【密着3カ月】営業を一切しない “YouTuber系ネオ不動産屋” はどう利益を上げているのか? 契約までいってみた結果 → 目のつけどころが異次元だった

2025年2月7日(金)12時0分 ロケットニュース24

私が引越しを苦手な理由は、ひとえに「不動産屋が契約を急かしてくるから」。もちろん優柔不断な私にも問題はあるが、住む家って、そんな簡単に決められないじゃん……? 約5年ぶりに引越しの必要に迫られた私は、不動産屋と関わりたくなさすぎて心を病んでいた。

「いっそ実家へ帰ろうか」そう思い始めたころ、“契約を一切急かさない不動産屋がいる”との情報を掴んだので、試しにコンタクトを取ることに。結果からお伝えすると、 “契約を一切急かさない不動産屋” は確かに実在していた。

実在していたのだが……「契約を急かさない」以外のインパクトが強すぎて、契約を急かさないことは最終的にあんま関係なくなっていった。部屋探しの概念を覆すネオ不動産屋。私の願望にはすごくマッチしていたんだけど、みんなはどう思う?

・ポイント①店舗へ行く必要がない
なお先ほど「契約を急かしてくる不動産屋が苦手」とお伝えしたが、先方も商売なので、客1人の部屋探しにいつまでも付き合っていられない気持ちもよく分かります、念のため。でも、こちらとしては人生に関わる問題なワケで……ムズイよね!

さて。ここから私が実際に部屋を契約するまでの約3カ月を、時系列に沿って(なるべく手短に)お伝えしてゆく。今回私がお世話になった『OTOGI不動産』は、店舗を持たないスタイルの不動産屋。顧客の約6〜7割がリピートor紹介なのだという。

OTOGI不動産の社長かつ、今回私を担当してくださった大川 遊(おおかわ あそぶ)さんは不動産YouTuberとしてかなり名の知られた存在(チャンネル登録者数2万人以上)。芸能人の顧客も多く抱える、超やり手らしいことがのちに判明した。マジか……緊張という名のストレスに押しつぶされそう。

OTOGI不動産へコンタクトを取るには、まずお店のHPの応募フォームに希望の条件などを書いて送信する。そして数日後……

近所のカフェに来てくれた大川さんと私は、実にスムーズに初対面を果たしたのだった。スムーズすぎて怖い。

(※ 通常は電話で初回ヒアリングが行われます)

・ポイント②ワガママ全部聞いてくれる
今回の部屋探しに際して、私の提出した条件は以下のとおり。

・新宿までチャリで行ける世田谷か渋谷
・30平米以上のマンション
・家賃12〜15万円くらい
・風呂・トイレ別


……そう大川さんに伝えたところ、「もっとワガママを言ってくれたほうがお互いにラクです」と言われてしまった。この条件では物件数が多すぎて絞るに絞れないのだそう。言われてみればそうかも。

自分にとっての「100%理想の部屋」とはどんな部屋か? また、妥協できるポイントはどこか? 可能な限り具体的に想像しておくことが、物件探しをスムーズに進めるカギとなるようだ。そんなアドバイスを受け、私が追加でひねり出した条件は以下。

・駐輪場・ベランダ・ウォシュレット必須
・駅徒歩5分以内
・広めの1Rもしくは1DK


数日後……大川さんから送られてきた該当物件は54軒。多っ!!

しかしながら多すぎる物件を精査する中で “自分の中に潜む新たなNG項目” を発見することになったので、この工程も無駄ではなかったのだと思う。新たに追加された私のNG項目は以下。

・古すぎる家は嫌だ
・人が多すぎる街は嫌だ


・ポイント③謎の文化 “内見の練習”
「ま、一旦内見してみますか」ということになり、後日駅で待ち合わせた大川さん。内見って不動産屋の車で巡るパターンしか想定していなかったんだけど、OTOGI不動産の内見は徒歩、電車、バス、自転車が基本……ってマジ? コレがネオ不動産屋なの? 

