精神疾患の親もつ子ども実態調査…小学生時9割が相談経験なし
2021年1月26日(火)11時15分 リセマム
国内の精神障がい者数は、厚生労働省の2017年(平成29年)患者調査によると419万人を超え増加傾向にあり、その親に育てられる子どもが心身ともに健康的に成長するためには、親だけでなく子どもへの支援も必要とされる。
調査は、大阪大学大学院医学系研究科の蔭山正子准教授、埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科の横山恵子教授、精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)メンバーによる研究グループが行った。「こどもぴあ」の会に参加したことのある240人を対象に、小・中・高校時代の体験、学校での相談状況、子どものころに認識した教師の反応、学校以外での援助など、インターネットを利用してアンケート形式で質問し、20歳代から50歳以上まで120人から回答を得た。
精神疾患をもつ親は、母親のみが多く67.5%だった。親の精神疾患推定発症年齢は、回答者が小学校に入るまでが73.1%だった。子どもが家族の世話をする「ヤングケアラー」としての役割は、小・中・高校時代に親の情緒的ケアがもっとも多く57.8〜61.5%が経験し、手伝い以上の家事は29.7〜32.1%が経験していた。小学生のころは62.4%が大人同士の喧嘩を、51.4%が親からの攻撃を経験していた。
周囲が問題に気づけると思うサインには、親が授業参観や保護者面談に来ない、いじめや忘れ物が多い、遅刻欠席が多い、学業の停滞があったなど。しかし、サインを出していなかった人は小・中・高校時代で43.2〜55.0%いた。回答者が認識した教師の反応では、精神疾患に関する偏見や差別的な言動、プライバシーへの配慮不足などで嫌な思いをしていた。家庭の事情や悩みを気にかけ、話を聞いてほしかったという意見が多かった。
学校への相談歴のなかった人は、小学生のころ91.7%、中学生のころ84.5%、高校生のころで78.6%だった。相談しなかった理由としては、「問題に気づかない」「発信することに抵抗がある」「相談する準備性がない」「相談環境が不十分」というものがあった。相談しやすかった人は、すべての時期で担任の先生がもっとも多かった。30歳代以下の人は、40歳代以上の人に比べて小学生や高校生のころに学校への相談歴がある人が有意に多かった。
考察として、子ども自身に自分の負担に気づいてもらうことや、支援を受けていいとわかってもらう働きかけが必要としている。話を聞いてもらうことを求める意見が多かったことから、大人だけで支援方針を決めてしまうのではなく、子どもと一緒に考えていくことが重要。また、ヤングケアラーとして、料理・掃除などの家事を子どもが担っている場合は、障害者向けの家事援助サービスを導入することで子どものケアラー役割を軽減することが可能である。地域では、支援が必要な子どもの早期発見から早期支援へと展開できるように、母子保健・児童福祉の関係機関と精神保健医療福祉の関係機関の連携体制を強化することが求められる。