世界で一番高価なウイスキーは? ウイスキーのトリビア10選

2025年2月3日(月)17時19分 マイナビニュース


ここ数年、世界的なウイスキーブームが続いています。とりわけ日本産ウイスキーの人気はめざましく、高騰する価格と品薄状態がしばしば話題にのぼります。そんな中、ウイスキーに興味を持ち始めた人も多いでしょう。
でも、いざ意識して飲み始めてみると奥深い世界が待っていて、「どこから入ればいいか迷ってしまう」という声もよく耳にします。そこで本特集では、ウイスキーの基礎から、より深い知識まで、5回にわたって解説していきます。最終回の今回は、ウイスキーのトリビア10選を紹介します。友人と飲みながら披露すれば、盛り上がることうけあいです。
ウイスキーは、大麦やとうもろこしなどの穀物を原料とし、長い熟成期間を経て造られる蒸留酒です。スコットランドやアイルランドのイメージが強いですが、アメリカ、日本、カナダなど世界中で多彩なウイスキーが生産されています。そんなウイスキーには、歴史、製法、伝説など、面白いトリビアがたくさんあります。いくつか覚えておくとウイスキーがますます楽しくなりますよ。
(1)世界最古のウイスキー蒸留所
ウイスキーというとスコットランドが有名ですが、実は世界最古のウイスキー蒸留所として公認されているのは、北アイルランドにある「ブッシュミルズ蒸留所」です。ブッシュミルズ蒸留所は1608年に英国王のジェームズ1世が勅許を与えたという記録があり、400年以上の歴史を持つ老舗中の老舗です。
スコットランド最古の蒸留所は「グレンタレット蒸留所」と言われています。1775年創業ですが、1717年に製造していた記録が残っています。公認・非公認の観点や記録が曖昧な時代もあるため、どこが最古なのかという議論は絶えません。
ちなみに、ウイスキー造りの起源についても、アイルランドとスコットランドのどちらが先なのかについて、いまだに論争が続いています。どちらの説にも根拠があり、はっきりとした結論は出ていません。アイルランドの修道院が蒸留技術を発展させたという説や、スコットランドの修道院でも同様の技術があったという説など、歴史的な資料によって議論が行われています。
日本では、1923年に大阪府の山崎で創業したサントリー山崎蒸溜所が日本初の本格ウイスキー蒸溜所とされています。
(2)「Whisky」と「Whiskey」のつづりの話
ウイスキーには、「Whisky」と「Whiskey」という2種類の綴(つづ)りがあります。一般的に、スコットランド、日本、カナダで造られる場合は「Whisky」と表記され、アイルランドやアメリカでは「Whiskey」と書くことが多いです。19世紀にアイルランドの蒸留所が、スコッチウイスキーと差別化するために「e」を加えたと言われています。
ただし、アメリカの蒸留所でも「Whisky」と綴るところがあったり、イギリスでも「Whiskey」と書いているものがあったりと、厳密に分かれているわけではありません。歴史的経緯やブランドの伝統によって、綴りを選んでいるケースがほとんどです。
(3)アメリカのバーボンには新樽が必須
バーボンウイスキーはアメリカのケンタッキー州を代表するウイスキー。原料の51%以上がとうもろこしであることや、内側を焦がした新しいオーク樽を使って熟成させる必要があるなど、連邦規定で細かく定義されています。
この「新樽を使う」点がバーボンの大きな特徴です。実は、労働組合が政府にロビー活動を行い、法律が作られたのです。樽を使い捨てにすることで、樽職人の雇用を守る、というのが理由です。とはいえ、現在は樽を使い捨てにせず、一度使った樽はスコットランドや日本などに輸出され、他国のウイスキー熟成に使われています。
バーボンの産地は規定されていません。規定に沿っているなら、たとえばテネシー州で作っていてもバーボンとなります。有名どころでは「ジャックダニエル」はテネシーウイスキーですが、もちろんバーボンでもあるのです。たまに「ジャックダニエル」はバーボンではない——と耳にしますが、間違えないようにしましょう。
(4)アイラウイスキーの独特な香りの正体
スコットランドの西側にあるアイラ島で造られるウイスキー、通称アイラウイスキーは、ピート(泥炭)由来のスモーキーな香りが特徴です。麦芽を乾燥させるとき、アイラ島に豊富に存在するピートを燃料として焚き込むため、独特のヨード香やスモーキーさがウイスキーに移ります。この香りは好き嫌いが分かれますが、一度ハマると抜け出せないと言われるほどの魅力があります。
ピートは、植物が湿地などの酸性かつ低酸素な環境で不完全に分解されてできた有機物の堆積物です。おもにコケ類や草本植物、木本植物の残骸からなり、長い時間をかけて蓄積していきます。ピートは燃料として利用されるほか、園芸用の土壌改良材としても広く使われています。また、炭化が進むと石炭の一種である亜炭へと変化します。
(5)ウイスキーの「天使の分け前」「悪魔の分け前」って?
ウイスキーを樽で熟成させると、蒸発によって年々一定量が失われていきます。これを「エンジェルズシェア(天使の分け前)」と呼びます。貯蔵庫の環境や樽の種類によって蒸発量は異なりますが、一般的に年間で約2〜5%が失われるとされています。気温が高いとその分蒸発量が増えます。
