パチンコに半生を捧げた男たちが語る“業界の真実”——システムエラーが生んだ珍奇な生き物

2月6日(木)11時0分 文春オンライン

 年間売上はおよそ20兆円。2020年現在も娯楽産業の頂点に君臨しているパチンコ産業だが、その実態はホール数・売り上げともに減少の一途をたどっており、閑古鳥が鳴くホールも少なくない。


 そんな娯楽産業の哀しき王様に、「そもそもパチンコとは何なのか?」という根源的な問いを投げかけ、メーカー、ホール、ファン、警察、さらにはカジノに依存症まで、業界を取り巻くありとあらゆる問題に斬り込んだ。


 パチンコを愛し、半生を捧げてきた著者が業界に正面から向き合い、愛し、苦悶する。その末に行き着いた境地から見たパチンコの真実の姿とは、一体どんなものだったのか。『 パチンコ滅亡論 』(扶桑社)から一部を抜粋し、転載する。


◆◆◆


正体をハッキリさせたら死ぬ「玉虫色産業」


大崎 パチンコって時代に沿って変わってきただけじゃなく、見る角度と方向によって形も変わる、色も変わる。何とも奇妙な存在じゃん。それぞれの立ち位置によるパチンコというものがあっていいと思うわけで。すなわち、正体がはっきり見えないことこそがパチンコの本質ではないかなとも思うんだよね。


ヤング ホントにそう。よくグレーといわれるけど、玉虫色というのが正解かもね。実体がないのがパチンコであり、はっきりとは定義できない、正体がわからないっていう、そのことがまさにパチンコのアイデンティティではないかとすら思うもん。で、もしそうだとすると、無理やり正体をはっきりさせたら死ぬぞ、っていうことだから、今まさにパチンコは死に瀕してて、それが故のパチンコ滅亡論ってことなのかもわからんけど。


大崎 で、そのことを踏まえた上で、あえていま一度パチンコとはなんだろう?って考えることが大事だよね。……そういう観点からのパチンコ論はほかに見たことないわけだけど。



煌々ときらめくパチンコ機の光 ©iStock.com


ヤング 「玉虫色のパチンコが自分には何色に見えるか?」を考えることで、自分にとってのパチンコって何なのかがはっきりするはずだから。というか、そういう視点がごっそり抜けたまま、ああでもない、こうでもないって言ってても、進まない話は多いんじゃないの? とも思う。


大崎 パチンコって、俯瞰してみると案外奥が深い娯楽だ、と思って打ってる人なんてほとんどいないわけよ。パチンコ業界自体も、儲かるぞ、金になるぞしか言わないし、結果としてアホしか集まってこない。で、そのアホの金がなくなったら潰れていく産業にしかなってないわけよ、現状を見る限りね。


ヤング 我々もアホの一翼ではあるわけだけど、少なくとも自覚はある(笑)。



幻影を売るビジネスにどう立ち向かうか


大崎 構造的に客に負けさせないと成り立たない商売だから、今まで客を騙すことでそれを成立させてきた。勝てますよ、という幻想をエサに。真面目ぶるつもりは毛頭ないけど、そんな商売どうなの?って考えちゃうんだよ。


ヤング でもまあ、水商売って概ねそうだからね。キャバクラも、もしかしたらヤレるかも?っていう幻想を売るビジネスなわけだし。パチンコもキャバクラも共に風営法(*1)の管轄による規制というのも、そういう意味なのかな……って思うもん。


*1 風営法

パチンコを含む風俗産業を取り締まる法律。84年に「風俗営業取締法」から「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に改正されたため、風適法と呼ぶ人もいる。この法律を管轄しているのは各都道府県の公安委員会、つまり警察。


大崎 でも、これから先も客を騙して金を巻き上げ続けるだけだったら、さすがに未来はないんじゃないとも思うわけで。ネットに溢れる情報を見れば、とっくに幻想が崩壊しているのは明らかだよね。


ヤング だからこそ我々はここ何年もずっと「納得して負けよう」と言い続けてるわけでね。幻想を追っても実りはないよ、って。


大崎 切り替えていかなきゃ、それこそアホになっちゃうもんな。業界にとっての「いい客」であることが、実は打ち手にとっても幸せな落としどころかもしれないという、かつてなかった発想の転換を提唱しているわけで。


ヤング 大崎さんも、ヤレないってわかってるのに銀座に通い続けてるもんな。客の鏡(笑)。


大崎 やかましいわ。勝たなきゃ意味ないじゃんっていう気持ちもわかるんだけど、でも、勝たなくてもおもしろいですよっていう知見も提供したいわけで……いやこれ、キャバクラで学んだんですけど(笑)。


