スラムのギャングたちに10年間密着して撮れた“ホマンチコ”な瞬間とは!? 「クレイジージャーニー」写真家・伊藤大輔インタビュー!

2月3日(日)7時30分 tocana

『ROMÂNTICO(ホマンチコ)』(イースト・プレス)

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 ブラジル、リオデジャネイロのファベーラ(スラム街)に10年暮らし、住人たちと日常を共にしながら撮影を続けた写真家・伊藤大輔。人気番組『クレイジージャーニー』(TBS系)に出演した回では、ギャングに銃口を向けられながらもシャッターを切るそのスタイルが大反響を巻き起こした。2016年に帰国し、活動拠点を日本に戻した伊藤がこのたび、リオ生活の集大成となる写真集『ROMÂNTICO(ホマンチコ)』(イースト・プレス)を上梓した。「この写真集は自分の生き様」と語る話題の写真家が、満を持してトカナに登場だ!


■死が近い環境こそ「ホマンチコ」にあふれている

——そもそも、どうしてリオのファベーラという危険な地域をテーマに撮ろうと思ったのですか?

伊藤  やっぱり、自分にしかできないことをやろうと思って。最初はアマゾンの奥地に行けば、誰も撮ったことのない写真が撮れるかなと思ったけど、今はもうアマゾンだろうがアフリカの奥地だろうが、誰も行ってない場所なんてないんだよね。そんな中で、リオのスラム街のギャングは、まだ手つかずのところのような気がした。少しくらい撮られたことはあるだろうけど、警察側からアプローチするんじゃなくて、現地の言葉も覚えて、ギャングと友達になって撮れるとしたら、いい写真が撮れるんじゃないかと思って。

【その他の画像はコチラ→https://tocana.jp/2019/02/post_19556_entry.html】

——その行動力がスゴいですね。

伊藤  あと、スペインの写真学校に通っている時、女性の先生から「写真が撮りたいのなら、こんなクラスから出て行かなきゃダメだ」って言われて、そのスペイン語が妙にハッキリと聞き取れてずっと心に残っている。それが影響している部分も大きい。

——まさに伊藤さんの人生を変えた一言!

伊藤  それからバルセロナでまず感じたことだけど、外国から出稼ぎに来てる人たちって、いろんな環境と背景のなかでとんでもなく逞しく生きている。特に黒人は思考がピュアで、(生き方の)リズムもゆったりしていて、しかもフォトジェニックで格好いい。やっぱりオレは、彼らみたいにサバイバルしてる人たちに興味がある。なんとなく生きてる人より、死が近いところにいる人の方が強烈に生きてるというか、「ホマンチコ(=ロマンティック、劇的)」だよね。そんな思いもあってファベーラに引き寄せられたと思う。
スラムのギャングたちに10年間密着して撮れたホマンチコな瞬間とは!? 「クレイジージャーニー」写真家・伊藤大輔インタビュー!の画像3


■ファベーラの男たちの意外な一面

——ファベーラに住んでいる男性たちは、日本の男性とどう違いますか?

伊藤  みんな男性優位の古いマッチョな環境で生きてるんだけど、金や女性に対する欲求が素直。そこに向けるエネルギーがすごい。女の子とキスする前には、自分のタバコの匂いを気にしたりとか、そういうところは日本人よりちゃんと見えてたりする。

 時間にルーズな面はあるけど、そういうのって、たとえば何かの予定の直前に友達と会っていたらその友達との時間を大切にするから、やっぱり遅れちゃうんだよね。ファベーラの知り合いと一緒に海に行こうとしても、途中でいったい何人の友達に会って抱擁を交わすんだよって思うほどだから。

——ギャングの人たちが一番恐れているものは何でしょうか?

伊藤  母親とか、嫁さんとか(笑)。男尊女卑的な環境に生きているとはいえ、身近にいる肝が据わった女性にはやっぱり頭が上がらなかったりするんだよね。

 あとはまぁ、警察の特殊部隊かな。普通の警察官と違って、ドクロのマークつけて、最新鋭の銃を持って軍隊みたいにして来るのよ。恐がりつつ、リスペクトもしている印象だね。


■父親として、プロの写真家として

スラムのギャングたちに10年間密着して撮れたホマンチコな瞬間とは!? 「クレイジージャーニー」写真家・伊藤大輔インタビュー!の画像4
——危険な地域に移り住んで撮影をしたり、そこで子育てすることについて、奥様はどのように感じていたのですか?

伊藤  もともと妻もブラジルに住んでいたことがあったし、オレが無茶しないのは分かってるからね。「危険とか言ってないでもっと撮りにいきなさいよ」なんて冗談で発破をかけられたほど。「そんな簡単に言うなよ」って言い返してた(笑)。

 長女も向こうに行ってからすぐに生まれて、5歳までファベーラに住んでたから逞しくなったと思う。向こうではYouTubeも日本語じゃなくてポルトガル語の動画しか見せてなかった。2016年のオリンピックを挟んで治安が良くなってくる時期だったからちょうど良かったのかもしれない。今はまた治安が悪くなって……まあ、元に戻っただけなんだけど。

——いまは誰でもスマホで衝撃的なシーンを即座に高画質で撮影して、SNSなどで共有することができます。そういう時代に、写真家にはどのような違いが求められているのでしょうか?
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伊藤  スマホでもちゃんといい写真は撮れる。すぐにシャッターを押せるかという点でレスポンスが遅かったり、暗いところが弱かったりするけど、スマホで十分なシーンも多い。
いま日本でやってる新しいプロジェクトは、オレもスマホで撮ってるからね。

 ただ、機材云々ではなく、そもそもスラム街では最高にいいと思うシーンは撮影できないもの。被写体に間合いを詰めて撮らないといい写真は撮れないから、スラムでは危険すぎて。スラムを撮るのが「コスパ悪い」っていうのは、まさにそういう意味で。

 結局、その時その時で一番適した機材を使って、最大限の表現ができるかどうか。それがプロとしてのやり方なんだと思う。

——トカナ的な質問となりますが、伊藤さんはファベーラで理屈では説明できない不思議な経験などありましたか?

伊藤  オレはそっち方面はあんまり信じてないから、語る資格はないと思う(笑)。

——最後に、写真集を完成させた今の率直なお気持ちは?

伊藤  やっと成仏できましたって感じですね。ブラジルで過ごしたオレの10年を成仏させて、これでやっと次に行ける——と。いま日本で新しいプロジェクトを始めてるので、今年はそれに全力で打ち込みます。ようやくファベーラから離れて、日本をまっさらに見れるようになった気がするし、気合い入れてやりますよ。

——次の作品も楽しみにしています! ありがとうございました。
(取材・文=里中高志)


※『ROMÂNTICO(ホマンチコ)』(イースト・プレス)

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