このスタイルは「その街の雰囲気を知ったうえで物件を決めるべき」という、大川さんの信条によるもの。私のように希望エリアが定まっていない場合、内見の前に“内見の練習”をする場合が多いのだという。内見の練習とは “内見で見るべきポイントを知るために仮の内見(と街歩き)をすること” ……こいつは長い戦いになりそうだ。

この日は私のフワッとした条件をもとに、大川さんがセレクトしてくれた物件をいくつか内見。図面を見ただけでは気づかなかった自分のこだわりが少しづつ見えてくる。

「キッチンの横に洗濯機」は嫌だなぁとか。

「仕切りがないトイレ」は嫌だなぁとか。

「なんでこの位置に収納置いたの?」とか。

そんななか、早くも「ここに決めちゃおっかな?」という物件に出会った。初台の約40平米のマンション。築年数は若干古いが、リノベしたてでピカピカ。ただ、1つだけ引っかかるポイントがあった。

それは “独立洗面台が無い”ということ。バスタブの横にオマケ程度の洗面台が付いているタイプのアレである。これまでの人生で独立洗面台について深く考えたことはなかったが、唐突に「結構イヤかも」と感じている自分がいる。実際に見るまで到達しなかった気づきだ。

大川さんいわく、都内だと「独立洗面台のある・なしでは1万円前後ほど家賃が変わってくる」のだそう。それ以外は完璧なので、もう妥協してしまおうか……?

・ポイント④「嫌ならやめとけ」と言ってくれる
私は帰宅後、価値観の合う同世代の友人数名に意見を求めた。その結果……なんと3人中3人が「独立洗面台なしはNG」と即答した。これはもちろん個人の価値観によるが、私は「やっぱ独立洗面台なしの家はイヤ」サイドの人間だったということ。

そんなわけで物件探しはふりだしに戻った。この初台の物件は今でも夢に見ることがあり、私の人生における「ifもしも」として永遠に語り継がれるだろう。

かくして内見2日目。生きてるだけでぶっ倒れそうな暑さの中、2人で世田谷〜渋谷をチャリで爆走する。このころになると大川さんと私はけっこう打ち解け、世間話なんかをする間柄になっていた。

そろそろ候補くらいは見つけておきたいところなので、かなりの数の部屋を内見。が、どの物件にも何かしらのケチがつき、一晩かけて大いに悩んだ結果……私は「まだ決められない」と大川さんに告げた。またふりだしに戻った。

そして内見3日目。

私はそろそろ大川さんに対して「申し訳ない」という気持ちで押しつぶされそうになっていた。すでに私のためにトータル3日を費やしているばかりか、喫茶店代、電車・バス代なども自己負担されている。

極端な話、私がここで連絡を断ったら、大川さんはタダ働きを通り越して大損害ではないか。「過去に強引な契約を迫ってきた不動産屋たちの気持ちも分からんでもない」……皮肉にも今になってそう感じた。

私は「なかなか決められなくて申し訳ございません」という謝罪のメッセージを大川さんに送信。今回の部屋探し中に大川さんが唯一「何言ってんスか?」みたいな感じだったのはこの時である。

大川さんいわく、OTOGI不動産が客1人にメチャ時間をかける理由は「リピーターになってもらうこと」を第一に考えているから。めんどくさいと感じることもあるが、「ずっと通ってくれること、知り合いを紹介してくれることなどを考えると、結果的に効率がいい」のだそう。

あ、そういう話!?

「すごく現代っぽいビジネスだな」と思ってきたけど、これって実は古き良き三河屋(サザエさんち御用達の酒屋)スタイルなのかもしれない……と、このとき初めて思った。

かくして、この内見3日目で……

私の新居、ついに決定ッ!!!!

なお大川さんに「私はどれくらい手間のかかる客だったか」と尋ねたところ、「平均くらいですね」との回答だった。文字数の関係で省いたが、実は “駐輪場の確認のためだけに集合した日” などもあり、ここまでに私と大川さんはのべ6回会っている。これで平均……大変な商売やで。

・ネオ不動産屋の本音
「手間をかけてでもリピーターになってほしい」というOTOGI不動産の信条はよく分かった。とはいえ気になるのは「1人の客にそこまで時間をかけて大丈夫なの?」ってとこ。OTOGI不動産の仲介手数料は “家賃1カ月分” 。一般的な不動産屋と同じである。

いらん世話ですが、これで採算が取れるのでしょうか……? 疑問でならないので、もうちょい詳しく話を聞いてみることにしよう。

──実際、儲かってます?

