一括投資のメリットとデメリット、積立投資との違いは? 新NISAで一括投資するには

2025年2月7日(金)8時0分 マイナビニュース


投資には、まとまった金額を一括で購入する「一括投資」と、定期的に一定額を購入する「積立投資」があります。どちらが優れているということはありませんが、資産や収入などの状況によって適した投資方法は異なります。
そこで今回は、一括投資と積立投資の違いやメリット・デメリット、それぞれに向いている人を解説します。ご自身に合う投資方法を見つけ、資産運用を行ううえでの参考にしてください。
■一括投資とは? メリット・デメリットは
一括投資とは、一度にまとまった金額を金融商品に投資する方法で、一度購入してしまえばあとは好きなタイミングで売却するだけというシンプルさが魅力です。一括投資には、次のようなメリットとデメリットがあります。
<メリット>
1.手数料を抑えられる可能性がある
金融機関によっては、投資金額次第で「大口優遇」が適用され、手数料を節約できる可能性があります。また、取引するたびに手数料がかかる料金体系の金融機関で投資している場合は、一括投資にすることで手数料負担が抑えられます。
2.購入後に値上がりすればリターンが大きい
一括投資で購入した後に大きく値上がりした場合、多くの値上がり益(キャピタルゲイン)を得ることができます。たとえば、2024年の米国S&P500指数は右肩上がりだったため、これに連動する「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」などのインデックスファンドを年初に一括投資していたとすると、+40%近いリターンが得られたことになります。
また、世界最大級の資産運用会社「Vanguard」によると、1976年〜2022年にかけて、一括投資は積立投資に比べて約68%の確率で高い年間リターンを得ているというデータもあります。これは、市場が上昇傾向にある場合、より早く投資資金を市場に投じたほうがリターンを大きくできるためです。
そのため、株価の上昇局面においては、利益だけを考えると一括投資のほうが積立投資よりも優位性があることになります。また、ポートフォリオ(金融商品の内容や組み合わせのこと)に占める株式の比率が高いほど一括投資で得られる利益は大きくなります。
3.投信保有ポイントが早くから多く貯まる
「投信保有ポイント」とは、投資信託の平均保有残高に対して毎月付与されるもので、主要ネット証券では松井証券、SBI証券、auカブコム証券、マネックス証券においてサービスが提供されています(楽天証券の「投信残高ポイントプログラム」は、楽天・プラスシリーズの6銘柄のみ)。
投信保有ポイントは、投資信託の保有残高に対して付与される仕組みですので、一括投資で購入したほうが初月からポイントを多く受け取れます。
<デメリット>
1.まとまった資金が必要
積立投資は、多くの金融機関で100円や1000円といった少額から可能ですが、一括投資はまとまった資金が必要です。
たとえば、新NISAの年間の非課税投資枠は360万円で、そのうちスポット購入(一括購入)が可能な成長投資枠の年間の非課税投資枠は240万円です。一括投資を考えるなら、一般的には資金にかなり余裕がないと難しいでしょう。
なお、投資は基本的に、生活費や将来使う予定のある資金以外の余裕資金で行うものです。一括投資の場合も、「万が一この資金がなくなっても生活できる」と言える範囲で行いましょう。
2.購入後に値下がりすると含み損が発生する
一括投資して購入後に値上がりすれば大きなリターンが得られる一方、値下がりすると、含み損を抱えてしまいます。2024年8月上旬には世界的な株価急落が起こりましたが、暴落前に一括投資してしまうと含み損の額も大きくなります。
含み損を抱えても、しばらく保有しているうちに相場が回復して含み益に転じることもありますが、それまでの期間、大きなストレスや不安を抱えながら過ごす可能性もあります。
3.銘柄選びや売買タイミングの見極めが必要
一括投資では、銘柄選びや売買タイミングが投資の結果に大きく影響します。狙った銘柄を安い時に一括購入し、値上がりしたところで売却できれば短期間で大きなリターンが得られますが、反対に、売買タイミングを誤ると大きな損失を被ってしまうのが一括投資の怖いところです。
そのため、一括投資を行うならさまざまな視点から分析を行い、勝てる可能性の高い取引に限定して投資する必要があります。また、自分が納得できる取引の根拠を決め、利益確定や損切りの基準を設けておくことも大切です。
4.クレカ積立ができない
「クレカ積立」とは、投資信託の積立額をクレジットカードで決済する方法で、積立額に対してそのカード会社が発行するポイントが付与されます。しかし、クレカ積立の上限は月10万円となっているため、たとえば、新NISAで240万円を一括投資する場合は利用できませんし、ポイントも受け取れません。
ちなみに、クレカ積立を実施している主要ネット証券は、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券です(松井証券では2025年5月からスタート)。
これらのメリット、デメリットを考慮すると、一括投資に向いているのは以下のような人です。
・まとまった資金がある人
・短期間で大きな利益を目指したい人
・リスクを受け入れながら運用したい人