合法でも違法でもない……根幹を成す「二大グレーゾーン」



大崎 そもそもパチンコの正体が見えないものになってしまった最大の理由って「換金(*2)」と「釘調整(*3)」という、業としてのパチンコに欠かせない根幹の部分、この2つがグレーであるってことが原因なわけじゃん。セーフなのかアウトなのか、はっきりわからんもんが二大看板なんだから、そりゃ正体がはっきりするわけがなかろうって話だから。


*2 換金

しちゃダメだけどできるもの。日本の法律では公営ギャンブル以外の賭博は禁止されており、パチンコ屋で交換できるのはあくまでも賞品だけ。一般的な打ち手としては景品という言葉になじみがあるだろうが、法律上は一般景品も特殊景品も賞品という位置づけ

*3 釘調整

しちゃダメだけどされているもの。法律上では釘を曲げたらダメとなっているが、問題なのは長期間ある程度の釘調整は黙認されていたという事実。なんで昔はOKだったのに、ある時点からダメになったのか。この本を読み進めたら答えが載っている……かも


ヤング 建前上は釘調整ダメってなってるけど、現実は日本中のパチンコ屋が毎晩、釘調整を行ってる。いやいや、メンテナンスは認められている(*4)とは言うけど、じゃあ今でも当たり前に発生する釘曲げの摘発事例(*5)は何なのってね。


*4 メンテナンスは認められている

釘調整の新しい呼び方。釘調整は建前上禁止となっているが、それと同時に店のパチンコ台は検定通過時の状態を維持しなければならないという決まりもあるため「客がパチンコを打つ→大量のパチンコ玉が釘に当たる→釘が元の状態から変化→元に戻さないと規則違反になるんですよね→メンテナンスします!」というロジックが生まれる

*5 釘曲げの摘発事例

メンテナンスは全国で日夜行われているので、警察側が本気になればいつでも摘発可能。ただし、本気になる理由やタイミングが場所によってバラバラなため困っているらしいですよ、主にパチンコ屋さんが



大崎 換金も一応は違法性を阻却したスキーム(*6)が組み上げられていて、「お客さんの自由意思に基づき、近所に特殊景品を買い取ってくれる店がたまたまあった」ので、そこで買い取ってもらうという体でやってる。


*6 換金も一応は違法性を阻却したスキーム

パチンコはもともと、出玉を賞品に交換する娯楽の一種だったのだが、いつの間にかその賞品を買い取る人間が現れ(※主に暴力団)、暴力団の資金源になることを防ぐために三店方式という換金スキームが認められていったという経緯がある



ヤング なんでかわからんけど、必ず景品交換所があるもんな(笑)。


大崎 敷地内に当たり前にな(笑)。30年打っててもツッコミたくなるご都合主義だけど、でもこれが形式上はキッチリ合法なわけ。一般社会の通念からしたら……そりゃ胡散臭い商売に見えるよね。


ヤング 出た玉がお金に換えられるっていうのが最大の売りのはずなのに、そのことは絶対に声を大にして言えない。一番のセールスポイントが謳えないって、そんな商売、ほかにないよね。だからおもしろいんだけどパチンコって(笑)。


大崎 売り上げも何千億円ってどんどん巨大化していったパチンコ屋や大手メーカー(*7)があるにもかかわらず、その原資となってるものはやったらダメな釘調整。客は禁じられているはずの換金を目当てに集まる。こんな業界あります? ここをツッコまれると、モゴモゴ……とならざるを得ない状況のまま、今もやっているわけで。ええかげん何とかせんといかんでしょ、って感覚はないのかと思っちゃうよね。苦しくないですかって。


*7 巨大化していったパチンコ屋や大手メーカー

フォーブスジャパン社が毎年発表している「日本の長者番付TOP50」の19年版にランクインした業界関係者はSANKYO(10位)、マルハン(17位)、ユニバーサルエンターテイメント(21位)、三洋物産(38位)、平和(43位)、セガサミーHD(50位)の代表者たちだった


ヤング そこに関しては見て見ぬふり感がすごいよね。業界インサイダーになればなるほど口をつぐむっていう。


大崎 でもね、もう認めましょうよと。でないと収まりつかないんちゃうかって、打つ側でも心配になっちゃう状況でしょ? 業法制定(*8)を目指した上で、パチンコというものを定義し直して。遊技(*9)と娯楽とギャンブルの間にあるものだから、その中間の収めどころを探る。日の当たる産業として存続していくには、そういう、ちゃんとした方向しかないのかもと思ってしまう。


*8 業法制定

キャバクラやホストやガールズバー、雀荘やゲームセンターと風営法のなかで一括りにして管理するから無理があるのであって、パチンコは別のものとして独立した法律を作ればいいという考え方をする人も業界内にはいる

