7時30分 マイナビニュース

日本でも近い将来、ガソリンエンジンだけで走る新車の販売が禁止されることになった。欧州などの流れに沿ったものだが、こうした動きを受け、日欧で小さな電気自動車(EV)が続々と登場している。EVが増えるのはわかるが、なぜ小型のクルマが多いのだろうか。
○トヨタが2台のEVを発表
菅義偉首相は2020年10月、臨時国会の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明。これを受けて12月には、「2030年半ばまでにガソリン車の新車販売禁止を目指す」という方針が打ち出された。いずれも世界の流れに沿ったものだが、日本は中国同様、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)とともに、ハイブリッド車(HV)も電動車として扱うことになった。
これに対して一部マスコミから、「電動化とはEV化ではないのか」という意見が出ると、日本自動車工業会の会長を務めるトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏が反論。仮に乗用車400万台をすべてEV化すると夏には電力不足となり、解消には発電能力を10〜15%増やす必要があるという試算を公開した。
行き過ぎたEV報道に釘を刺したような内容だった。だからこそ、その豊田会長率いるトヨタが昨年末、2台のEVを発表したことに驚いた人がいるかもしれない。その2台とは、12月22日に発表となった無人運転移動サービス用車両「e-Palette」の進化型と、同25日に登場した2人乗りの超小型車「C+pod」(シーポッド)だ。
e-Paletteは見てお分かりのとおり、公共交通的な使い方を想定したEVだ。C+podも、まずはEV普及に向けて検討を進めてきた法人ユーザーや自治体などを対象とした限定販売としている。つまり、どちらもマイカーではない。後者については、個人向けを含めた本格販売を2022年にも開始する計画だというが、主体はあくまで法人や自治体などであろう。
○超小型モビリティとは?
公共交通や法人・自治体などに使ってもらうというこのトヨタのEV戦略は、理にかなっていると思った。
EVは満充電での航続距離の短さや充電時間の長さなどが欠点だ。しかし、公共交通や法人・自治体利用ならば、走る場所がある程度は定まっているので充電管理がしやすいし、都市部で発進停止を繰り返す運転パターンは、超低回転で最も効率が良くなるモーターに向いていて、欠点が目立たなくなる。
さらに、C+podのような超小型車は、個人利用になってもEV向きだと思っている。都市内での利用がメインになるし、短距離移動が多くなりそうだからだ。大容量バッテリーが不要なので、低価格が実現できるというメリットもある。
ところで、そのC+podだが、広報写真で黄色いナンバープレートを装着していることからも分かるとおり、登録上は軽自動車となる。ただし、厳密には軽自動車の中に設定された「超小型モビリティ」に属することは覚えておいてほしい。
超小型モビリティは国土交通省が定めたカテゴリーで、認定車と形式指定車がある。2013年にまず認定制度を発表。続いて2020年に道路運送車両の保安基準と道路運送車両法施行規則を一部改正し、形式指定が可能になった。
ほかの軽自動車と違うのは、高速道路は走れず、乗車定員は大人2人であること。さらに形式指定車は、ボディサイズは全長2.5m、全幅1.3m、全高2.0m以下と決められ、フルラップ/オフセットともに時速40キロの前面衝突試験が義務付けられた。一方の認定車は、走行には運行区域の地方公共団体などへの申請が必要で、走行区域も決められるなどの条件が課される。C+podは「新たに設定された超小型モビリティ用の安全基準に対応」とあることから、形式指定第1号車となりそうだ。
この超小型モビリティ、欧州でも注目が高まっている。従来は専門メーカーが多くの車両を手がけていたが、2012年にはルノーが「トゥイジー」、2020年にはシトロエンが「アミ」をデビューさせた。ますます深刻になる環境問題を前に、必要性が高まっているのだろう。
さらに、それより上のいわゆるコンパクトカーと呼ばれるカテゴリーも、都市内を短距離移動する使い方が多いことから、EVとの相性がいい。ということで近年、多くのブランドがEVを送り出している。
○EVに向いているのはどんなクルマ?
超小型モビリティのひとつ上に位置し、欧州で「Aセグメント」と呼ばれるクルマには、軽自動車登録でなくなった三菱自動車の「i-MiEV」がある。さらに今年は、EVのみとなったフィアットの新型「500」が日本導入の予定だ。ほかに、欧州ではフォルクスワーゲン「up!」、ルノー「トゥインゴ」などがEVを設定している。
この上の「Bセグメント」では「ホンダe」のほか、プジョーの「e-208」と「e-2008」、DS「DS3クロスバック E-TENSE」が日本で販売中。欧州では現地でのベストセラーEVでもあるルノー「ゾエ」が代表格だ。
日本では日産自動車「リーフ」がおなじみで、まもなくマツダ「MX-30」のEV仕様が加わる「Cセグメント」を見ると、欧州ではフォルクスワーゲン「ID.3」などがある。このあたりがEVのメリットがいかせる上限で、高速走行や長距離走行が多くなるこれ以上のクラスは、PHVやFCVに任せるのが自然だろう。
どこまでがEVで、どこからがPHVやFCVなのか。このボーダーはブランドによって異なる。トヨタが販売しているEVは今のところ超小型モビリティのみで、Bセグメント以上はHVとしている。PHVやFCVは、さらに上のクラスになる。
EV専用車種になったフィアットの新型「500」を日本に導入すると発表したFCAでは、Cセグメントのジープ「レネゲード」にPHVを設定している。PSAはEVのDS3クロスバック E-TENSEを取り扱っているが、今年導入予定といわれる「DS7クロスバック E-TENSE」は、サブネームは同じながらPHVとなる。
では、一部の欧州プレミアムブランドが出している大型高性能EVはどうなのかというと、こういったクルマはテスラ対抗という意味合いが強いと思っている。欧州勢はかつて、日本製HVにクリーンディーゼル技術で対抗したが、その図式と似ている。これらのEVは高価格ということもあるので、社会的な意義は薄いのではないだろうか。
都市部では車両台数を減らすことも環境対策に有効なので、カーシェアリングは今後も増えることが予想される。小型EVは、このシェアリングにも適している。待機中に充電する仕組みを作れば、充電の手間からも解放されるからだ。
すでにホンダeとシトロエンのアミは、ブランド自身が運営するカーシェアで運用が始まっている。トヨタのC+podも、トヨタディーラーが展開するシェアリングで使用予定だ。
都市内移動でEVの効率が高いことは以前からいわれてきたことであり、電動化の流れを受けて、続々とニューモデルが登場している状況には納得できる。今後はシェアリングなど、使い方のバリエーションも増えていくことに期待したい。
森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら

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