大川さん「せんべいを焼いているようなもんです。儲からないですよ。ただ僕には『高級外車に乗りたい』みたいな気持ちがなくて。『軽自動車でいいや』と思えば、不動産屋って、ゆったり食っていける商売だと思います」

──なぜ不動産屋になったんですか?

大川さん「最初は知識がないので、ひとまず街の小さな不動産屋で働きました。客が来るのをただ待つだけ。退屈で、半年くらいして『もう学ぶことはないな』と思いました」

──フム

大川さん「しばらくして友人と一緒に起業したんですが、大手不動産仲介サイトを利用しようとしたら、登録料がめちゃくちゃ高かったんです。起業したての自分たちには厳しくて。思案した結果『人の紹介でやるしかない』という考えに至りました」

──ほうほう

大川さん「紹介されたお客さんをリピーターにするには、お客さんを騙さず、真面目に商売しなきゃいけない。そのためには『お客さんの言うことをちゃんと聞いてあげなきゃいけない』と思いました」

大川さん「たとえば牛丼屋で『親子丼作って』と言っても、メニューになければ作ってくれませんよね? そういう“普通の不動産屋じゃ対応できない顧客を、際限なく相手にしてみよう” 、というのがウチのスタイルです。コストも時間もかかるけど……お客さんはまぁまぁ来ますよ。だって、なんでも作りますからね(笑)」

──深夜食堂みたいですね〜!

・友達がやってる不動産屋
ちなみに新居へ引っ越し後「近所に変な奴が住んでいる」「管理会社の対応が不満」など、ちょっとした賃貸トラブルに見舞われたのだが、そのつど私は1秒の迷いもなく大川さんに連絡を入れた。ほんの数カ月前まで不動産屋恐怖症だった奴とは思えぬ馴れ馴れしさである。

──途中から「友達がやってる不動産屋」みたいな感覚に陥ってきました。さすがです

大川さん「いやいや、それを狙ってるわけじゃないです(笑)。実際にヨソと比べてリピート率が高いのは、単に僕と同じやり方を誰もしなかった、ってことだと思ってます。ウチのやり方は最初こそ大変だけど、広告費がかからないし、数年単位でみると効率がいいんですよ」

──この商売を始めたこと、後悔してませんか?

大川さん「後悔はしてないですけど……今思うと『もっと簡単なやり方もあったかな?』って思いますね(笑)」

・冷やかし禁止!
……以上が、約3カ月に及んだ私の部屋探しの顛末である。今回お世話になったOTOGI不動産のスタイルは私の求めていたものに非常に近かったため、我ながら褒めすぎた感も否めないと思う。なので、あえて「こんな人はOTOGI不動産にハマらないかも?」というポイントもお伝えしておきたい。

【こんな人はOTOGI不動産に向かないかも?】
・1対1で長時間過ごすのが苦手な人
・「申し訳ない」という気持ちが強すぎる人
・体力に全く自信がない人(内見が若干ハードなため)
・部屋探しに費やせる時間が少ない人
・ラクして最高の部屋を見つけたい人

逆パターンもおさらいしておこう。

【こんな人はOTOGI不動産を利用するといいかも?】
・営業をかけられるのが苦手で、契約を急かされたくない人
・住みたいエリアが漠然としている人(OTOGI不動産の守備範囲は東京全域〜埼玉・神奈川・千葉と広いです)
・不動産屋さんの率直な意見を聞きたい人
・リピートできる不動産屋を探している人

OTOGI不動産のパンフレットには「あなたは信頼できる不動産屋さんが周りにいますか?」と記されている。「信頼できる不動産屋から部屋を借りたい」「ずっと同じ不動産屋の世話になりたい」と思っている人、ちょっと勇気がいるけど、門を叩けば未来が変わるかもしれない?

興味を持った読者はまずOTOGI不動産のHPならびにYouTube動画をご覧のうえ、趣旨を理解できた方のみコンタクトを試みてくれ。(くれぐれもいきなり電話とかしないように!)

参考リンク:OTOGI不動産
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

この記事の動画を見る

ロケットニュース24

「不動産」をもっと詳しく

「不動産」のニュース

「不動産」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