この現象は、熟成中の樽内における風味変化にも影響を与え、ウイスキーに独特の深みを加える要因のひとつとなります。蒸発した分は天使たちへの捧げ物と考えられ、このロマンチックな呼び名が付けられました。
また、ウイスキーが樽材に吸い込まれることで樽内に残る量が減ることを「デビルズカット(悪魔の分け前)」と呼ぶこともあります。熟成中に樽の内側へと吸収されたウイスキーは、樽を空にした後も木材に残ります。近年、この「デビルズカット」を特殊な技術で抽出し、その水をウイスキーの度数調整に利用することで風味をより豊かにする製法が取り入れられています。この名称は、エンジェルシェアに対するユーモラスな対比として生まれました。
(6)1本8億円!? 世界で一番高価なウイスキーは?
世界で最も高価なウイスキーとして知られるのが、「Isabella's Islay」です。その価格は約620万ドル(約8〜9億円)とも言われ、装飾を施した豪華なデキャンタに5,000個以上のダイヤモンドと250個のルビーがあしらわれていることがおもな理由です。もちろん中身のウイスキーも非常に高品質なアイラのシングルモルトですが、芸術品としての価値が際立っています。
「The Macallan 1926」というウイスキーも、サザビーズのオークションで約4億円という高値が付き、話題を集めました。中身は60年物のマッカラン。オークションに出されたボトルとしては最高値となります。有名アーティストが手描きでラベルにデザインを加えているなど、希少性や芸術性が評価されています。
現代でも入手可能なウイスキーで特に高価なものとしては、「山崎55年」や「軽井沢48年」といったジャパニーズウイスキー、マッカランの長期熟成シリーズなどがランキングのトップ10を占めます。
(7)映画「地面師たち」では珠玉のウイスキーがたくさん登場した
ウイスキーは映画の中にも登場し、作品を彩ります。たとえば「スパイ・ゲーム」では、ロバート・レッドフォードが演じるCIA工作員がドイツのバーで「ザ・グレンリベット18年」を飲むシーンが印象的で記憶に残りました。
近未来SF映画の「ブレードランナー」では、「ジョニーウォーカー ブラックラベル」がたびたび登場します。主人公がダークな世界観の中でウイスキーを傾ける姿は、作品の雰囲気を一層引き立てています。
日本のドラマや映画でも、レアなウイスキーが注目を集めることがあります。ドラマ「地面師たち」では、「ブラックボウモア」や「ポートエレン」など、コレクター垂涎のウイスキーが登場します。いずれも既に入手困難になっているため、ファンとしては興味と羨望が尽きません。
(8)その昔、ウイスキー蒸留所のネズミを捕るために猫が飼われていた
ウイスキー蒸溜所では、穀物をネズミや鳥などから守るために、猫を飼っていた歴史があります。これらの猫は「ウイスキーキャット」や「ディスティラリーキャット」と呼ばれ、世界中の蒸溜所で活躍しました。
特に有名なのは、スコットランドのグレンタレット蒸溜所にいた「タウザー」という猫です。24年間で2万8,899匹のネズミを退治したという驚異的な記録を持っています。ウイスキー造りを陰から支える、かわいい名脇役と言える存在です。
(9)カナディアンウイスキーの品質が向上した理由
1920年代アメリカの禁酒法時代、多くのギャングがお酒の密造や密輸に手を染めたのは有名なエピソードです。その際、アメリカにカナディアンウイスキーが大量に密輸され、大きな需要が生まれました。ここで生産技術や品質管理が大きく向上し、現在の優れた味わいのカナディアンウイスキーにつながったのです。歴史の皮肉とも言える出来事ですが、これがカナディアンウイスキーのブランド力を高めるきっかけとなりました。
(10)熟成年数の表記はブレンドしている原酒の中で最も若い年数
ウイスキーのラベルには、「12年」「25年」などの熟成年数が表示されることがあります。実はこれ、ブレンドしている原酒の中で最も若いものの熟成年数を示しています。つまり「12年」と書かれていても、美味しくするために20年や30年熟成の原酒が含まれている場合があるのです。反対に、最も古い原酒を表記できるわけではありません。ウイスキーの年数表記は、最低熟成年数をラベルに記載するというルールがあるためです。
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ウイスキーには数えきれないほどの物語が詰まっています。生産地や製法はもちろん、歴史や文化、そこに関わる人々や猫までもが、ウイスキーの魅力を深めているのです。トリビアを知っておくと、関連するウイスキーをさらに楽しく飲めることうけあいです。
柳谷智宣 やなぎや とものり 1972年12月生まれ。1998年からITライターとして活動しており、ガジェットからエンタープライズ向けのプロダクトまで幅広い領域で執筆する。近年は、メタバース、AI領域を追いかけていたが、2022年末からは生成AIに夢中になっている。 他に、2018年からNPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動中。また、お酒が趣味で2012年に原価BARを共同創業。 この著者の記事一覧はこちら

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