*9 遊技

風営法の観点では技術介入性があるものが「遊技」であり、サイコロやすごろくのような運だけで勝負が決まるものが「遊戯」となる。読み方は一緒でも漢字の違いで意味が大きく異なるので注意。ちなみに、パチンコという遊技で技能を競った結果(出玉)に対して提供されたものは景品ではなく賞品となる


ヤング それは一部の業界人の悲願でもあるよね。現状のパチンコは、既存の物差しでは定義できない存在なわけだから。でもハッキリさせたら死ぬ……少なくとも我々の愛する玉虫色のパチンコではなくなる覚悟が必要だけど。


日本的なソリューションがパチンコを生んだ



大崎 そんなよくワカンナイ存在のパチンコが、なぜ日本でこんなに流行したのか? きみはどう思ってるわけ?


ヤング まずもってバクチは好きだよね、みんな。


大崎 バクチは世界共通で一般庶民の娯楽だからね。しかも小バクチ。


ヤング 食うとか寝るとかの生命維持以外の欲望でいうと、楽して儲けたい、女を買いたい、あと個人的な考えだけど戦争したい、っていうのが三大欲望だと思うのね。戦争したいは意見が分かれるかもだけど、でも有史以来戦争が完全に途絶えたことはないわけで、認めたくはないけど、人間はどっかで戦争したいっていう欲望があるに違いないと思ってるんだけど。で、その3つの欲望を社会が大っぴらに認めてしまうと、社会がとんでもなく混乱するから、道徳や宗教、あともちろん法律で禁じたり、条件を狭めて一部認めたりしてるんだけど、そのやり方に民族性とかお国柄が表れるんじゃないかと。



日本特有のガラパゴス的進化


大崎 欧米では非常に現実的な対応をしている国(*10)が多いよね。ギャンブルにしても売春にしても、あとドラッグの扱いもそうか。


*10 現実的な対応をしている国

カジノや売春、大麻などを含め、やみくもに禁止するよりも認めた上で管理したほうが社会的なコストが低いという考え方をする国も多い。税収が増える上にアングラビジネスも減って暴力団の資金源を減少できるという考え方はその一例


ヤング だよね。でもさっきも言ったように、日本ではなぜか、本音と建前をうまく使い分けて延々と先送りするやり方がしっくりくるというか……。若い頃にはわかんなかったけど、自分がオッサンになってようやく、これは一時のごまかしではなく、ある意味、立派な知恵なんじゃないかと思うようになったんだよ。だってグレーゾーンを突き詰めて完全に真っ白にしようとしたら、ろくなことにならんぞっていうことは、今の時代がまさに証明しているようなものじゃない。だとしたら、わかった上で薄目をあけて見て見ぬふりをするって、実は高度な解決法なんじゃないかなって。


大崎 パチンコも、遊技という建前とギャンブルである本音、この間で独自の進化を遂げたよね。まさに「パチンコ」としか表現できないものに。



ヤング そうそう。これぞガラパゴス的な進化。ある集団があるとすると、一定数、それもかなりの割合でバクチをしたい人がいるのは、全人類、しかもいつの時代でも共通の話だと思うのね。一種の娯楽としてのバクチなんだけど、それを大っぴらに認めてしまうとすごく混乱が生じるから、社会生活を運営する上で賭博は禁止しますと。で、日本の場合は、正式にカジノを立ち上げる前に、もっと言えば風営法以前からパチンコが独自の進化を遂げ、それがおそろしく普及してしまった。「さてどうすんの?」っていうことなんじゃないかな。もちろんそれを支える大衆の欲望があっての話だけど。



大崎 先送り、及び都合の悪いことは見て見ぬふり。その隙間でパチンコは体裁だけは遊技として、水面下では賭博性を上げるように、もっとお客さんが熱狂するように進化させていった。そうして今のわけのわからないものが出来上がったってことだよね。


ヤング 引き裂かれた状態が独自の進化を遂げさせた。ダブルバインドの産物っていうかね。「バクチはダメ。遊技でーす♪」って言いながら、どうやって射幸性を上げていくかっていうのが一大テーマでずっとやってきたわけだから。ある意味ヘルスのマットプレイと似たようなものなのかも(笑)。


システムエラーが生んだ珍奇な生き物


大崎 制約のあるなかでいかに詰め込んで細かいことをやるか、みたいな。そっち側の探求って、メイド・イン・ジャパンの工業製品に通じるものもある。


ヤング 大崎さんがよく言ってる「箱庭文化(*11)」だよね。盆栽もそうだし、あと俳句とも共通するマインドがあるかも。五七五という制約のなかでどれだけ宇宙を表現できるか、みたいな。また話を広げすぎと言われそうだけど、あながち的外れでもないと思うんだよね。


*11 箱庭文化

ジオラマや盆栽など、小さな空間に現実世界を模擬的に表現したもの。たしかに日本人は国土の狭さもあってか、コンパクトにパッケージするのが大得意。江戸後半から明治時代に流行った箱庭(当時のジオラマ)とパチンコを結びつけるあたりが面白い。でも、たしかに納得できる!



