想像力が恐怖や不安の克服に役立つ。実際にその恐怖に危険がないことをイメージするだけでも効果があるという研究

1月28日(月)9時30分 カラパイア

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 誰だって何かしら怖いものがあるだろう。クモが嫌いな人、狭い場所が苦手な人、高いところが嫌な人、死が怖い人など、恐怖の対象は様々だ。

 こうした”脅威”に遭遇したとき、心臓は鼓動を速め、手にはじっとり汗がにじむ。これは「脅威恐怖反応」といい、苦痛を味わう可能性を避ける手助けをするために生じている。
 
 ほとんどの人は、脅威があるときのみ恐怖心を抱くが、もし実際にそうした脅威がないのに脅威恐怖反応が生じるのなら、それは心的外傷後ストレス障害(PTSD)や恐怖症、不安神経症と診断される。

 目の前に脅威があるわけではないのに、不安から恐怖が発生してしまう、こうした症状の治療には「疑似体験療法」が使われるのだが、新しい研究によると、ただ想像してみるだけでも恐怖の克服に効果的なのだそうだ。

・刺激とその結果の関連性を忘れることで恐怖を克服

 恐怖に関連する障害を治療するときに使われる疑似体験療法では、”引き金”(脅威恐怖反応を引き起こす映像や音など)があっても危険な結果は生じないということを示して、両者間の連想を断ち、脅威恐怖反応を忘れさせる。

 たとえば、PTSDの兵士にヘッドホンで爆音を聞かせたりする。

 このとき、実際の戦闘ではないので、爆音が鳴っても危険は生じない。すると患者はやがて爆音とそこから想像される危険は関係がないということを学習し、脅威恐怖反応を示さなくなる。

 しかし、そうした疑似体験すら刺激が強すぎたりする場合には、この療法が不適当なことがある。

 こうしたケースで有効とされるのが、患者に”引き金"を想像してもらい、そこから危険が生じないことを学習する「誘導イメージ療法」である。

 嫌いな刺激を想像するこのやり方では、患者は自分のペースでそれに浸ることができる。これが新しい治療法として有望視される理由だ。

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istock

・想像はどのように働くのか?

 想像とは、現在は認知されていない物事の刺激を心で生じさせること。つまりは感覚情報や過去の経験から頭の中に作り上げたビジョンである。

 こうした心の中の表現は記憶としてきちんと残るし、将来や架空のシナリオを想像するために使うこともできる。

 想像をするとき、脳の視覚野や聴覚野のような目や耳からの情報を処理する領域、さらには海馬のような記憶検索領域が使われている。

 じつは、こうした脳のネットワークは、実際の認知や記憶がなされるときの脳ネットワークととてもよく似ている。


・想像による恐怖の克服

何か恐ろしいと感じるものに遭遇すると、神経的反応(記憶や感覚処理領域の活性化)と生理学的反応(発汗、心拍数の上昇など)の両方が生じる。

 先述したとおり、脅威について想像すると、実際に認知や記憶をするときとよく似たネットワークが活性化する。

 しかし、想像の場合は実際に差し迫った危険があるわけではないので、こうした想像を何度も繰り返すことで、嫌いな刺激とそこから予測される危険を切り離すことができる。

 すると刺激と予測された結果との連想を脳が行わなくなり、それに対する神経的・生理学的反応も治ってくる。

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pixabay

・想像による誘導イメージ療法の実験結果

 想像を駆使した誘導イメージ療法の効果を確かめるために、この研究チームは、66人の被験者に低音あるいは高音が鳴るのと同時に軽い電気ショックを与え、比較的無害な脅威に対する恐怖心を植え付けた。

 それから被験者を3グループに分けて、同じ音を電気ショックなしで聴かせる(従来の疑似体験療法)、電気ショックなしで同じ音を想像させる(誘導イメージ療法)、電気ショックなしで鳥のさえずりと雨音を聴かせる(対照群)のいずれかをグループに応じて行なった。

 その後、先ほどと同じ脅威を連想させる音を再度鳴らし、そのときの被験者の脳をfMRIで観察した。

 その結果、想像で誘導イメージ療法を行なったグループの脅威恐怖反応が和らいでいることが確認された。脳内の神経的反応も生理学的反応のどちらも緩和されていたのだ。

 その効果は、従来の疑似体験療法を施したグループのものと同じだった。

 一方、鳥のさえずりと雨音を聞いたグループでは、脅威恐怖反応に変化がなかった。

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pixabay

・想像力が心身に与えるパワー

 想像によって現実の出来事とまったく同じ影響が生じることを示した研究はこれだけではない。

 たとえば、想像によって幸福度を向上させたり、人とのつながりが強まって感じられるようにさせたり、赤の他人を信頼できるようさせた研究が報告されている。

 想像を利用した認知療法の可能性はかなり大きく思える。時間・資金・リスクのいずれの点でも費用対効果が高いためだ。

 こうした方法がさらに発展し、既存の認知療法に組み込まれると期待されるだろう。


・ただし医師の指導のもと、正しい方法でやること

 ただし、自己流でやることは慎むべきだ。想像を駆使した認知療法を行う際は、必ず医師や専門家の指導に従ってやらねばならない。

 虐待されたというあやふやな記憶が歪められ、偽の記憶になることがあるという証拠もあるのである。

・誰もが犯罪者に。記憶の書き換えにより犯していない罪を自分がやったと信じ込ませることは簡単であることが判明(国際研究) : カラパイア

References:How imagination can help people overcome fear and anxiety/ written by hiroching / edited by parumo

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