■積立投資とは? メリット・デメリットは
積立投資とは、「毎月・毎週・毎日」などあらかじめ決めたタイミングで同じ金額(もしくは、同じ株数)を買い付ける方法です。積立投資は、一度設定してしまえばあとは自動で買付が行われるため、時間や手間をかけずに投資できるという魅力があります。また、積立投資には次のようなメリットとデメリットがあります。
<メリット>
1.少額から始められる
一括投資ではまとまった資金が必要ですが、積立投資なら、金融機関によっては月100円から積立可能です。無理のない金額、心理的に負担のかからない金額から始められるため、初心者でも取り組みやすいでしょう。慣れてきたら、積立額を増やすこともできます。
2.ドルコスト平均法により購入価格が平準化される
投資信託の積立投資では、毎月一定額を買い付けますので、価格が安いときには多くの口数を、価格が高い時には少ない口数を購入します。この買い方を「ドルコスト平均法」といい、購入価格を平準化し、結果的にコストを抑える効果が期待できます。
また、積立投資はリターンを得るまでには長い時間がかかりますが、その分リスクを抑えられるため、安定的な運用を目指したい時には有効な投資方法といえます。
3.クレカ積立のポイントが還元される
クレカ積立のサービスを提供している証券会社を利用すれば、毎月の積立額に対してポイントがもらえます。ポイントはあくまでもおまけですが、投資を長く続けるモチベーションの一つになるのではないでしょうか。
<デメリット>
1.短期間で大きなリターンを得るのは難しい
一括投資の場合、購入後に価格が大きく上昇すると、短期間に大きなリターンが得られます。一方、積立投資は時間を分散して買い付けることから、上昇局面に入ってもそもそも保有量が少なく、一括投資と比べると値上がりの恩恵を受けにくくなります。
また、積立投資は上昇局面では少しの量しか買えません。積立投資の場合、安定的な運用ができる一方、リターンを得るまでには時間がかかることを理解しましょう。
2.資金が長期間引き出せない
一括投資では、購入後に大きく値上がりすれば、売却して短期間のうちに利益を確定することができます。しかし、積立投資にはそれが難しく、基本的には長期投資を前提にした運用を行います。それにともない、資金を長い間引き出すことができません。積立投資をするなら、投資の目的や売却の時期を決めて計画的に行うようにしましょう。
3.中長期で値上がりが見込め、手数料の安い銘柄を選ぶ必要がある
積立投資においても、銘柄選びは重要です。特に、運用期間が長いことを考慮し、中長期で値上がりの見込める銘柄を選ぶ必要があるでしょう。また、購入の回数が多いことから、手数料の安い銘柄の選定も欠かせないポイントです。
これらのメリット、デメリットを考慮すると、積立投資に向いているのは以下のような人です。
・長い時間をかけて安定的に運用したい人
・一度にまとまった金額を投資するのが難しい人
・心理的な負担をかけず少額から投資を始めたい人
■新NISAで一括投資する方法
昨年2024年1月からスタートした新NISA。この非課税投資枠を利用し、投資を始めたいという人もいるでしょう。最後に、新NISAで一括投資をする方法について解説します。
新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの枠があり、それぞれの非課税投資枠は成長投資枠で年間240万円、つみたて投資枠で年間120万円ですので、合計で年間360万円まで非課税で投資ができます。
成長投資枠はスポット購入が可能な一方、つみたて投資枠は名前の通り、原則として月10万円を上限とした積立投資しか認められていません。そのため、「新NISAで一括投資をするなら、成長投資枠の240万円+つみたて投資枠の10万円=250万円が限度? 」と思うかもしれませんが、新NISAでは、指定した月のつみたて投資枠の積立額を増額できる「ボーナス設定」が利用できます。
ボーナス設定を1月に利用した場合、1月に119万8,800円、2〜12月に毎月100円(年間1,200円)の組み合わせで、つみたて投資枠の年間の非課税枠を使い切れます。これなら、成長投資枠とあわせて年間の非課税投資枠360万円のほとんどを一括投資できます。
なお、ボーナス設定はもともと、勤め先のボーナス支給月に積立額を増額する、新NISAを1年の途中で始めた場合につみたて投資枠の年間投資枠をなるべく埋めたい、などのケースで利用するものです。また、一括投資をする場合は、売買タイミングや銘柄等をよく見極めてから行うようにしましょう。
■自分に合う投資方法で運用を始めよう
今回は、一括投資と積立投資の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて解説しました。一括投資と積立投資は投資のタイミングや金額、運用する期間などが大きく異なるため、自分に合う方法はどちらなのかよく考えたうえで選びましょう。
初心者の場合、まずは少額で積立投資にチャレンジすることをおすすめします。そのうえで、知識が身に付いてきたら、一括投資を検討してみるといいでしょう。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら

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