大崎 そもそもパチンコってめちゃくちゃなパーツが何となく同じ方向を向いて、めちゃくちゃなまま合体したキメラみたいなものだから。無理やりいろんなものを合わせこんで一つのパッケージとしてまとめるという、ある意味「総合芸術」と言っても大げさではないわけで。


ヤング 激アツリーチの後、盤面がバッシャーンってなって、こんなスゲー役モノ(*12)、どこにしまってあった?って(笑)。あれ合体ロボだよね。


*12 こんなスゲー役モノ

入賞口などの出玉を得る起点となる法律用語としての「役物」、ハネモノなど大当たりに直結する部分の「仕掛け」、その他演出を補うための「装置」のことを総称して役モノと呼ぶが、一般的にはハネモノなどの仕掛けのことを役モノと呼ぶことが多い。なお、本文中では装置としての役モノのことを指しており、この装置のことは「ギミック」とも呼ばれる


大崎 で、有名アニメで有名声優さん使って、トップアイドルも出てくる。


ヤング あとブルブル振動して、今や風も出てくるのが当たり前(*13)(笑)。


*13 風も出てくるのが当たり前

映画館のIMAXや4Dのように、もはや香りを発しても驚かない。数年後にはVRタイプのパチンコが出てきて体験型世界旅行パチンコとか出てくるかも……。そうなると、タイアップは世界ふしぎ発見かな?



大崎 でも、やってることは数字が揃うか揃わんか、玉が出るか出ないかってだけ(笑)。摩訶不思議だよね。こんなものが一大産業として、売り上げが20兆円(*14)もあって、娯楽産業の中心に座ってるわけ。世界に誇っていいと思うんだよ。バカバカしいけどスゴいだろ? って。


*14 売り上げが20兆円

日本のレジャーに関する代表的統計であるレジャー白書によれば、パチンコ業界の売上は05年の34兆8000億円をピークに年々減少し、現在は20兆円を割っている。またカジノなどはプレイヤーが投じた金額から獲得した金額を差し引いたものを売上とするのだが、パチンコにおける売上とは貸玉料金のみで換金した金額を差し引いていない。だからこの数字を根拠にカジノ業界とパチンコ業界の規模を比較するのはナンセンス


ヤング ジス・イズ・クールジャパン!


大崎 庶民文化の結晶ですよ。なのにそれが悪いモノとして、世間からはつまはじきになってる。それがまた不思議というかオモシロというか。パチンコってつくづく鬼っ子なんだよね。


ヤング なんていうかさ、どんな国でも完璧な社会やシステムってあり得ないわけじゃない? で、パチンコって日本という社会のなかで、制度のほころび、システムエラーによって偶然生まれちゃった珍奇な生き物のような気がするのね。それが大衆の欲望をエネルギーにして巨大化して長生きもしてきたんだけど、グロテスクな生き物だから毛嫌いする人も多くて。なんか放射能が生んだゴジラみたいだけど(笑)。で、そういう視点で見たら、パチンコっていじらしいし、本当に面白いと思うんだけど。


なぜパチンコは日本にしかないのか


大崎 その存在そのものの面白さがなかなか理解されない。オレは雑誌作りに関わっていくうちに、パチンコ産業全体の成り立ちであったり、その周辺のいろんなことのほうが面白いかもって視野が広がって。パチンコの置かれている状況を考察していくうちに、日本にしかないパチンコ(*15)って何者なんだろう?ってことに思いを馳せるようになったんだよね。


*15 日本にしかないパチンコ

現在はグアムや台湾にもパチンコ台は存在するが、そこで使われているのは日本で作られたパチンコ台


ヤング 実はパチンコの何たるかをどんどん突き詰めていくと、最終的には日本を日本たらしめてる「何か」の正体もわかるんじゃないか? みたいなことも夢想してるんだけど。


大崎 そこをもっとうまく伝えることができれば、パチンコ産業というのは認知されるだろうし、ある意味、とても日本的な侘び寂びを含んだ愛すべき存在だなって理解が得られると思うんだけど。そういうニュアンスをパチンコ業界側はまったく出してこないもんな。


ヤング そこの面に関しては、自覚すらしてないんじゃないって気がするわ。



パチンコ屋はちゃんとしたらダメ!「ザル」だからこそ儲かる摩訶不思議な世界 へ続く



(大崎 一万発,ヒロシ・ヤング)

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