介護を休むことに抵抗がある…ケアする人が楽になる行動療法。「人が休めている」とはどういう状態なのか?

2025年2月6日(木)10時30分 婦人公論.jp


イメージ(写真提供◎Photo AC)

身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?
病気やケガで通院した後の在宅医療の支援であれば、病院の「医療連携室」などの窓口へ。認知症で要介護認定されれば「地域包括支援センター」へ。……基本的には主治医からの紹介先や案内があれば、そちらに向かえばいいわけです。
ただ複数の窓口に混乱したり、そもそも主治医からの紹介先が遠かったり……複数の病状に悩むケースもあるでしょう。
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。
その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア・ハートフル訪問看護ステーション中目黒」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている読者の方への駆け込み寺:【おとなの相談室】の先生として答えてもらうのがこの連載です。
専門の「在宅看護」を主軸に、切っても切り離せないメンタルケアを含めて、質問していきます。第7回目は、「介護を休むことに抵抗があるとき」についてです。
(構成◎野辺五月)

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前回「介護や看護に困ったら【おとなの相談室】6」はこちら

大切なのは「介護する側」の健康


Q:認知症の同居家族です。父の介護をしていますが、休むことに抵抗があって、なかなか自分の時間が取れません。休んでも大丈夫なのでしょうか。

A:認知症の場合は、特に、本人を変えることはできません。

認知症の人が徘徊したり、漏らしたりすることをどうにかすることは難しいです。
そういうときには、むしろ周りがどうやって声をかけるか、見ていくことの方が重要になっていきます。そこで大切なのは「介護する側」の心と身体の健康です。

介護は長期戦なので、する側が倒れないようにしなくてはなりません。
むしろ「どうやって楽に状況を捉えられるか」を優先する必要があります。
介護する側が、自分の体と心をどうコントロールするのか?それには、【練習】が必要です。

例えば私の訪問看護ステーションでは、介護する側に「ご自分の体と心をトレーニングできるように」お手伝いをしていますが、これは、基本的に他所でも同じだと思います。

介護者への看護師の動きで重要なのは「楽しい時間」や「休みの時間」を確保できるようにお手伝いすることです。介護でべったりと(相手に)張り付いていることが多いので、少しでも負担を削るべく、気分転換に外出を勧めます。

「休む為の練習」が必要


お買い物・散髪などのちょっとした休憩から、コンサートの観覧、映画を見に行く、日帰り温泉……全て咎めません。長い介護への英気を養うために必要なことなのです。

このように介護に関係する看護師は、介護をするお身内の方の健康を重要視しますが、それは身体だけではなく、心の状態についても同様です。
特に、専門が精神科領域の看護師がいる場合、対話の中で、その心のトレーニングができるように鍛えられているため、「対話スキル」も用いて、何とか「休む為の練習」をしてもらうことも少なくありません。

もしも貴方が既に「休めない」状況に焦っているのであれば、あるいは「何だか解決策が見いだせない」状態だと感じるのであれば、介護する相手の前に自分が倒れないように、一旦休止することが必要です。まずは介護関連の看護師や医者に対して頼ってもいいですし、「心療内科」「精神科」など専門家を頼ってもかまいません。そこから始めましょう。

「休むってどういうこと?」「何をしていいのか分からない」と言う方に向けて、具体的に、必要な「休むための練習(トレーニング)」を見ていきましょう。
まず罪悪感を捨ててもらう必要があるのですが、この意識を変えるにも、何が自分にとって休みになるのかを振り返っていきましょう。

抱え込まない体制を作る


一般的に「人が休めている」とはどういう状態なのか?
箇条書きにしてみます。

●貴方が楽しいことを続けていくこと(ゲームでもカラオケでも読書でも何でもOK)
●自分の時間を確保すること(看護師や施設に預けていいのです)
→介護から完全に離れる時間が大切です。
一日の中で「〇時から〇時は自分のための時間」と決めてしまうといいです。
●誰かと比較しないこと


イメージ(写真提供◎Photo AC)

これが休みについてです。
それ以外で「意識」したいこともあります。

●100%で動かないこと
……訪問看護の施設や、介護の疲れ具合を理解してくれる人を探し、頼りましょう。一人だと思った段階で精神的にきつくなっている可能性があります。ストレスゼロとはいきませんが、倒れないためにも、医療の側と協力体制を築く必要があります。

気力もですが体力も、余力がないと何かの折に大変なので【抱え込まない体制】を作りましょう。

気持ちを整えて「休み方」を学ぶ


そして一番意識したいのは、「自分が楽しめる・心地よくできるものを増やすこと」。
これを「健康行動を増やす」といいます。

介護する側が元気になり、楽しくいることでしか、改善はしません。
趣味があればそれで構いませんし、ちょっとした好きなモノ・見るとなごむもの・いると落ち着くところ……どんなに小さいことでもいいのです。いろいろな「楽」を自分自身見つけていきましょう。


イメージ(写真提供◎Photo AC)

「いかに元気でいるか」「いかに楽ができるか」に焦点を当てましょう。
それこそが、「長距離走」である介護の必須条件だと、思い直して下さい。
休みになるな、楽しいなを思い出すことから、まず気持ちを整え、「休み方」を学びましょう。

専門家の手を借りながら、「認知を変えていく」「休むことが仕事」であると心得ていく……それでもどうしても「休めない」と感じてしまう場合は、一旦、1日や数時間でもいいので施設に預けて、専門家に頼る段階です。近場で構いませんので、看護師や医者、ケアワーカーさん、地域包括支援センターにご相談下さい。

これで答えになっているといいのですが……どうかご自愛ください。

婦人公論.jp

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